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58. はじめての野宿

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 メリッサお姉さんには、ホントに感謝している。 

 わたしが 普通に街を歩けているのも、お姉さんが 調合してくれた 石鹸で 髪を洗っているから……

 初めての王都の街はやっぱり 人が多くて いろいろな人がわたしに声をかけてきた。
 なかでも、わたしの髪の色に興味を持った人が 何人かいて、そのうちのひとりが、平民だとわかると 急変して 拐われそうになり 慌てて身体強化を強めにかけて 逃げたけど……
 
 人を傷つけるということに どうしても抵抗があるから 逃げることしかできなくて。
 慌てて 近くの店に 飛び込んだのが『薬師メリッサ』だった。

 あのキレイで ちょっと不思議な 鐘の音色と共に、メリッサお姉さんが お店の奥からでてくると、わたしをみるなり 手をとり 赤くなっている手首に 優しく軟膏を塗ってくれた。

 そしてここは路地横だから たまに こういうことがあるのだと 教えてくれる。
 お姉さんの笑顔に少し落ち着いて、拐われかけたのは わたしの髪の色 グリーンイエロー が 原因みたいだと説明すると あるひとつの石鹸を薦めてくれた。

 同じような人が やっぱりいるようで この石鹸で髪を洗うと髪は痛めずに 輝きだけがなくなり 色も抑えられ 目立たなくなる モノ のようだ。
 しばらくすると もとに戻るから、安心して使えるし もとにもどったときには 艶も増している 実は美容効果もキッチリ入っている 優れものだという。
 数日おきに これで髪を洗って 様子をみるよう 優しく微笑んで 教えてくれる。
 もちろん、この石鹸は お姉さんの プレゼント!

 これが、優しいメリッサお姉さんとの 出会い。
 そんなことを思い出していると……

「気をつけて、行ってくるのよ。ついでに 迷い人になって、わたしを 当たり人にしてね!! ふ、ふっ 」

「はい、ウロで 一泊して 当たり人を目指します!」

 メリッサお姉さんからの応援で グンとやる気が増した わたしは『薬師メリッサ』を あとにする。
 

 心 ウキウキ、森へ 向かう。

 だれもいなくなったら 身体強化と検索で ドンドン 進んで 森の終わり ダンジョン近くまでいく。
 今回は 帰りに薬草を採るので、ウロへ 一直線だ!

 なんとかお昼には 身体強化のおかげで 無事 目的地、ウロまでやってきた。

 まずは 閉じていた フタをとって ウロの中を確認する。
 大丈夫!  虫も いないし、蛇も いない。
 この瞬間が、ドキドキする。

 一番に、メリッサお姉さんに教えてもらった 薬草を ばら撒く。
 それから、リラックスできて ついでに 軽く 獣よけにもなる薬草も 木の ウロ 入り口に置いて ゆっくりとウロ近くの太い枝の上で お昼を食べることにした。

 朝に食べた 薄っすらトマト味のお肉が 少し焼いてあり、味が濃厚になっているよ!
 お肉の焦げ目も 香ばしい。
 それが、たっぷり挟んである ボリューム満点のパンだ!

 うん、おいしい。

 お水は、木のコップを持ち歩いているので、そこに魔法水を サッと 入れて飲む。

 これだけでも、外では すごく助かっている。
 ただ、人がいるときには目立つので、獣の革で できたよくある水筒に水を入れて飲んでみたけど、わたしには 獣の匂い というか 水に匂いが移っているのか?   ちょっと苦手だから、違う入れ物を 物色中。

 実は、今回の野宿は これが目的。

 森のダンジョン なかほどに バンブの木があると聞いたので、それで水筒を作って 持ち運ぶつもりでいる。
 
 このバンブの水筒は チェリー に 教えてもらった。
 レベル38 からの特典だ!
 前世にバンブに似た木があって、水筒が 作られていた みたい。
 映像で確認したから、あとは 職人さんにお願いするか、自分で作るか?

 まずは今から、バンブの木を探しに ダンジョンの なかほどまでいく。
 今は、森の終わりだから、しばらくは 身体強化と 検索で 人のいるところと 大きな魔力が感じられるところを避けて進む。

 これも チェリー が 教えてくれた。

 魔物が どこにいるか わからないから、マーキングもできないし ひとりの冒険は 怖いし不安で どうしようかと思っていたら、どこにでもいる 角ウサギの魔力を覚えて その魔力をマーキングして それより魔力が少し大きく、多く感じられるところにまず、安全を確保して 向かうよう チェリー に 勧められる。

 あとは、強い魔物ほど やっぱり魔力が多いとわかったので、出会った獣や魔物には マーキングして 次から わかるように ドンドン マーキングの数を増やしていく。
 はじめは少なかったマーキングできる数も 今では 気にせず 使えるようになって チェリー も止めない。
 
 午前中はだいたい 獣と魔物のマーキングそして薬草探しで 時間を使って、午後からマーキングしてある 薬草を採取し ギルドに寄って 宿屋に帰るのが いつもの 日帰り冒険コースだ。

 でも今日は、はじめて ダンジョンの なかほどまで 入り込み バンブの林を探す。 

 そこは ホワイトベアー が 出やすいと聞いたから、あえて途中から 魔力の大きな方に 向かっていく。
 しばらくすると 狙いどおり バンブの木らしき林を見つける。

 宿屋の食堂に来ていた冒険者のお兄さんたちが 話していたとおりだ。
 ホワイトベアー を 避けるため バンブの林は避けているといってたから 人もいないし 好都合だよ。

 いた あれだ!!

 魔力の大きいホワイトベアー に、風下から そっと 近づく。 
 バンブの新芽の柔らかい部分を バキバキ 食べているから、今のあいだに まずは マーキングする。
 ふ、ふっ ちょっと かわいい?


 キィーーン キィーーン キィーーン!!

 えっ  なに?!

 チェリー が 頭の中に 響き渡る 警報音? を 出してきた。
 
「チェリー この音は なに? 」

「はい、前方の林の中から すごく大きな魔力が近づいています。すぐに確認してください」

 あわてて 検索をかける。  

 ホワイトベアー を 見つけたから、検索の意識を 切ったのは 失敗だった。
 ここは、もう 森のダンジョンなのだから 検索は 常に意識して 切っては ダメなんだ。

 反省!

 相棒 チェリーのおかげで、わたしはホント 安全に 冒険ができている。


 チェリーに 感謝だ!!


 
 
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