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77. ケップラー 王国のオレンジ

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 テトリに預けていた、肩かけのカバンを 返してもらい  その中から 薬草を 一つだす。

「ブロンさんは 田舎に帰ると テトリから 聞いたの、これは 虫よけの 燻すタイプの薬草で、わたしの国では ひと月 持ったけど。ブロンさんの 役に立つかなぁ~? 」

「立つ!たつわよ!たつに決まっているでしょ!見せて、なに、これは……  ? すごいわ…… 」

 ブロンさんが、薬草に 気を取られているすきに テトリから魔法袋を サッと もらい 無限の マジックバックに しまった。
 ブロンさんは チラッと 見たけど、気にしていないようだ。
 テトリは、なんだか ホッと していた。

 ちょっと疲れてきたので どこかに 座りたいと告げると、壁に ディスプレイしてあった 椅子と テーブルを 掴んで 壁から剥がし、どうぞっと すすめてきた。
 すごい! 
 崖の途中でも安定する、どこでも座わってお茶ができる 椅子と テーブル セットみたいだ。
 わーっ、高さも変えられるのか……
 ブロンさんが、わたしに ちょうどよく してくれた。
 テトリと座って ホッと ひと息つく。

 ブロンさんは、もう 薬草の匂いを嗅いで ブツブツ いっている。
 もともと田舎では 特産の アラクネの ために薬草などの研究を していたそうだ。
 なんだか詳しいみたいだけど、わたしの持っている薬草は 全部 虫 や ヘビよけ なんだけど ……

 アラクネ は大丈夫かな? っと 伝えると すごく 驚いていた。
 いまは もう、ヘビ は いない らしい……

 この ケップラー 王国には、もう 動物も いないし ヘビも いない。
 本の中の 歴史の世界 だわ っと 話してくれた。

 そうなのか……

「じゃあ、わたしの持っている 軽い獣よけ しながらリラックスもできる薬草は 獣がいないなら 用無しだね。 ばら撒くタイプの虫よけなら、使えるかなぁ?」

「パ、パールちゃん、もしかして 軽い獣よけ しながら リラックスできる薬草 それに ばら撒くタイプの虫よけの薬草も 持っているの かしら?」

「あるけど、獣が いないんじゃあ 意味が ないよね?」

「ある、あるのよ! すごく あるの! 研究するのに必要なのよ! 」

「そうなの? じゃあ、いる? 」

「いる、いるわ! 見せて! だして ちょうだい!」

 肩かけのカバンから だして、薬草は 一年ぐらいで使わないと 効果が薄れるよ っと いって渡すと ブロンさんは 震えていた。

「もう ダメッ!」

 急に叫んで、店の奥に 消えたかと思うと、すぐに 三本の ポーション? 薬? を 持ってきた。

「これは わたしの  とっておきよ! さあ、グイッと 飲んで キレイで とびきり 元気に なりましょ! 」

 セン を抜いて 渡してくれる。

 栄養ドリンクみたいな もんだよっと 教えてくれた テトリは、喜んで 飲んでいた。
 わたしも 二人につられて 一口 飲む…… おいしい!
 爽やかな ハーブのような スッキリした味で あっという間に 全部 飲んでしまった。

 ちょっと ひと息 ついたら お腹が すいてきたな……
 ブロンさんが 飲んだあとの ゴミを 片付け? に  店の奥にいったあいだに、登録した マジックバックの中から テトリの 魔法袋 を 出して そのまま中身を ひっくり返して 登録したマジックバックに 移しておく。
 最後に 魔法袋もしまい、これですぐに 欲しい モノが 一個ずつ 出せるように なった。
 テトリは、呆れて 見ていた。

 それから、分けやすい オレンジを 一個と パンを だして 一緒に 食べようと すすめる。

 ちょうど 戻ってきた ブロンさんが、テーブルの上にだした パンと オレンジを 見て また、少し震えながら 聞いてきた。

「パールちゃん、…… それは なに?」

 オレンジを分けようと 皮を むいていたので、もしかしたら お店で モノ を 食べては いけなかった?

「オレンジだけど、もしかして お店で モノ を 食べては ダメ なのかな? 」

 怒られる前に そのまま カバンに入れてしまおうとオレンジを皮ごと掴んだら、ブロンさんに その手ごと掴まれて……

「待って!!」

 黙って 見ていた テトリも、少し 震えながら……

「お、おまえ、それは もしかして 本物の オレンジか?!」

「えっ、本物か 偽物か わからないけど、わたしの国では オレンジって いってたけど、違う呼び方が あるの? 」

「違うのよ、パールちゃん。 この ケップラー 王国には もう本物のオレンジは、お城の温室の中に 一本あるだけなのよ。あとは 調合して似せて作った モノ だけ…… 」

「えっ、じゃぁ これ どうしよう? 食べちゃ ダメ なのかな?」

 ゴクッ

 テトリの 喉が なった。

 ゴクッ

 ブロンさんの 喉も なった。

「 …… 三等分して 食べようか? 」

「「食べる(わ)!!」」

 パンも 本物の小麦は もうないようで、食事は どうも サップリメント と言う 固形のモノや 飲むタイプの モノ が 主流で モノ を 食べることは 贅沢なことなのだと 教えてくれた。
 なんだか、わたしの『前世の記憶』に 似てるような気も するけど、チェリー  が いないから わからないな?  
 呼んでみたけど やっぱり 返事はない。
 
 パンが すごく 贅沢なら……
 お皿を借りて、二等分して 二人にあげた。
 わたしは、三等分した オレンジで いいや。

 二人は、ホントに食べていいのか 何度も聞いて 最後は、震えながら食べていた。

「「うまい!!」」

 ふ、ふっ ブロンさんが、男に 戻っている。
 よっぽど、おいしいんだね!

 カリッと焼いた厚めのベーコンに 炒めた野菜と焼いたタマゴが 多めに パンにたっぷりと詰まっている オヤジさんお得意の パンだった。
 今日は 宿のみんな 朝が早かったからね、二つに分けやすいパンで よかったよ。
 
 オレンジを食べながらみていると、またまた ブロンさんが震えだした。

「パールちゃん、この オレンジ…… タ、タ、タネ が あるんだけど…… ?! 」

「んっ? めんどくさいですよね、タネなしのオレンジがあれば いいのにねー! 」

「おい パール、ケップラー 王国の オレンジには もう タネが ないんだよ!」

「へー 、いいね! 食べやすくてっ……て ?? 」


 ここに……  あるよ …… タネ?!…… っ!!

 









 
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