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34. 木の しおり
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カイルさんから木材のいろいろな部分を五つ渡される。
五つは多いと主張したけど、初めてのことだし、試作を作ったら失敗もするだろうからと、半ば強引に持たされてしまう。
全部失敗してもまた渡すから、安心して取り組んで欲しいと、材料は保証済みだ。
んーーっ、困った。
でも……いい香り。
辺境伯様に頼まれていたことが片付いて、肩の荷が降りたのか?
笑顔でいろいろ木について説明してくれる。
この木は枝だけでなく、根っこもよい香りがするということ。
なんなら枝より根っこのほうがよい香りがすると、 笑いながら話してくれる。
それから、加工するには少し硬いみたいだが問題はないようで、かえって細かい作業がしやすいかもといっていた。
カイルさんが本格的に協力してくれることになり、他に必要なものがあれば辺境伯様にお渡しするのだから遠慮なく言ってくれっというので、しおりの房にする紐を数種類頼んでおいた。
あとは木を加工するのに必要なヤスリやノコギリなどの道具類。
これもいろいろカイルさんが見繕ってくれて、貸してもらえることになったので、馬番小屋まで運んでもらう。
部屋のリビングでしばらく一人、腕を組んでどうやって作ろうかと考えていると、マークが帰ってきた。
「すごい荷物だな。それに少しいい香りがする」
マークに今までの経緯を、ちょっとやさぐれて話すと、笑いながら。
「それは、カイルさんに一本取られたな。最近ふさぎ込んでいたんで、みんなが心配してたんだが理由がわかったよ」
「そうなんだ」
半分秘密の事業で進めてきたから、人に相談もできなかったんだね。
木や草花を相手に育てたり整えてたりするのは得意でも、それを使った加工品を考えるっていうのは、 ちょっと違うからなぁ。
気持ちはわかるけど……
「許してやってくれ」
最後にマークに頼まれて、しょうがないかと諦めた。
よし! 気分を変えて、しおり作りだ!
まずは、木を薄い板状にする。
三十センチほどの長さで、わたしの足首ほどの太さの原木を手にとり、縦半分にする。
身体強化の魔法を使って、歯の薄い斧で一気に割った。
パーン! いい香りがフワッと漂う。
次は、これをもっと薄くしなきゃだけど……
さぁ、どうする?
こんな斧ではだめだ。
もっと歯の薄いもので一気にいかないと……
借りてきた道具箱の中に一本、歯の薄いノコギリのようなものが入っていた。
これだ! カイルさんわかってるねー!
身体強化を二度がけして。
あれっ? どうやって切るの?
木が動くし、切れない。
木を固定するの?
あらっ?
「ハアー、パール。木を貸してみろ」
もう、見てられなかったようだ……
「木を薄くするんだろ? なら、まずしっかり固定させないとダメだろ」
そう話しながら馬番の作業部屋へと向かう。
なんだかわからないけど、木を固定する専用の道具らしきものに、持ってきた木をセットする。
「始めは、だいたいで切るぞ」
へー、こんなのあるんだ。
これはもう、マークにお願いしよう!
そんなことを考えているあいだに、サッと一枚薄く木を切ってくれた。
「思っていたよりだいぶ難しいな、木挽き職人のようにはいかないが、まぁ小さなものだし、最後に磨けばなんとかなるだろう」
「これ、十分すごいよ! でも、こんなにうまく作れていると、この木で文字入れの練習はちょっともったいなくてできないかも?」
「そうだな。おれもこれをもう少し極めるには時間がかかるから、この木で練習はもったいないな」
二人で相談して、そこらへんにある木で練習することになった。
マークが薄い板を作って、わたしが文字入れ。
器用なマークはわたしの練習用に先に数枚、少しざらついた感じだけど木を薄くしてくれた。
「しおりのデザインは考えてあるのか?」
「そこはもう凝らないで、シンプルに名前を彫ろうと思ったんだけど、ダメかな?」
「ふぅーん、考えたな。無難でいいだろう」
さて、どう名前を入れようか。
マークに墨を持ってきてもらって、下書きをする。
下書きは名前なので、すぐに終わった。
さて、これをどう彫ろう?
