迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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95. テトリとお別れ

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 笑顔のアリオさんが話しだす。

「は、は、はっ! さすが、テトリよく分かったね! 竜人の子どもが戦いごっこで使う鉄に似せた剣と盾、それにナイフとベルト付きのセットなんだけど、パールちゃんの話を聞いていたらパールちゃんの国はこれでも十分なんじゃないかな?」

 小さな盾は腕輪から出てくるスグレモノで、鉄より強い素材でできている。
 子どもを守るために補正機能もあって、からだをきちんと守るようだ。
 剣も鉄より強いし、魔石を剣にセットしたら、魔法も使えて剣の重さや長さまで変えられる。
 なによりも、登録した人は切れないし、うっかり子どもが自分や相手を傷つけてしまうことがない。
 ベルトも革より強い素材で色や大きさなどある程度自由に変えられるそうだ。
 おまけに丈夫な腰巻きも付いていた。

 子どもが迷い人を真似て遊ぶ、冒険者ごっこの道具だから納得だけど……

 テトリの顔が、ピクピクしている……
 笑いたいんだ……

「テトリ、笑っていいよ……」

 ぶっはーっ!!

「パールがつけたら、すごく似合うな! 本物の迷い人で、冒険者だもんな!!」

 みんながなんだか、あたたかい目で見てくる……
 ホントにテトリは、ひと言多いよっ!
 でも……これ、いいかも?

「腰巻き……すごく軽いですね? すぐ、破れませんか?」

「大丈夫だよ。子どもがぐちゃぐちゃにしても、シワもいきにくいし、洗濯袋で全部洗えるよ」

「剣の切れ味は? どうやってお手入れしたらよいのかな?」

「ああ。それの切れ味は、そんなによくないよ。あんまりスパッと切れたら、危ないだろう? 魔石も小さいモノしか入らないから、威力はないけど全種類使えるよ」

「一度、磨いておこうか? んーっ……でも、パールちゃんの国の切れ味と違いすぎても困るから、磨き袋を渡しておくね。国に帰って磨いたほうがよさそうならこれで磨いて、使い方は洗濯袋とほぼ一緒。入れる時間で磨き具合が変わるから、まずは簡単な一番で試してみて」

「一番。ありがとうございます」


 これで、ホントにお別れだ……


 みんなで迷いの森まで見送ってくれると言ってくれたけど、目立ち過ぎてしまうので、代表して当たり人一番目のテトリが送ってくれることになった。

 夜にテトリひとりで森から帰るのは大丈夫か、心配で聞いてみる。

「パール、おまえもひとりだろ? オレはパールよりも強くて、百一歳年上だぞ!」

 そう言われてしまう。
 ごもっともです……

 ウルグベお母さんに気をつけて帰るんだよっと、抱きしめてもらい、アリオさんにも気をつけてねっと、抱きしめられ告げられる。

「パールちゃん、ボクたちを当たり人に選んでくれてありがとう。おかげでツガイを得られそうだよ。パールちゃんのツガイも、はやく見つかるといいね」

 まだ、十歳にもなってないわたしに、そんなことを言うほど、気持ちはもうツガイのお姫様に向いているようだ。

 タルボさんはわたしがみんなと話している間から、何度も独り言のように小さな声でありがとうと言っていて目が少し、いやいっぱい潤んでいる。
 そんなタルボさんを見てしまうと、わたしまで別れるのが悲しくなって……

