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7章 三人暮らし
32話
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「あれ? 椎木さんは?」
「まだ帰らないって」
「はあ」
美紀の手伝いで女子バスケの試合に出てから家に帰ると、志田しかいなかった。
学校であんなに絡んできたのだから、もう機嫌は直り家に戻ってくると思っていた。
「私のことが嫌いなのかな」
「好きではなさそうだな」
「あはは、だよね」
昨日はケンカをしてしまったし、家族として居候しようと思っている椎木にとって自分は邪魔者でしかない。
真理子にとっても椎木はもちろん邪魔者だけど、別に恋のライバルにはなり得ないから、スルーしてもいいと思えるようになってきた。
「昨日のこと、謝りたいな……」
「そうだな。戻って来たら一緒に謝ろう」
「連絡先は知らないの?」
「知らない。あ、母さんに聞けばわかるのか?」
椎木は、志田の母の再婚相手の子。法律的な親子で、保護者。当然、連絡先は知っているはず。
「でもなあ……」
珍しく志田が渋る。道理が通っていれば、いつも即断即決なのに。
「お母さんとはあまり仲良くないの?」
父は親権があり、形式上、育ててくれている人だけど、別居している。一方、母とは幼いときに別れて、それから連絡も取れない関係なんだろうか。
「あの人は異常なんだよ。自分中心にしか物事を考えられない。そういう意味ではアイザワんとこと似てるけど、あっちは単純に子供。幼すぎて、話してわかるなんて120パーセントあり得ない」
真理子は驚いてしまう。
無理だとわかっていて、真理子の母と対決にいった人が、自分の母となると完全にあきらめている。どういう人なのかちょっと気になる。
そして一方で、頭が痛くなる。どうしてこう問題児……もとい問題親ばかりなんだろう……。
「明日、学校で本人に聞いてみよう」
「アイザワはいいのか?」
「なにが?」
「椎木がここに住むこと」
「うーん……」
志田は真理子の素直な気持ちを知りたいから、ストレートに聞いてきている。
はぐらかすべきかちょっと悩むけど、ここはそれに応じてストレートに答える。
「正直嫌だよ」
「だよな。ごめんな、巻き込んで」
「それはしょうがないよ。志田くんが悪いわけじゃないし、だからといって椎木さんが悪いわけでもない」
これも本当にそう思ってる。みんな毒親の被害者なんだ。
「でもだからといって、椎木さんを積極的に助けたいとまでは思えない……。ごめん」
嫉妬の塊。
心を制御しようと思っても、恋愛においてはどうしようもならない。怒りも爆発するし、悲しみで地の底まで落ち込みもする。
「だよな……」
そう言うと志田は黙り込んでしまう。
真理子のため、椎木のためどうすればいいのか悩んでいるようだった。
そこで、聖人君子のように「私は気にしないから一緒に住もうよ」と言えればいいんだけど、真理子はそこまで自分を捨てられなかった。
でも、志田のことは信じている。
だから志田のやることを最大限尊重する。
「まだ帰らないって」
「はあ」
美紀の手伝いで女子バスケの試合に出てから家に帰ると、志田しかいなかった。
学校であんなに絡んできたのだから、もう機嫌は直り家に戻ってくると思っていた。
「私のことが嫌いなのかな」
「好きではなさそうだな」
「あはは、だよね」
昨日はケンカをしてしまったし、家族として居候しようと思っている椎木にとって自分は邪魔者でしかない。
真理子にとっても椎木はもちろん邪魔者だけど、別に恋のライバルにはなり得ないから、スルーしてもいいと思えるようになってきた。
「昨日のこと、謝りたいな……」
「そうだな。戻って来たら一緒に謝ろう」
「連絡先は知らないの?」
「知らない。あ、母さんに聞けばわかるのか?」
椎木は、志田の母の再婚相手の子。法律的な親子で、保護者。当然、連絡先は知っているはず。
「でもなあ……」
珍しく志田が渋る。道理が通っていれば、いつも即断即決なのに。
「お母さんとはあまり仲良くないの?」
父は親権があり、形式上、育ててくれている人だけど、別居している。一方、母とは幼いときに別れて、それから連絡も取れない関係なんだろうか。
「あの人は異常なんだよ。自分中心にしか物事を考えられない。そういう意味ではアイザワんとこと似てるけど、あっちは単純に子供。幼すぎて、話してわかるなんて120パーセントあり得ない」
真理子は驚いてしまう。
無理だとわかっていて、真理子の母と対決にいった人が、自分の母となると完全にあきらめている。どういう人なのかちょっと気になる。
そして一方で、頭が痛くなる。どうしてこう問題児……もとい問題親ばかりなんだろう……。
「明日、学校で本人に聞いてみよう」
「アイザワはいいのか?」
「なにが?」
「椎木がここに住むこと」
「うーん……」
志田は真理子の素直な気持ちを知りたいから、ストレートに聞いてきている。
はぐらかすべきかちょっと悩むけど、ここはそれに応じてストレートに答える。
「正直嫌だよ」
「だよな。ごめんな、巻き込んで」
「それはしょうがないよ。志田くんが悪いわけじゃないし、だからといって椎木さんが悪いわけでもない」
これも本当にそう思ってる。みんな毒親の被害者なんだ。
「でもだからといって、椎木さんを積極的に助けたいとまでは思えない……。ごめん」
嫉妬の塊。
心を制御しようと思っても、恋愛においてはどうしようもならない。怒りも爆発するし、悲しみで地の底まで落ち込みもする。
「だよな……」
そう言うと志田は黙り込んでしまう。
真理子のため、椎木のためどうすればいいのか悩んでいるようだった。
そこで、聖人君子のように「私は気にしないから一緒に住もうよ」と言えればいいんだけど、真理子はそこまで自分を捨てられなかった。
でも、志田のことは信じている。
だから志田のやることを最大限尊重する。
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