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40話 二ホンの軍艦
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シエラ海上空
ヤーロピアル大陸の南南東に、シエラ海と呼ばれる海域が存在している。
かつてこの海域でリバイアサンと戦い勝利を収めたという英雄、シエラが名前の由来であるこの海域上空を二匹のアークドラゴンが飛行していた。
そのアークドラゴンの片方に乗っている連合軍竜騎士、ケインは同僚のガリーアと魔法通信機で話をしていた。
『おい、本当にこの天気で大丈夫なのか?こっちから護衛を出して出迎えた方が良いんじゃないか?帝国もこっちからの迎えを要請したんだろ?』
『二ホンは来れると言っていたんだ、オレたちはここで待ってるだけさ。それに、クラート王国いわく、二ホンの技術力は相当らしいぜ?』
やや心配したような表情で、ケインは空を見上げる。
雲一つない晴天で、風もほぼ吹いていない。一見良い天気のように見えるが、彼らにはまた違った見え方をしていた。
『そうはいっても、これほどの魔力の乱れ方ではろくに魔法が使えないぞ………?それに、ここまで酷いと余程訓練された兵士でもなければ体内の魔力回路が逆流して、気絶してしまう』
『まあ、二ホンには来れる自信があるんだろ。来れなければ二ホンの自信過剰だったってだけじゃね?』
そんな風に気楽に話すガリーアに、ケインは苛立ち語気を強めて怒鳴るような話し方になってしまう。
『来れなかったら三者会談が出来ないんだ!二ホンが自信過剰でした、で済む話ではないんだぞ!?』
『まあ、そりゃそうだけどさ。でも相手がいらんと言ってる以上、オレたちに出来ることは何もないんじゃねえの?』
冷静かつ非の打ち所がないそんな返答に、少し興奮していたケインも言葉に詰まってしまう。
『………確かに、こんなことを考えたところで何の意味もないのだが』
『だろ?まあ、あんまりにあっちが遅いようならこっちで捜索をしようぜ。………結構ヤバいしな』
『………ああ』
会話が終わり、静かになる。
だが、二人とも少し焦りを感じていた。本当に二ホンは来れるのだろうか。
遅れるだけならいい。だが遭難でもしていたら………
『おい、なんか東に船団が見えるぜ?』
『な、何?本当か!?』
二人の視線が向く先には、船のような何かが小さく見えた。
『よく見えんな………すまん、ガリーア。遠視魔法をかけてくれないか?』
『ったく、しゃあねえなあ………ほほいのほいっと。どうだ?見えるか?』
ケインの頼みに快く応えるガリーア。そして、どうだとガリーアは問いを返すが…
『………』
『おい!無視すんな!聞いているか、おーい!』
『……だ』
『ん?よく聞こえねえぞ!もう一回言ってくれね?』
『……だ………!』
『だーかーらー!もっとおっきな声で言え!聞こえねーよ!!!』
ろくに返答をしないケインに、今度はガリーアがキレる。
ケインからお礼の一言でももらえるかと思いきや、全く聞こえないような声で何かを言い出したのだ。不機嫌になるのも当然であった。
『空母だ………!』
やっと聞こえたその一言は、ガリーアを驚かせるには十分すぎる内容で。
『く、空母ぉ!?ラファーの連中がなんでここに!?それともシルフィアラの方か?』
(空母を持っているのは、シルフィアラかラファーだけだろ?竜を載せるまがい物なら一隻だけアグレシーズ帝国も保有しているが、そっちは二ホンへ出撃していたはず………)
『違う!………国旗がどっちのでもない!』
『じゃあどこのなんだよ!?』
(現状ありうるのはシルフィアラかラファーだけ。………もしかして、ラファーの艦隊が所属を偽装して帝国の邪魔しに行くんじゃあねえだろうな?確かラファーも帝国の侵略を良くは思ってなかったし………)
ガリーアがそんな風に考えを巡らせていたが、ケインの言った言葉は想像の斜め上を行っていた。
『白の布に、赤い線と丸………多分、あれは二ホンの軍艦だ!』