「タルボさ~ん! お別れするのがわたしもさみしいよぉ~! ホントに、ホントにいろいろありがと~ぉ、ふぇぇんっ!!」

 タルボさんに抱きついて、ちょっとだけ声を出して泣いたのはご愛嬌。

 こんな楽しい一日は、生まれて初めてだった。

 王都に来てからわたしはいつもひとりで気を張って頑張ってきたから、竜人の人たちの優しさに心がくすぐられて別れがつらい……

 テトリが優しく背中をトントンしてくれた。

 みんな、ありがとう……

 迷いの森まではタルボさんにもらった変幻のマントを羽織りテトリにおんぶされ、連れて行ってもらうことに決まった。

 店の中でみんなに手を振って、最後は笑顔でお別れをする。
 ギュッとテトリの首に抱きつきフードをかぶってお店を出ていく。
 あとはテトリが運んでくれる。

 そのとき前から、独り言のようにテトリの呟く声が聞こえてきた。

「パール、頑張れよ……」


 迷いの森まではホントに一瞬、すぐ森の手前まで着いてしまう。

 テトリはサッと優しくわたしを降ろしてくれた。
 一度フードを外し、ここでテトリともお別れだ。

「テトリ、いろいろありがとうね。テトリが当たり人一番目でホントによかったよ」

「オレこそ、ありがとう。パールはオレのツガイではないけど、ぜったい一生忘れない人だぞ!」

 二人で抱き合って別れの挨拶をしたあと、腰のマジックバックから、わたしが持ってきた残りの全てをテトリに渡してしまう。

「テトリ、わたしが向こうの国から持ってきた細かい残りモノだけど、全部もらってくれるかな?」

 カバンの中からカニハの木で細工したバンブの水筒とコップのセット、ケルスさんの作った木のコップ。
 わたしがもともと使っていた、革の採取用中袋に入れて渡す。
 布中袋の方には残りのお金。
 鉄貨四枚、銅貨四枚、銀貨四枚、大銀貨四枚を入れて渡した。
 あとは髪の毛をまとめる皮ひも一本と軟膏のミニを一個。
 これで全部だ。

「パール、すごく多いぞ! まだこんなに持っていたのか? うわっ?! 鉄貨も! おまえ、すごいなっ!」

「全部わたしの使っていたモノで、このカニハの木の皮で細工した水筒、中はバンブの木でわたしが作ったんだよ。それに細工師の親方がバンブの木が目立たないようにカニハの皮で細工して、キレイに手直しをしてくれたちょっと向こうでも変わったモノなんだ。その木のコップは、その親方のお孫さんとバンブの木一本で交換してもらったわたしのお気に入りだよ!」

「す、すごいな……」

「わたしが使っていたモノばかりだけど、よかったらどうぞ! その軟膏は低級ポーションの下だけど、回数関係なく使えるし、作ったところみたいだからそのままでも二年弱持つよ。それの大きな入れ物の方は、マプさんたちに渡したから、テトリにはちょうどいいでしょ?」

「マプさんたちが喜んでいた、あの軟膏か!?」

「そうだよ。これらは全部テトリの、いざ用だよ! 隠しておきなよ……お金もね。タルボさんたちは、いっぱい鉄のモノがあるんだから、これぐらいテトリが持ってても良いでしょう?」

「ありがとう……」

「テトリ、ホントにありがとうね。テトリのおかげでいろいろもらえて、すごく楽しかった……お別れはつらいけど、自分の場所に帰らないとね……」

「ああ、パール……おまえはぜったい、忘れない……パールのことは、ツガイの次にきっとオレの心から離れない……ありがとう」

「さすが、竜人さん。ツガイの次っていうのが、いいよっ! わたしもぜったい、ぜったい忘れないからね!」


 明るくお別れしようと、ふたりで背中を向けて……

 いち、に、さん、で振り返らない約束をし、森まで走ってお別れをした。


 森の中に入ってやっぱり振り返ると、テトリがこっちを向いて、手を振っていた……

 テトリ……振り返らないって約束したのに……

 わたしも大きく手を振りかえして……

「テトリーーっ! ありがとうーーっ!!」

 大きな声で叫んで、森の中へ走っていった。


 わたしの目からは、涙がポロポロ、ポロポロ出てきて、止まらない……

 人とお別れするって、ホントにつらい……

 変幻のマントのフードをかぶり、ひとりになったことを強く思い出して、夜の森の中、涙をぬぐってトケイソウを探す……

 もう、大丈夫。  
 大丈夫だよね……

 ひとりは、慣れているはず…… 
 
 よしっ! うん! できるーーっ!!

 
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