2 / 21
2話・悪魔王ゼロノスが生み出す悪魔東京
しおりを挟む
すると、目の前の人型の悪魔らしい黒い歪みはゆっくりとクリアになって行く。俺の青い目はその歪みから目が離せない。
(……星野はおそらく悪魔に殺された。でも悪魔に今は勝つ方法は無い。山手線が止まらないなら捨て身でかかるしかないか……俺の命を使うのは……今だ……)
血に染まる死体になっているが、美しい顔で死んでいる星野の顔を見て俺は覚悟を決めた。
山手線殺しにより止まらない山手線は、もうあるはずの振動すら無く走り続けている。すでに俺のいる車両以外の人間は他の悪魔に殺されていて悲鳴の一つすら聞こえない。悪魔の仕業と確定していい山手線殺しの犯人に俺は聞いた。
「もう一度聞くぞ? お前は悪魔か?」
「……」
聴こえているのかわからないが、その悪魔は大きく頷いて邪悪な赤い目を輝かせる。
それは大柄の体格に、黒い騎士の鎧を着た青い肌の男。長い黒髪は肩まであり、左目を隠すような髪型だ。威圧感、存在感、その全てが人間のソレとは違っていた。この存在こそが俺が求めていた悪魔だった。そうして、その悪魔は口を開く。
「ほう? まだ完全体ではない我が見えるのか。悪魔王であるゼロノスの肉になる事を感謝せよ。物怖じせぬ若人よ」
「知るかよ!」
クラスメイトの星野が殺されて湧き上がる冷たい激情をぶつけるように、勢いのまま隠れていない右目をブン殴ってやった。
悪魔だって目をやられれば、怯むはずだ。
そして、隠れている右目も潰そうと拳を構える――。
「……的確に急所を攻撃するとは。人間とは無粋な生き物だな。格を知れ」
悪魔王ゼロノスという奴は俺の左目に指を伸ばして来た。眼球が掴まれてしまう俺は動きが止まる。ククク……とゼロノスは笑っていた。
「イキのいい人間の肉は必要としていた所だ。まだ完全に具現化が出来るわけじゃないから、左目だけ頂いておこう。この左目が我が人間界へ出現する為の生贄となろう」
「安い生贄だな。それでも悪魔王かよ」
強気の俺はゼロノスを挑発した。
悪魔が見えるなら、悪魔を過去に見た事のある俺は悪魔に対して何かが出来ると信じていた。もちろん恐怖はある。けど、悪魔王に俺の憎悪が認められれば、世界さえも変えられるはずだと信じていた。
多少口元を歪ませた悪魔王ゼロノスは言う。
「格を知れと言ったはずだ。少年はこの状況が怖く無いのか?」
「怖いが、怖くない。俺は悪魔を過去に見た事がある。俺は悪魔にとって特別な何かが出来る存在だ。例えばゼロノス。お前を殺すとかな」
「夢見がちな少年だ。人間の少年とはこんなものなのか。格を知る必要がある。それではこの左目は貰うぞ」
「お前が俺の目を奪うなら、俺はお前の命を奪ってやる! 必ず殺してやるぞ悪魔王ゼロノス!」
瞬間、激痛と血の散乱と共に左目を奪われる。そのまま俺は車両のシートに投げ捨てられた。
気絶はしていないが、おそらくもう長くは保たないだろう。左目を失った痛みと出血が俺を殺そうとしている。残る右目でゼロノスの野郎を確認する。
(奴は……どこだ?)
俺の左目を得て、自分が具現化する力か魔力を宿してゼロノスは満足しているな。もう、奴は俺の事など忘れているようだ。血が降り注ぐように真っ赤に染まっている、山手線内部の景色を眺めていた。そして、地震のような振動が起こり山手線周辺の東京に異変が起き出していた。人々は逃げ惑い、天変地異に恐怖している。
山手線円内中央ブロックでは、歪な巨大な木のようなタワーが存在した。それは生きているように天へ向かって伸び出した――。
(くそっ……俺は何も出来ないのか? 俺には悪魔に対して何も……?)
