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58話 何が何だか分からない
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市場の制圧を終えて、都市部へと進軍する自衛隊。
その中でも特に先行していた偵察部隊は、走ってくる男を発見した。
「う、うん?………誰か走ってくる!あれは帝国兵じゃないか!?」
一人の隊員がそう言うと、他の隊員たちも気づき一斉に銃を向ける。緊張が場を支配する中で、走ってくる男は………
「や、やった!人だ、生きている!生きている人だ!」
そう言うや否や、ぐらりと倒れてしまった。
「あ、あいつ倒れたぞ?」
「お、おい!大丈夫か!」
心配した隊員たちが近寄ってみると、男はただ倒れているだけでは無かった。
「脈がない………おい、仰向けにしろ!」
慌てて仰向けにして、一人の隊員が男の目を開く。
「瞳孔が開いてる………光を当ててもダメだ。こりゃ死んでるぜ 」
「身なりからして一般人では無さそうだな。にしても、『生きている人』か。まるで死人ばかり見てきたかのような言い草だったな」
「こいつが来たのはあっちから………ちょうど、この港湾都市の中心部分か。そこで何かが起きているのかもしれん」
隊員たちの視線の先には、都市シャベドの中心部である城壁とそれに囲まれた多くの家があった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
偵察部隊から無線で報告を受けた本隊は、何らかの罠である可能性が高いとして都市中心部から数キロ離れた場所に陣取っていた。しかしながらF35での空撮や偵察の結果、帝国軍に動きがないどころか内部が大量の自殺らしき死体で溢れていることが分かると動けずにいた。
理由は簡単。未知の病気である可能性が高いと上層部が判断したからである。もしそうだとしたら、大規模な部隊を突入させれば大変なことが起こってしまう。そこで、防護服などで固めた少数の調査隊を派遣。持ち帰ったサンプルなどを研究して原因を探っているのだが………
首相官邸 閣議室
「原因は分からないまま、ですか」
岸川が厳しい顔でそう話すと、厚生労働大臣の前藤がおどおどしながら説明をする。
「は、はい。魔法などが関連している可能性もあると考え、リマ国やクラート王国、インベルド王国の研究機関などとも協力しましたが、これといった成果は得られませんでした」
木市も微妙な雰囲気で報告をする。
「それと、帝国軍全体の動きが全く無くなっています。衛星写真で見ても大規模な艦隊や部隊が動いている兆候はありませんし、それどころかドラゴンの一匹すら出てきません。帝国全体で似たようなことが起きているのかもしれませんね」
「帝国全体で………そういえば、現地の部隊に異常は見られませんか?」
心配そうな表情で岸川がそう問うと、木市はすぐに返答する。
「それが、今のところほぼ全員問題ないようでして。唯一不調を訴えた隊員も隔離しましたが、ただの風邪である可能性が高いそうです」
「それでは、本当に何が原因なのやら………」
全員が頭を悩ませる中で、葉名だけは迷いない口調で報告をする。
「外務省の方では、ナルカル連合ともコンタクトを取っていますが、連合側の侵攻した地域でも同じような事態に陥っているそうです。連合側は何らかの病気だと考えているようですが、何故か連合の兵士は一切症状が見られないとかで相当に事態の原因究明に困っているようです」
「連合でも同じようなことになっているのですか………もう、訳が分かりませんね」
岸川がそうぼやくと、葉名も同意しながら話を続ける。
「そうですね。本当に何が何だかよく分かりません。一応インベルド王国、リマ国、クラート王国の政府に外務省からも人員を送っていますが、期待はしない方が良いでしょう」
「うーん………どうしたものですかね………」
帝国との戦争以上に解決が出来そうにないこの難題に、閣議室に集まった内閣一同は困っていた。
その中でも特に先行していた偵察部隊は、走ってくる男を発見した。
「う、うん?………誰か走ってくる!あれは帝国兵じゃないか!?」
一人の隊員がそう言うと、他の隊員たちも気づき一斉に銃を向ける。緊張が場を支配する中で、走ってくる男は………
「や、やった!人だ、生きている!生きている人だ!」
そう言うや否や、ぐらりと倒れてしまった。
「あ、あいつ倒れたぞ?」
「お、おい!大丈夫か!」
心配した隊員たちが近寄ってみると、男はただ倒れているだけでは無かった。
「脈がない………おい、仰向けにしろ!」
慌てて仰向けにして、一人の隊員が男の目を開く。
「瞳孔が開いてる………光を当ててもダメだ。こりゃ死んでるぜ 」
「身なりからして一般人では無さそうだな。にしても、『生きている人』か。まるで死人ばかり見てきたかのような言い草だったな」
「こいつが来たのはあっちから………ちょうど、この港湾都市の中心部分か。そこで何かが起きているのかもしれん」
隊員たちの視線の先には、都市シャベドの中心部である城壁とそれに囲まれた多くの家があった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
偵察部隊から無線で報告を受けた本隊は、何らかの罠である可能性が高いとして都市中心部から数キロ離れた場所に陣取っていた。しかしながらF35での空撮や偵察の結果、帝国軍に動きがないどころか内部が大量の自殺らしき死体で溢れていることが分かると動けずにいた。
理由は簡単。未知の病気である可能性が高いと上層部が判断したからである。もしそうだとしたら、大規模な部隊を突入させれば大変なことが起こってしまう。そこで、防護服などで固めた少数の調査隊を派遣。持ち帰ったサンプルなどを研究して原因を探っているのだが………
首相官邸 閣議室
「原因は分からないまま、ですか」
岸川が厳しい顔でそう話すと、厚生労働大臣の前藤がおどおどしながら説明をする。
「は、はい。魔法などが関連している可能性もあると考え、リマ国やクラート王国、インベルド王国の研究機関などとも協力しましたが、これといった成果は得られませんでした」
木市も微妙な雰囲気で報告をする。
「それと、帝国軍全体の動きが全く無くなっています。衛星写真で見ても大規模な艦隊や部隊が動いている兆候はありませんし、それどころかドラゴンの一匹すら出てきません。帝国全体で似たようなことが起きているのかもしれませんね」
「帝国全体で………そういえば、現地の部隊に異常は見られませんか?」
心配そうな表情で岸川がそう問うと、木市はすぐに返答する。
「それが、今のところほぼ全員問題ないようでして。唯一不調を訴えた隊員も隔離しましたが、ただの風邪である可能性が高いそうです」
「それでは、本当に何が原因なのやら………」
全員が頭を悩ませる中で、葉名だけは迷いない口調で報告をする。
「外務省の方では、ナルカル連合ともコンタクトを取っていますが、連合側の侵攻した地域でも同じような事態に陥っているそうです。連合側は何らかの病気だと考えているようですが、何故か連合の兵士は一切症状が見られないとかで相当に事態の原因究明に困っているようです」
「連合でも同じようなことになっているのですか………もう、訳が分かりませんね」
岸川がそうぼやくと、葉名も同意しながら話を続ける。
「そうですね。本当に何が何だかよく分かりません。一応インベルド王国、リマ国、クラート王国の政府に外務省からも人員を送っていますが、期待はしない方が良いでしょう」
「うーん………どうしたものですかね………」
帝国との戦争以上に解決が出来そうにないこの難題に、閣議室に集まった内閣一同は困っていた。
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