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6話・ルーンメイズの少女-美空舞花
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「ミミ」
「かしこまり!」
ルーンメイズのリーダー本間から与えられた渋谷区役所内にある自室で映画を見ながら寝てしまった俺は、目を覚ますと茶髪の少女に銃口を向けられていた。瞬時にミミを使い、その銃口から放たれた弾丸を一瞬だけ止めてもらう。
「のぉ!」
蹴りを入れつつ弾丸を回避し起き上がると、狭い室内でのバトルとなった。向こうはかなり喧嘩慣れしてるのか、体術は素晴らしいものがある。
(何だこの女――侵入者か!? しかも強い! 格闘技の訓練でもしてるのか? 殺すしかない――)
すると、茶髪のセミロングの女は手を止めた。左腕には白い布が巻かれているのを見て、俺も殺すのをやめた。
「お前、誰か知らないがルーンメイズの人間か。俺は悪魔神罰の夜野星矢。悪魔東京を革命する人間だ。本間リーダーからこの部屋は与えられている」
「知ってるわよ。にしても、拳銃の弾を防ぐとはね。悪魔を飼っている噂は本当だったか」
「飼われてなーい! それと手がヒリヒリするー! この女殺しちゃえ! 下衆な内臓喰わせろ!」
と叫ぶミミがウルサイからデコピンで黙らせた。互いに緊張から少し解放され、俺はこの女をまじまじと見た。身長は160センチぐらいで髪は茶髪のセミロング。服装は警察官が着るようなシャツに紺のスカート姿だ。けど、顔は高校生ぐらいにしか見えない。しかも、腰に脇差のような刀をベルトにぶち込んでいる。よくわからないが、この女の実力は本物だ。
「お前の自己紹介を聞こう。それと俺を試した目的は?」
「死ななければ教えてあげる」
平然と女は俺を射殺しようと銃を撃った。そこにあえて突っ込んで銃口から身体を外させ、女をベッドの上に押し倒した。俺が女の喉元に突き付ける脇差は、少し首の肉に食い込んでいる。その血が――ベッドのマットレスに流れた。
「私の脇差を盗んだの?」
「殺す為にな」
と、その脇差をベッドに刺した。
そして、この女に忠告する。
「俺に関わるならそこそこの強さが必要だ。腕の一本もらう予定だったが、首が少し切れただけか」
「……やってくれるわね。女にも全く容赦しないなんて。ルーンメイズを敵に回したいの?」
「全て敵でいいんだよ。その方が楽しめる。食事、睡眠、性交時……どんな時でもスリルがあって楽しそうじゃないか?」
「悪魔より悪魔だわ。人間側とは思えない」
「人間さ。人間が想像した悪魔に、人間が悪意で負けるはずが無い」
「人間が想像した悪魔じゃ無くて、悪魔とは元々存在していたのよ? ゼロノス達は少し時間軸が違う世界を生きていた。ネット社会になって様々な電波が飛び交うようになり、たまに現世に出現する悪魔達が当たり前の存在になったの。これは悪魔達の示した事実よ」
「それは悪魔達の言い分だ。俺は俺の意見しか信じない」
「古臭い武士道ね。革命家とは思えないわ。人間に仇を成すなら私が殺してあげる」
「その考えを絶対に変えるなよ? ミミ。治してやれ」
「えぇ……後で人間の内臓を食べさせてよねぇ」
と言いつつミミは魔法で治療した。ミミには多少の傷なら回復出来る能力がある。ようやく、目の前のムカつく女は俺を認めたようだ。見た目はいいがハッキリ言って嫌いだ。ミミもかなり嫌がっている。毛嫌いしてる証拠か、紫の髪が逆立ってるのが面白い。それに気付く女も微笑む。
「私は美空舞花。ルーンメイズの幹部よ。舞花って呼んでいいわ」
どうやら、年齢は俺と同じようだ。高校一年で、すでに一体の悪魔を殺していて幹部に抜擢されたらしい。確かに、この女の体術や殺しに対する躊躇いの無さは凄いと思う。