立ち去ろうとしていたゼロノスは立ち止まっていた。左目を隠していた長い髪は耳にかけていて、俺の青い瞳がそこに輝いていた。そして、思い出したかのように、俺をまじまじと見つめている。
「この青い目の感覚。そうか、君があの時の……」
ニタァ……と悪魔らしい嗤いを見せるゼロノスはどうやら俺を殺す気になったようだ。売られた喧嘩は買わなきゃいかん。瀕死の俺は立ち上がって構えた。どうせ死ぬなら、もう一発ブン殴ってやらなきゃ気が済まないからな!
「そうだな。やはり君はここで殺した方がいいな。悪魔を見て恐れない人間などあり得ない。君は破滅的思想を持ち過ぎているよ。人間ですら君には共感されないだろう。この悪魔王であるゼロノスを生で見て恐怖せぬなど……」
「共感不要の革命者になる俺に共感はいらない。それに悪魔も肩書きがあるのかよ。悪魔の世界も面倒そうだな」
「もう面倒ではなくなる。君は死ぬのだから。君の現実は死だ。これは確定事項である」
「そうだ。何者も現実には勝てない。けど、その現実が変わったからこそ、俺は現実に勝てるんだ」
悪魔が世界に現れれば、抑圧されていた人間達が解放される時代が来る。戦国時代や幕末……それ以上に楽しい時代が訪れるはずだ。その時代を生きるのが俺の夢――。
「ゼロノス……俺はお前を……」
「これが現実だ少年」
ゼロノスは手の平から衝撃波を起こし、それが全身に直撃した。山手線内から俺は窓ガラスを突き破り、外へ弾かれた。その浮遊中、失ったはずの左目でハッキリと山手線の窓から見えるゼロノスが見えていた。
(何故……ゼロノスの野郎がハッキリ見えるんだ? 俺の左目は奴に奪われたのに……)
俺の左目は、魔を秘めた赤い魔レンズが生まれていた。そうして、山手線殺しの日から山手線線内部の東京は外と隔離された悪魔が闊歩する魔都「悪魔東京」と成り果てた。
(……星野はおそらく悪魔に殺された。でも悪魔に今は勝つ方法は無い。山手線が止まらないなら捨て身でかかるしかないか……俺の命を使うのは……今だ……)
血に染まる死体になっているが、美しい顔で死んでいる星野の顔を見て俺は覚悟を決めた。
山手線殺しにより止まらない山手線は、もうあるはずの振動すら無く走り続けている。すでに俺のいる車両以外の人間は他の悪魔に殺されていて悲鳴の一つすら聞こえない。悪魔の仕業と確定していい山手線殺しの犯人に俺は聞いた。
「もう一度聞くぞ? お前は悪魔か?」
「……」
聴こえているのかわからないが、その悪魔は大きく頷いて邪悪な赤い目を輝かせる。
それは大柄の体格に、黒い騎士の鎧を着た青い肌の男。長い黒髪は肩まであり、左目を隠すような髪型だ。威圧感、存在感、その全てが人間のソレとは違っていた。この存在こそが俺が求めていた悪魔だった。そうして、その悪魔は口を開く。
「ほう? まだ完全体ではない我が見えるのか。悪魔王であるゼロノスの肉になる事を感謝せよ。物怖じせぬ若人よ」
「知るかよ!」
クラスメイトの星野が殺されて湧き上がる冷たい激情をぶつけるように、勢いのまま隠れていない右目をブン殴ってやった。
悪魔だって目をやられれば、怯むはずだ。
そして、隠れている右目も潰そうと拳を構える――。
「……的確に急所を攻撃するとは。人間とは無粋な生き物だな。格を知れ」
悪魔王ゼロノスという奴は俺の左目に指を伸ばして来た。眼球が掴まれてしまう俺は動きが止まる。ククク……とゼロノスは笑っていた。
「イキのいい人間の肉は必要としていた所だ。まだ完全に具現化が出来るわけじゃないから、左目だけ頂いておこう。この左目が我が人間界へ出現する為の生贄となろう」
