迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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51. 秘密の香木

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「カイルさん! 香木見つけたよ!」

「ホントか! よくやった!」

 その木は今までどうやって隠れていたのか?
 目の前の木はそんなことを考えてしまうわたしを、笑って見ているような感じさえする……
 堂々と枝を伸ばし、そびえ立つ木。
 立派な60年は育った貫禄のある良い香木を見つけた。

 カイルさんはすぐ簡単にここの地図を書いている。
 紙はまだ高価なはずだが、辺境伯様はカイルさんに渡していたようだ。
 それだけでも香木に力を入れていることが伝わってくるよ。

「あーっ、ホッとした!」

「これでゆっくり森を探検できるようになったか?」

 マークが右眉を器用に上げカイルさんにたずねている。

「いや、なにも必ず探しだせとは言われてないんだが、この紙とペンをみろよ! オレなんかに渡すんだから……わかるだろ?」

「まあな、お抱えの庭師は辛いなあ。でもこれで好きなだけ安心して森にいれるぞ」

「違いない」

 二人は楽しそうだ。

 わたしは二人のためにマッピングの性能を上げていく。
 二人の前だといろいろ隠さなくてすむのですごく楽だ。

 香木はあちこちでピコピコしているから、どれがまだ見つかっていないのかわからない。

「これって見つけた香木に一本ずつナンバーを付けていったら、地図にしたときにもわかりやすいし管理もしやすいよね?」

「それはいい案だな! 今度札を作ってかけていくよ」

「そうしたら札がかかってないのがまだ見つかっていなかった香木になるよね!」

「そうなるな」

「じゃあ、その香木を一本ぐらいもらえないかな?」

「んーっ、たしかにパールは厳密にいうと辺境伯様に雇われているわけじゃないからな。本来は見つけた人にも権利がある」

「なんだ、パールこの香木が欲しいのか?」

「うん。王都に持っていくお土産も作りたいし、少し取っておいて後でなにかに出来たらいいなってくらいだけどね。この香りが好きなんだよ」

「やっぱり女の子だな! よし、香木の地図を一枚やるから地図に乗っていない木なら後で好きなときにとりにきたらいいぞ。おまえならどうにでもできるだろう? まぁ、いま見つけてその木は地図に書かなくてもいいけどな」

「いいの?」

「この香木を見つけるのはオレだけでは難しいんだから、一本ぐらい別にかまわないさ」

 よぉーし、気合いを入れて見つけるぞ。

 わたしの香り!


 それからも香木を数本見つけたが、まだ若い木は地図に書かないことにした。 
 庭師カイルさんの秘密の木にして代々カイルさん一族が守っていくそうだ。
 だいたい九十年位しかもたない木で、香りがホントによくなるのは六十年位経ってからになる木なので、大切に守りたいのだろう。

 マークもわたしもそれに賛成だ。
 もしも辺境伯一族の誰かが無茶なことを言ってきても、こうしておくことでカイル家一族はこの先も安心だろう。
 一族の隠し財産にもなるしね。
 平民は平民でしっかり対策しておかないと!

 でもそう言えば、カイル家ということは奥さんと子どもがいるの?

 カイルさんがわたしの疑問に気付いたようで答えてくれた。

「息子と嫁さんはいま隣領にいるんだが、もうすぐ帰ってくるぞ」

「息子はナギだったか? からだはもう大丈夫なのか?」

「あぁ、だいぶ良くなってな。十歳になる」

「どこか悪かったの?」

「咳が止まらなくなるんだよ。この領の治療師様は隣の領と掛け持ちだから、この領にいる年は近くていいが隣領の年は大変で、咳が薬草で効かなくなると隣領まで行って診てもらい良くなるまで隣領に滞在しなきゃいけないのさ」

「じゃあ、良くなって帰ってくるんだ」

「ああ、二人に会うのが楽しみだよ。もう半年近く会ってないからな」

 そんなに会ってないのか……
 どうも今回は治療師様がこの領に戻ってくるとき一緒に帰る手筈になっていて、治療師様の側だと息子のナギくんの咳が急にでても安心だとカイルさんがちょっと寂しげに話してくれた。

「ナギに秘密の香木を伝えるのが楽しみだよ!」

 森での修行? はこれでひと段落。
 辺境伯様も香木が一本追加で見つかり機嫌がいい。
 カイルさんはお褒めの言葉を頂けたのか、うれしそうだ。

 わたしがこの領にいれるのも半年を切った。
 今はゆっくり馬番小屋で薬草を入れる袋を縫ったり、香木でお土産になるものを作ったりしてマークの側にできるだけいるようにしている。
 二人の時間も大切だからね。

 マークはこの頃わたしに忠告ばかりしてくる。

「優しそうにはじめから、笑顔を向けてくる男には気をつけろ! あっ、女もだ! 大金は持って歩くなよ! なにかあれば、宿屋の人とギルドの人に相談しろ。でも、ギルドの人はちゃんと人をみるんだぞ! ぜったい顔で選ぶなよ!! ちょっとぐらい口が悪いほうが、実は親身になってくれる人ってこともあるからな」

「わかった」

「ホントにわかっているのか? あー、心配だ! 一緒に行きたいよ」

「なに言ってるのよ! いまからシーナと結婚するんでしょ! マークはシーナとここで幸せに暮らしていてくれないと、今度はわたしがマークを心配してしまうじゃない!」

「つらいなぁ」

 あ、は、はっ

「わたしははやくマークにシーナと結婚してもらって、幸せな四人家族になりたいよ」

「パール、おまえがいないだろう!」

「三年だけだよ……」

 そんな話をしていると、トムさんとシーナがやってきた。

「また、マークはパールにグチグチいってたのか?」

「なっ、なにを! トムさん、それはないだろう!」

 は、は、はっ

「お父さん、からかわないで! マークはパールのことをホントに心配しているのよ!」

「そうだよ。トムさんだって、もしシーナが三年王都にひとりで住むとなったら心配するだろう?」

「そらーぁそうだ! パール! 気をつけるんだぞ!」

 うわー、ひとり増えたよ!
 この日はマークとトムさんに王都での注意を延々と聞かされた。
 シーナは笑いながら聞いているだけで助けてはくれない。
 ちょっとすねそうになりかけたとき、シーナが楽しそうに話しだす。

「お母さんが生きていたときのことを思い出したわ……わたしもいつもパールみたいにお父さんとお母さんに長い注意を受けていたのよ……」

「そうだったか?」

「そうよ。懐かしいわ……」

「じゃぁ、マークがお母さんだね!」

「おい、パールそれはないだろう!」 

「いや、いや、充分お母さんだな」

 ふ、ふ、ふっ は、は、はっ 

 なんてことない会話がすごく心地よい気がして、マークをみるとマークは目を細めてシーナを見つめていた。
 トムさんは? っとみると、下を向いて微笑んでいる。
 そしてゆっくりわたしをみて、ニターっと笑うと指を三本立てて。

「三年だ! 三年なんて、あっという間さ! 王都に行ったらいろいろうまい料理の店を教えてくれよ!」

「わかった! みんなで食べに行こうね!」

 まだ始まってもいない三年後が……
 みんな、たのしみになったようだ……


 さすがだよ! トムさん!




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