貫通させたいので何度も彫刻刀で彫る?
針のようなもので何度も刺す?
魔法で焼き切る?
うーん、どれがいいか、マークに聞いてみた。
「そんな方法、全部できるのか? 練習用の木が、もっといるな」
まずは墨で名前を書いたところを細い彫刻刀で、せっせと彫ってみた。
最後の木に穴があくとき、裏側が少し欠けたようになる……次。
針を使って刺してみた……ポキッ……針が折れた……次。
魔法で焼き切る……か? マークがいるので、頭の中でチェリーに聞いてみる。
(チェリー 、魔法で火の玉ミニより、もっと小さなミニ玉って、だせるかな?)
(はい。今のパールでは小さくても小指の爪くらいの大きさです。名前を火の玉ミニで入れるのは無理です)
(どうしたらいいと思う?)
(はい。一気に焦げつかせて、焼き消す、でしょうか。よく下書きをみて、一瞬で文字が焼けて消えると、強くイメージしてください)
(わかった、やってみるね)
墨で下書きした薄い木をじっと見て、手の平を木の上にかざして……
「まった! パールやめろ! ここで、なにをする気だ!」
「ビックリしたあー! マーク、なんで止めるの?」
「あたりまえだ! おまえ今、ここで火の魔法を使おうとしただろう。ここは家の中だぞ!」
「アッ……ごめん」
二人でマークが作った薄い木を持って、井戸までいく。
井戸のすぐ横にある作業用の平らな石に名前を書いた薄い木をおき、先ほどと同じように手をかざす。
(一瞬で文字よ、焼けて消えろ!)
ジュッ、ボワッ! バシャッ!
木に名前は焼き付けられたのか?
木が一瞬で燃え上がる。
マークがもしものときにと待機していたので、井戸の水が一瞬で燃えたしおりにかけられた。
「……さっきは、止めてくれて、ありがとう……今もだけど……」
ふぅっ
マークが安堵のため息をつく。
「……今日はここまでだ。片付けて夕食に行くぞ」
グーーーー キュルキュルーー
お腹が返事してくれた。
五つは多いと主張したけど、初めてのことだし、試作を作ったら失敗もするだろうからと、半ば強引に持たされてしまう。
全部失敗してもまた渡すから、安心して取り組んで欲しいと、材料は保証済みだ。
んーーっ、困った。
でも……いい香り。
辺境伯様に頼まれていたことが片付いて、肩の荷が降りたのか?
笑顔でいろいろ木について説明してくれる。
この木は枝だけでなく、根っこもよい香りがするということ。
なんなら枝より根っこのほうがよい香りがすると、 笑いながら話してくれる。
それから、加工するには少し硬いみたいだが問題はないようで、かえって細かい作業がしやすいかもといっていた。
カイルさんが本格的に協力してくれることになり、他に必要なものがあれば辺境伯様にお渡しするのだから遠慮なく言ってくれっというので、しおりの房にする紐を数種類頼んでおいた。
あとは木を加工するのに必要なヤスリやノコギリなどの道具類。
これもいろいろカイルさんが見繕ってくれて、貸してもらえることになったので、馬番小屋まで運んでもらう。
部屋のリビングでしばらく一人、腕を組んでどうやって作ろうかと考えていると、マークが帰ってきた。
「すごい荷物だな。それに少しいい香りがする」
マークに今までの経緯を、ちょっとやさぐれて話すと、笑いながら。
「それは、カイルさんに一本取られたな。最近ふさぎ込んでいたんで、みんなが心配してたんだが理由がわかったよ」
「そうなんだ」
半分秘密の事業で進めてきたから、人に相談もできなかったんだね。
木や草花を相手に育てたり整えてたりするのは得意でも、それを使った加工品を考えるっていうのは、 ちょっと違うからなぁ。
気持ちはわかるけど……
「許してやってくれ」
最後にマークに頼まれて、しょうがないかと諦めた。
よし! 気分を変えて、しおり作りだ!
