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7章 三人暮らし
31話
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気持ちの整理がつかず、志田との会話は最小限になってしまう。
志田も志田で椎木を引き留められなかったことを気に病んでいるのか、いつも以上に口を開かなかった。
「リヒト、ご飯食べよー!」
最近よく聞く声がして、とんでもなくびっくりした。
家を勝手に飛び出していった椎木が教室に現れたのだ。
「ああ」
いつも文句を言う志田だったが、今日ばかりは受け入れるしかない。
真理子は胸がずきっと痛むのを感じた。
「アイザワさん、外で食べない?」
そのとき、川上が声をかけてきた。
いいよと、真理子はすぐに了承する。
二人が一緒にいるところを見ていられなかったから。
「あたしも行く!」
というのは美紀。
どうぞと、川上はニコッと笑った。
二人とも気を遣ってくれているのだった。
学校内にくつろぐスポットは多く用意されている。人気のあるところは取り合いになってしまうが、なんとか一つを確保する。
真理子たちはお弁当を広げる。
実は真理子のは、志田お手製のお弁当。
志田のお弁当と中身は同じなのだが、並びを変えて同じだとは思わせないように作ってある。
「リヒトがアイザワさんに何かした?」
「ぐほっ」
川上がいきなり本題をぶつけてくるので、食べているものを吹き出してしまいそうになる。
「川上、唐突すぎ! ノンデリか!」
すかさず美紀がツッコむ。
「遠回しに言ってもしょうがないかなと思って」
川上はてへへと笑う。かっこいい顔して案外エグい。
志田が話したので、川上はある程度、真理子たちの事情を知っている。
「ううん、志田くんは何も悪くないの」
「じゃあ、椎木さんのこと?」
「うーん……。それもあるけど、自分の問題かな……」
「そっか。俺が力になれることはない?」
「ありがと。こればかりは自分でなんとかしないといけないんだ」
心配してくれるのはとてもうれしい。自分は一人じゃないって思えるから。
でも、今ある問題はホントに自分の問題で、他の人に手伝ってもらえるものじゃなかった。
志田が好きだからこその悩み。好きをやめるか、他の問題が片付くまでは長引きそう。
「そんなにリヒトのことが好きなんだね」
「ごふっ!?」
ついに食べているものを吹き出してしまう。
「ご、ごめん!」
「真理ちゃん、なにやってんの!」
美紀がすぐにティッシュで拭いてくれる。
「うらやましいな。リヒトはそんなに思われていて」
以前、真理子に告白した川上。
一皮むけて成長したのか、達観したようなしゃべり方をするので驚いてしまう。もともと大人びていたけれど、ずっと大人になった気がする。
そして、めちゃくちゃ恥ずかしい。夏になったかのように暑く感じる。
「それならリヒトを信じてやって。あいつは絶対に裏切らないから」
川上は真剣な面持ちで言う。
「……うん、知ってる」
「ゆっくり大きく構えていれば、いつかは落ち着くはずだよ」
真理子は川上の言う通りだと思った。
今、いろんなことが起きすぎて焦ってしまっている。物事があっちにいったりこっちにいったり定まらないことで、心もまったく落ち着かなかった。
でも、一つ動かないものがある。
志田の真理子を思う気持ち。
自分でそう考えるのは恥ずかしいけれど、それが志田の中で揺らぐのはこれまで見たことがないし、これからもきっとないと思う。
うぬぼれているわけじゃなくて、それが志田の本質だから。真理子が好きになったところだから。
「そうだね。ありがと!」
志田は、他の誰かがじゃない、自分自身が選んだ人。
なら、それを信じられない自分が悪いじゃないか。
川上の言うように、大きく構えて自分が選んだ人を待たなきゃ。そうでなけりゃ、志田にも失礼だ!
(なんで忘れてたんだろ。私は一人じゃない。家族なんだからしっかりしなきゃ!)