「安い生贄だな。それでも悪魔王かよ」
強気の俺はゼロノスを挑発した。
悪魔が見えるなら、悪魔を過去に見た事のある俺は悪魔に対して何かが出来ると信じていた。もちろん恐怖はある。けど、悪魔王に俺の憎悪が認められれば、世界さえも変えられるはずだと信じていた。
多少口元を歪ませた悪魔王ゼロノスは言う。
「格を知れと言ったはずだ。少年はこの状況が怖く無いのか?」
「怖いが、怖くない。俺は悪魔を過去に見た事がある。俺は悪魔にとって特別な何かが出来る存在だ。例えばゼロノス。お前を殺すとかな」
「夢見がちな少年だ。人間の少年とはこんなものなのか。格を知る必要がある。それではこの左目は貰うぞ」
「お前が俺の目を奪うなら、俺はお前の命を奪ってやる! 必ず殺してやるぞ悪魔王ゼロノス!」
瞬間、激痛と血の散乱と共に左目を奪われる。そのまま俺は車両のシートに投げ捨てられた。
気絶はしていないが、おそらくもう長くは保たないだろう。左目を失った痛みと出血が俺を殺そうとしている。残る右目でゼロノスの野郎を確認する。
(奴は……どこだ?)
俺の左目を得て、自分が具現化する力か魔力を宿してゼロノスは満足しているな。もう、奴は俺の事など忘れているようだ。血が降り注ぐように真っ赤に染まっている、山手線内部の景色を眺めていた。そして、地震のような振動が起こり山手線周辺の東京に異変が起き出していた。人々は逃げ惑い、天変地異に恐怖している。
山手線円内中央ブロックでは、歪な巨大な木のようなタワーが存在した。それは生きているように天へ向かって伸び出した――。
(くそっ……俺は何も出来ないのか? 俺には悪魔に対して何も……?)
立ち去ろうとしていたゼロノスは立ち止まっていた。左目を隠していた長い髪は耳にかけていて、俺の青い瞳がそこに輝いていた。そして、思い出したかのように、俺をまじまじと見つめている。
「この青い目の感覚。そうか、君があの時の……」
ニタァ……と悪魔らしい嗤いを見せるゼロノスはどうやら俺を殺す気になったようだ。売られた喧嘩は買わなきゃいかん。瀕死の俺は立ち上がって構えた。どうせ死ぬなら、もう一発ブン殴ってやらなきゃ気が済まないからな!
「そうだな。やはり君はここで殺した方がいいな。悪魔を見て恐れない人間などあり得ない。君は破滅的思想を持ち過ぎているよ。人間ですら君には共感されないだろう。この悪魔王であるゼロノスを生で見て恐怖せぬなど……」
「共感不要の革命者になる俺に共感はいらない。それに悪魔も肩書きがあるのかよ。悪魔の世界も面倒そうだな」
「もう面倒ではなくなる。君は死ぬのだから。君の現実は死だ。これは確定事項である」
「そうだ。何者も現実には勝てない。けど、その現実が変わったからこそ、俺は現実に勝てるんだ」
悪魔が世界に現れれば、抑圧されていた人間達が解放される時代が来る。戦国時代や幕末……それ以上に楽しい時代が訪れるはずだ。その時代を生きるのが俺の夢――。
「ゼロノス……俺はお前を……」
「これが現実だ少年」
ゼロノスは手の平から衝撃波を起こし、それが全身に直撃した。山手線内から俺は窓ガラスを突き破り、外へ弾かれた。その浮遊中、失ったはずの左目でハッキリと山手線の窓から見えるゼロノスが見えていた。
(何故……ゼロノスの野郎がハッキリ見えるんだ? 俺の左目は奴に奪われたのに……)
俺の左目は、魔を秘めた赤い魔レンズが生まれていた。そうして、山手線殺しの日から山手線線内部の東京は外と隔離された悪魔が闊歩する魔都「悪魔東京」と成り果てた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる