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164. ホットリップス発見!

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 テントを張りマークと、このまま進むか道を変えるか話し合う。

「暑いしだんだんと、森林がジメジメした薄暗い感じになってきたよね」

「ああ、そうだな。 カタカゴとホットリップスについて、何か他に知らないのか?」

「んーっ、そういえばゴタの図書館で少し資料があったかな? たしか、カタカゴはもっと涼しいところだと思うけど、ホットリップスは暑いところを好むと書いてあったから見つけられるかも?  資料に書いてあった通り蒸し暑いし、ツル植物も増えてきてるからあとは、コリブリでも飛んでいてくれると確率も上がるんだけど……」

「コリブリってあの ブンブン と音をさせて、ホバリングして後退飛行までする、あの小さくてカラフルな鳥か? それがどう関係するんだ?」

「うん。 コリブリは、ホットリップスの花の蜜が好きなんだよ。 だから、そこら辺を飛んでいるかもしれないでしょ?」

「わかった。 明日もう 一日は、歩きとボードでこのまま南へ進もう。 それから先は、道を変えてもいいかもな」

 今日は明日に備えて、サッと夕食を食べると早めに寝ることにした。


  ♢♢♢


 薄暗いジメジメした道を南へ歩いて進む。
 身体強化は、しているけどマークをみると暑そうだ……

「パール。 おまえ暑くないのか? 平気そうだな……」

「うん。 わたしもマークを見ていて気づいたところなんだけど、そんなに暑くないんだ……  この冒険用の服が魔道具になっているみたい。 防御力はあるといってたけど、暑さにも対応しているのか? 向こうのモノはすごいよ」

「アーっ それも、人には言うなよ! 人前では暑い振りするんだぞっ!」

「わかった……  マーク、お水いる?」

「いるっ!」

 マークにケルスさんが作ってくれたバンブの水筒に冷やした魔法水を入れて、コップと 一緒に渡してあげる。
 わたしは、親方が作ってくれたカニハの木の皮を付けた水筒とコップで、カニハの花の模様を眺めながらお水を飲む。

「パール? おまえの水筒、少し変わってないか? このおれに渡してくれた水筒もバンブだよな…… 水はパールの冷えた魔法水。それだけでもすごいと思うけど、その模様……  おまえのそれは、なんだ?」

「ふ、ふっ これね、バンブのコップがピアンタの屋台で目立ったから、バンブだとわからないように、親方に頼んで作ってもらったんだ! へへ、これでバンブが目立たないでしょ。 カニハの木の皮をバンブに付けてくれたんだよ。 ナイショで 一つほら! 花びらの模様もあるんだ! かわいいでしょ」

「ハァー おまえ。 あの親方が、実はすごい人だと知っているのか?」

「えっ、すごい人?」

「ああ。 あれだけ生きているんだ、隠れた有名人だぞ! 細工師の最高峰の人だ。 そんな人に作ってもらった モノが、ただのバンブより目立たないと思うのか? バンブの水筒より数倍目立っているぞっ!」

「えーーっ!?」

 マークが、顔を横に数回 降っていた……


 ツル草が上へ上へと、木に絡まって伸びている。
 少し歩きづらいけど、これはどうにもならない。

 ブンブン ブンブン!

「パールいたぞっ! コリブリだっ! ここらへんに もしかしたらホットリップスがあるんじゃないか?」

「そうだね! 特徴は、赤い唇って書いてあったよ。 唇に 一番似ているときは、花が咲く前みたいで ホントの花は、白とか黄色? の小さな花なんだって!」

「赤、赤、あか……い、唇だな?…… んっ あれじゃないか?」

「えっ、どれ?」
 
「百メートル向こうの方に赤い花? か、 何かわからんが、てんてんと 見えるだろう?」

 かすかに何か、赤いモノが数個見える。
 二人で、小走りで近づくと……

「あった! ホントだ! 赤い、ホントに赤い唇だ!?」

「ホントだな。 これは、気持ち悪いな……」

 赤い唇は、葉も使うから程よいところで、また生えてくるように切っていく。

 ホットリップスをスキルマッピングすると、近くでも数本見つけることができた。

 集めて帰ろうとマークを見ると、サッと横に近づき前に出る。

「何か、いるぞっ!」

 近くの木の葉が揺れている?


 えっ、何かそこにいるの?
 慌てて、チェリー に聞く。

(はい。 いますが、それほど危険ではありません)

 そのとき、ゴソゴソ音がしてーーっ なにっ? 
 
 ウキーィ! 

 木と葉が生い茂った影から、なにかが飛び出してきた!

 うわーっ! 思わず手で顔をカバー する。

 マークが剣の鞘で軽くかわすと、どこかへいってしまった。
 
「モンキー だな」

「黄色と茶色の小さなモンキー だったね……」

「ハァー パール。 これからは、どこにいく?」

「うん。 一度ボードで上空からこの先がどうなっているのか見て、それから決めようかな?」

「ああ、いい考えだ。 パールならでは、だな」

 ボードがプルプル震え出す手前の上空限界まで上がる。
 まだまだ続く森林。
 ボードに乗ってみてもその先がどうなっているのか確認できない。
 
「このまま南にいくと、まだまだこんな感じが続くみたいだね…… 方角変えようか?」

「ああ、残りのカタカゴはもう少し涼しいところなんだろ? それなら、南ではなく西。 草原が広がるここから西北に進んでみるか」
 
「そうだね。 それがいいよ!」 

 ボードで、西北の方角に飛んでいく。
 しばらく飛んでいると、マークが声をかけてきた。

「パール、ここらへんで降りて歩くぞ」

「えっ、降りる? まだまだ草原まで距離があるよ?」

「ああ、さっきのパールを見て気づいたんだ。 あんな小さなモンキー が、急に現れただけで顔を隠してただろ? あれでは、どんなに優れた魔道具を持ってたって、危険だ! もう少し、目を逸らさないでどんなときでも対処できるように訓練しないとダメだ。 薬草ハンター だって危険はある。 歩くぞ」

「そうだね…… さっきは、ちょっとおどろいたけど……」

 ここからがたいへんだった。

 身体強化は、いくらかけてもいいから普通の冒険者たちと同じように走って冒険するよう指示される。

「これからは、冒険者のホントの普通をからだで体験して、すべて知識にするんだぞ!」

「はい……」

 マークのあとを、走ってついていく。
 途中、できるだけ魔物はチェリー に避けてもらって、マークに伝え進んでいった。

 小まめな水分補給は大事だと、開けたところで休憩する。
 水筒だけで、テーブルも禁止された。
 下手に地面に座ると、どんな虫がいるか分からないから危険なようだ。
 立って、魔法水を飲むだけ。

「しかし、パール。 おまえ、どうして魔物をこうも避けられるんだ? 助かるけど、これじゃあ訓練にならないぞ」

「そうなの? わたしが魔物を避けられるのは、レベルが59あるからじゃないかな?」

 マークにも、チェリー のことはナイショにしておく。
 昔、もしかしたら レベル50 になるかもと、話していたことがあったので教えてしまう。


「レ、レベルが、59!?」

 アレレッ おどろいてる?
 

 

 
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