真理子はスマホの待ち受け画面を変える。
それは古墳の公園で撮った写真。真理子と志田が写っている。
恥ずかしいからと待ち受けにしていなかったけど、これが志田との大きなつながりだったことにようやく気づく。
どうして志田を信じてあげられなかったのかホントに恥ずかしい。
(弱気な私、バイバイ)
志田も志田で椎木を引き留められなかったことを気に病んでいるのか、いつも以上に口を開かなかった。
「リヒト、ご飯食べよー!」
最近よく聞く声がして、とんでもなくびっくりした。
家を勝手に飛び出していった椎木が教室に現れたのだ。
「ああ」
いつも文句を言う志田だったが、今日ばかりは受け入れるしかない。
真理子は胸がずきっと痛むのを感じた。
「アイザワさん、外で食べない?」
そのとき、川上が声をかけてきた。
いいよと、真理子はすぐに了承する。
二人が一緒にいるところを見ていられなかったから。
「あたしも行く!」
というのは美紀。
どうぞと、川上はニコッと笑った。
二人とも気を遣ってくれているのだった。
学校内にくつろぐスポットは多く用意されている。人気のあるところは取り合いになってしまうが、なんとか一つを確保する。
真理子たちはお弁当を広げる。
実は真理子のは、志田お手製のお弁当。
志田のお弁当と中身は同じなのだが、並びを変えて同じだとは思わせないように作ってある。
「リヒトがアイザワさんに何かした?」
「ぐほっ」
川上がいきなり本題をぶつけてくるので、食べているものを吹き出してしまいそうになる。
「川上、唐突すぎ! ノンデリか!」
すかさず美紀がツッコむ。
「遠回しに言ってもしょうがないかなと思って」
川上はてへへと笑う。かっこいい顔して案外エグい。
志田が話したので、川上はある程度、真理子たちの事情を知っている。
「ううん、志田くんは何も悪くないの」
「じゃあ、椎木さんのこと?」
「うーん……。それもあるけど、自分の問題かな……」
「そっか。俺が力になれることはない?」
「ありがと。こればかりは自分でなんとかしないといけないんだ」
心配してくれるのはとてもうれしい。自分は一人じゃないって思えるから。
でも、今ある問題はホントに自分の問題で、他の人に手伝ってもらえるものじゃなかった。
志田が好きだからこその悩み。好きをやめるか、他の問題が片付くまでは長引きそう。
「そんなにリヒトのことが好きなんだね」
「ごふっ!?」
ついに食べているものを吹き出してしまう。
「ご、ごめん!」
「真理ちゃん、なにやってんの!」
美紀がすぐにティッシュで拭いてくれる。
「うらやましいな。リヒトはそんなに思われていて」
以前、真理子に告白した川上。
一皮むけて成長したのか、達観したようなしゃべり方をするので驚いてしまう。もともと大人びていたけれど、ずっと大人になった気がする。
そして、めちゃくちゃ恥ずかしい。夏になったかのように暑く感じる。
「それならリヒトを信じてやって。あいつは絶対に裏切らないから」
川上は真剣な面持ちで言う。
「……うん、知ってる」
「ゆっくり大きく構えていれば、いつかは落ち着くはずだよ」
真理子は川上の言う通りだと思った。
今、いろんなことが起きすぎて焦ってしまっている。物事があっちにいったりこっちにいったり定まらないことで、心もまったく落ち着かなかった。
でも、一つ動かないものがある。
志田の真理子を思う気持ち。
自分でそう考えるのは恥ずかしいけれど、それが志田の中で揺らぐのはこれまで見たことがないし、これからもきっとないと思う。
うぬぼれているわけじゃなくて、それが志田の本質だから。真理子が好きになったところだから。
「そうだね。ありがと!」
志田は、他の誰かがじゃない、自分自身が選んだ人。
なら、それを信じられない自分が悪いじゃないか。
川上の言うように、大きく構えて自分が選んだ人を待たなきゃ。そうでなけりゃ、志田にも失礼だ!
(なんで忘れてたんだろ。私は一人じゃない。家族なんだからしっかりしなきゃ!)
真理子はスマホの待ち受け画面を変える。
それは古墳の公園で撮った写真。真理子と志田が写っている。
恥ずかしいからと待ち受けにしていなかったけど、これが志田との大きなつながりだったことにようやく気づく。
どうして志田を信じてあげられなかったのかホントに恥ずかしい。
(弱気な私、バイバイ)
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