まずは、木を薄い板状にする。
三十センチほどの長さで、わたしの足首ほどの太さの原木を手にとり、縦半分にする。
身体強化の魔法を使って、歯の薄い斧で一気に割った。
パーン! いい香りがフワッと漂う。
次は、これをもっと薄くしなきゃだけど……
さぁ、どうする?
こんな斧ではだめだ。
もっと歯の薄いもので一気にいかないと……
借りてきた道具箱の中に一本、歯の薄いノコギリのようなものが入っていた。
これだ! カイルさんわかってるねー!
身体強化を二度がけして。
あれっ? どうやって切るの?
木が動くし、切れない。
木を固定するの?
あらっ?
「ハアー、パール。木を貸してみろ」
もう、見てられなかったようだ……
「木を薄くするんだろ? なら、まずしっかり固定させないとダメだろ」
そう話しながら馬番の作業部屋へと向かう。
なんだかわからないけど、木を固定する専用の道具らしきものに、持ってきた木をセットする。
「始めは、だいたいで切るぞ」
へー、こんなのあるんだ。
これはもう、マークにお願いしよう!
そんなことを考えているあいだに、サッと一枚薄く木を切ってくれた。
「思っていたよりだいぶ難しいな、木挽き職人のようにはいかないが、まぁ小さなものだし、最後に磨けばなんとかなるだろう」
「これ、十分すごいよ! でも、こんなにうまく作れていると、この木で文字入れの練習はちょっともったいなくてできないかも?」
「そうだな。おれもこれをもう少し極めるには時間がかかるから、この木で練習はもったいないな」
二人で相談して、そこらへんにある木で練習することになった。
マークが薄い板を作って、わたしが文字入れ。
器用なマークはわたしの練習用に先に数枚、少しざらついた感じだけど木を薄くしてくれた。
「しおりのデザインは考えてあるのか?」
「そこはもう凝らないで、シンプルに名前を彫ろうと思ったんだけど、ダメかな?」
「ふぅーん、考えたな。無難でいいだろう」
さて、どう名前を入れようか。
マークに墨を持ってきてもらって、下書きをする。
下書きは名前なので、すぐに終わった。
さて、これをどう彫ろう?
貫通させたいので何度も彫刻刀で彫る?
針のようなもので何度も刺す?
魔法で焼き切る?
うーん、どれがいいか、マークに聞いてみた。
「そんな方法、全部できるのか? 練習用の木が、もっといるな」
まずは墨で名前を書いたところを細い彫刻刀で、せっせと彫ってみた。
最後の木に穴があくとき、裏側が少し欠けたようになる……次。
針を使って刺してみた……ポキッ……針が折れた……次。
魔法で焼き切る……か? マークがいるので、頭の中でチェリーに聞いてみる。
(チェリー 、魔法で火の玉ミニより、もっと小さなミニ玉って、だせるかな?)
(はい。今のパールでは小さくても小指の爪くらいの大きさです。名前を火の玉ミニで入れるのは無理です)
(どうしたらいいと思う?)
(はい。一気に焦げつかせて、焼き消す、でしょうか。よく下書きをみて、一瞬で文字が焼けて消えると、強くイメージしてください)
(わかった、やってみるね)
墨で下書きした薄い木をじっと見て、手の平を木の上にかざして……
「まった! パールやめろ! ここで、なにをする気だ!」
「ビックリしたあー! マーク、なんで止めるの?」
「あたりまえだ! おまえ今、ここで火の魔法を使おうとしただろう。ここは家の中だぞ!」
「アッ……ごめん」
二人でマークが作った薄い木を持って、井戸までいく。
井戸のすぐ横にある作業用の平らな石に名前を書いた薄い木をおき、先ほどと同じように手をかざす。
(一瞬で文字よ、焼けて消えろ!)
ジュッ、ボワッ! バシャッ!
木に名前は焼き付けられたのか?
木が一瞬で燃え上がる。
マークがもしものときにと待機していたので、井戸の水が一瞬で燃えたしおりにかけられた。
「……さっきは、止めてくれて、ありがとう……今もだけど……」
ふぅっ
マークが安堵のため息をつく。
「……今日はここまでだ。片付けて夕食に行くぞ」
グーーーー キュルキュルーー
お腹が返事してくれた。
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