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220. 気になるだけ?

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 あっという間に 十日が経ってしまった。

 ブレンダが戻ってきて、新しい騎士服を着ている。
 
「ブレンダ! カッコいいね! 似合っているよ」

「ありがとうパール。 わたしも気に入っているよ」

「ホントですね。 少し変わっていますが、ブレンダによく似合っていますよ」

「ブレンダ! これでセルバに行くのか? ラメール王国の騎士だと分かりにくくてちょうどいいかもな!」

「ああ、ガント。 これなら変にセルバ王国でもラメールの騎士だと目立たないから行動しやすいだろ?」

「ブレンダその胸の丸い革、パールの瞳の色か?」

「ライ 気づいたかい? どこの国かは分かりにくくてもこれでだれの護衛かすぐにわかるだろ? わたしの案さ!」

「よく考えられていますね」

「でしょ ソード? ちょっと照れ臭いけど、黒も効いててカッコイイんだよ! ブレンダとお店の人といっぱい相談して決めたんだ」

「パール、待たせたね。 これでもう、いつでも出発できるよ」

 ホントだ!?

「うわぁ じゃあ、もう明日行こうか!!」


「「「えーーっ!!」」」

「それは、ダメだよ。 みんなもおどろいているだろ? せめて、マークのところとモナルダのところにはこれから行くと報告しないとね。 そんなんじゃ、マークが悲しむよ」

「そうか……」

「パール、せめて送別会はしましょうね」

「ソード、そういうのはいいよ…… 」

「ふっ パールらしいね。 ソード、そんなに大層なことをしたら、パールは寂しいんだよ。 気持ちを汲んでくれるかい?」

「ふぅっ そうですか…… では、身内だけでおいしい物を食べましょうか?」

「うん、それがいい!」

「それじゃあ、明日いろいろ報告に回ってその次の夜だね」

「えっ? 明日の夜は?」

「マークのところで食べるよ。  その次の日がライたちとおいしい物を食べて、その次の朝に出発しようかね」

「うん、それがいい!」

「早いなぁ……」

「そうしますか? では、明後日に夕食会ですね」

「ソード? 何がうまい物になるんだ? いつもうまいからなっ! 楽しみだなっ パール!」

「そうだよね、ガント! 全部おいしいから、気になるよね?」

「ふ、ふふ。 楽しみにしていてくださいね」


  ♢♢♢


 朝からモナルダのところに向かって、明後日に出発すると報告しにいく。

 そのあと親方とメリッサにも報告に回って、今日は急いでマークのところまで戻ってきた。
 少しでもテオといたいからね。

 夕食は遅い時間にドラコの食堂で、シーナとテオそしてマークたちと食べた。
 途中でテオは寝てしまったけど、また授乳で起きるかな?

 最後はお店を閉めて、それからもみんなといっぱい歌って踊って、楽しく騒いだ。

 ホント、久しぶりに心から大笑いした……


  ♢♢♢

  
 今日は朝からなぜか、お風呂に入れられマッサージもしてもらい、プラムとシルエラが妙に張り切っている。

「パール様。 わたしたちは、ずっとパール様付きの侍女でございます。 これから数年お会いできませんが、お戻りになるころには、もっと精進してお待ちしております。 覚えておいてくださいませ」

「うん。 いままでありがと!   忘れないよ! でもね、わたしがライのツガイだとは決まっていないから、もし他の人が現れたら、その人にちゃんとつかえてよ」

「「それは、ないです!!」」

「ぷっ! いままで、いろいろありがとう! 侍女長にも伝えておいて。 ナンコウさんにも、感謝していると……」

「わかりました……」

 今日はライの家、最後の日だから、一日ゆったり過ごすことにする。

 部屋でゴロゴロしていると、ライからお茶のお誘いがあった。

 珍しい時間だったけど、お茶を 二人で飲むことにする。

 場所は庭の 一角で、薔薇がたくさん咲いているところみたいだ。


「パール、ここではソードもガントもブレンダも少し離れて待機してもらっている。 声が漏れない魔道具もおいている。 だから…… 安心して話してほしい」

「なにを、話すの?」

「なんでもいい、パールのことを知りたいんだ……」

「わたしのこと?」

「ああ そうだ」

「ライ、まだわたしがツガイだと決まったわけじゃないでしょう? だからこれからは、わたしを気にせず仕事を頑張ってね」

「仕事か?」

「そう、ライしかできない仕事がいっぱいあるでしょう? だって王太子だもん。 ツガイがだれだかわからないあいだは、ライにとって人に左右されずに生きていける大切なときでもあるんだから、思いっきり仕事や勉強、趣味なんかを自由に自分のためだけに時間を使ってできるじゃない?」

「人に左右されない? 自分のためだけの時間?」

「ツガイがホントに現れたら、そのツガイと 一緒にいたいから、それが 一番になって融通をつけるのもきっとたいへんだよ」

「いまはそれがないんだから、王様に付いて回るのが急にお泊りになっても、難しい会議が 一日中あったってひとりだから平気でしょ?  いまはそういうのを後回しにせずに頑張ってやっておくことがライのためだし、王国のためにもなるんじゃないの?」

「いまはひとりで、一日中平気でいれる……」

「わたしはまだ 十歳で、二百歳のライがなにを考えているのかわからないけど、みんながいまの王様になって暮らしやすくなったといっているから、次の王様のライにはそれ以上にわたしたちの暮らしをよくしてほしいとみんなが願っているし、期待しているんだよ」

「ああ、それは わかっている……     パール、どんな王国にしてほしい?」

「えーっ どんな、だろう……  えっと…… みんながお腹を空かしているのに食べることができない、なんてことがない 国かな?」

「なんだ? 食べ物があったらいいのか?」

「違うよ。 それだけじゃあ、ダメ! お金を稼ぎたい人がだれでも働けて、自分の稼いだお金で食べ物が買える国かな?」

「仕事か? いろんな仕事を用意したらいいのか?」

「そうだね、働きやすい環境も大事だよ! そうしたら、子どもやおばあさんだけになっても、どうにか食べてはいけるでしょ?」

「そうだな……」

「なぁ、パール。 もしホントに、おれのツガイだとしたら…… ツガイになってくれるか?」

「んーっ? 難しい問題だね。 わたしはまだ 十歳で恋とか愛とかがわからないけど、そういうことを考える年齢になったときライのこともわたしの相手の候補には、ちゃんと入れるよ」

「候補?! 他にもいるのか?」

「いまはまだ 十歳だよ! いないし、まだ だれを好きになるかなんて、そんなことわからない。 そんな気持ちも 不思議な感じ? ライだって、いまわたしのこと好きなの? 違うでしょ? 気になるだけなんて、恋でも愛でも どっちでもないじゃない?」

「うっ そうなんだろうか…… 恋や愛……」

「ライ、いままでありがとうね。 これからもお仕事頑張って!」

 そう伝えて、席を立った。

 これでもう 大丈夫…… の、はず……

 わかってくれたよねっ? ライ!?
 
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