…
…
…
『?????』
彼女の脳が、理解を拒否していた。
ヤーロピアル大陸の南南東に、シエラ海と呼ばれる海域が存在している。
かつてこの海域でリバイアサンと戦い勝利を収めたという英雄、シエラが名前の由来であるこの海域上空を二匹のアークドラゴンが飛行していた。
そのアークドラゴンの片方に乗っている連合軍竜騎士、ケインは同僚のガリーアと魔法通信機で話をしていた。
『おい、本当にこの天気で大丈夫なのか?こっちから護衛を出して出迎えた方が良いんじゃないか?帝国もこっちからの迎えを要請したんだろ?』
『二ホンは来れると言っていたんだ、オレたちはここで待ってるだけさ。それに、クラート王国いわく、二ホンの技術力は相当らしいぜ?』
やや心配したような表情で、ケインは空を見上げる。
雲一つない晴天で、風もほぼ吹いていない。一見良い天気のように見えるが、彼らにはまた違った見え方をしていた。
『そうはいっても、これほどの魔力の乱れ方ではろくに魔法が使えないぞ………?それに、ここまで酷いと余程訓練された兵士でもなければ体内の魔力回路が逆流して、気絶してしまう』
『まあ、二ホンには来れる自信があるんだろ。来れなければ二ホンの自信過剰だったってだけじゃね?』
そんな風に気楽に話すガリーアに、ケインは苛立ち語気を強めて怒鳴るような話し方になってしまう。
『来れなかったら三者会談が出来ないんだ!二ホンが自信過剰でした、で済む話ではないんだぞ!?』
『まあ、そりゃそうだけどさ。でも相手がいらんと言ってる以上、オレたちに出来ることは何もないんじゃねえの?』
冷静かつ非の打ち所がないそんな返答に、少し興奮していたケインも言葉に詰まってしまう。
『………確かに、こんなことを考えたところで何の意味もないのだが』
『だろ?まあ、あんまりにあっちが遅いようならこっちで捜索をしようぜ。………結構ヤバいしな』
『………ああ』
会話が終わり、静かになる。
だが、二人とも少し焦りを感じていた。本当に二ホンは来れるのだろうか。
遅れるだけならいい。だが遭難でもしていたら………
『おい、なんか東に船団が見えるぜ?』
『な、何?本当か!?』
二人の視線が向く先には、船のような何かが小さく見えた。
『よく見えんな………すまん、ガリーア。遠視魔法をかけてくれないか?』
『ったく、しゃあねえなあ………ほほいのほいっと。どうだ?見えるか?』
ケインの頼みに快く応えるガリーア。そして、どうだとガリーアは問いを返すが…
『………』
『おい!無視すんな!聞いているか、おーい!』
『……だ』
『ん?よく聞こえねえぞ!もう一回言ってくれね?』
『……だ………!』
『だーかーらー!もっとおっきな声で言え!聞こえねーよ!!!』
ろくに返答をしないケインに、今度はガリーアがキレる。
ケインからお礼の一言でももらえるかと思いきや、全く聞こえないような声で何かを言い出したのだ。不機嫌になるのも当然であった。
『空母だ………!』
やっと聞こえたその一言は、ガリーアを驚かせるには十分すぎる内容で。
『く、空母ぉ!?ラファーの連中がなんでここに!?それともシルフィアラの方か?』
(空母を持っているのは、シルフィアラかラファーだけだろ?竜を載せるまがい物なら一隻だけアグレシーズ帝国も保有しているが、そっちは二ホンへ出撃していたはず………)
『違う!………国旗がどっちのでもない!』
『じゃあどこのなんだよ!?』
(現状ありうるのはシルフィアラかラファーだけ。………もしかして、ラファーの艦隊が所属を偽装して帝国の邪魔しに行くんじゃあねえだろうな?確かラファーも帝国の侵略を良くは思ってなかったし………)
ガリーアがそんな風に考えを巡らせていたが、ケインの言った言葉は想像の斜め上を行っていた。
『白の布に、赤い線と丸………多分、あれは二ホンの軍艦だ!』
…
…
…
『?????』
彼女の脳が、理解を拒否していた。
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