「美空という事は、兄貴はリーダーの美空圭司か? それにその警察官の服は何だ? 着ていた服は悪魔にでもボロボロにされたのか?」
「兄は年は離れているけどルーンメイズのリーダーがそうだよ。この服を着る理由は、そもそも私は警察官志望だからね。着たいから着てるだけ。この世界じゃ警察なんてもう存在しないし」
「警察志望か。理由はあるのか?」
「私の父親は警察なのよ。だから、警察官が多いルーンメイズにもすんなり入れた。じゃあ、今度は私の質問ね」
「あぁ、答えよう」
「何故、そこまでこの環境に対応出来るの? 星矢は本当に人間なの?」
どうやら、少し重い質問のようだ。
本間リーダーからの意思もあるだろうが、この女は自分から命懸けでこの質問をして来た。今ならば、この世界ならもう話してもいいだろう。
「……なら俺の過去を少し教えよう」
すでにミミは寝こけているが、俺はベッドの上に座り過去の話をした。
かつて、俺は強盗犯に母と祖父母を殺されている。そして、その犯人を五歳児ながら包丁で撃退し、なます切りにしていた。
全ての手足と爪も剥ぎ取り、左目には包丁を突き刺して残る右目で犯人に罪と罰を与えていた。
そうする為に敢えて、生かしてもいた。
それは報道されていないが、犯人の怪我は家族とのもみ合いで重傷となっている。誰も、五歳児が刃物で撃退し、敢えて生かすなんて行為はしないだろう。
殺人専門家のような鮮やかな仕事である。
魔王と呼ばれた織田信長や、新選組の土方歳三さえも、この年齢でこんな拷問はするかはわからない。
その後も、学校での成績は良いがトラブルは続いていた。
他人と世界への憎悪が並外れていて、今まで影で数人の教師と同級生や上級生を病院送りにしている。その憎悪はいずれ世界に害をもたらすとして、俺を知る親戚などからは疎まれていた。
たった一人で世界を壊す力があれば……。
と、俺は本気で進化しているが世界崩壊を願っていた。進化しているが、硬直しかしていない世界は悪そのものだ。その思いがより強くなったのは、親戚の家を家出し「悪魔」を見たあの時からだった。
悪魔が人間にもたらすのは破滅だ。
この世の破滅こそ快楽だと俺は信じていた。
人類の終末期思考こそが、俺そのものなんだ。
「……という話だ。いわゆるサイコパスとかシリアルキラーとか、そんな感じの感覚がある人間だ。悪魔の存在も現実で見た事もあるしな」
「そう……その話は信用出来る。実際、こんな悪魔が出る世界で魔法まで使えるのは星矢だけ。本当に貴方なら世界を革命出来るかも」
すると、隣に座る舞花は優しく微笑んだ。
まさか、こんな柔らかな笑顔が出来るとは思わず怖くなった。この女は謎だとも思った。そして、舞花は言う。
「因みに、ここは私の個室だったの。私は星矢をまだ悪魔側の人間と思ってるから監視するわ。この部屋に住んでね」
「……俺は女がいれば襲うタイプだから辞めとけ」
「嘘つき。貴方は女よりも、殺しの快感を求めてる人間。だから、私が監視するのよ」
それはお前もそうだろう? という言葉は飲み込んだ。すると、警戒警報のような音が館内に鳴り出した。瞬時に舞花は戦闘態勢に入る。
「何だこの警報は? 非常事態か?」
「どうやら渋谷エリアのボス悪魔が現れたようだわ。兄貴に先は越させない。奴は私が必ず殺す」
「渋谷エリアのボス悪魔? 待てよ――」
やけに殺気立つ舞花は渋谷のボス悪魔を殺すと言い、全速力で駆け出した。そうして、俺も渋谷エリアのボスが現れたらしい外へ向かった。
「かしこまり!」
ルーンメイズのリーダー本間から与えられた渋谷区役所内にある自室で映画を見ながら寝てしまった俺は、目を覚ますと茶髪の少女に銃口を向けられていた。瞬時にミミを使い、その銃口から放たれた弾丸を一瞬だけ止めてもらう。
「のぉ!」
蹴りを入れつつ弾丸を回避し起き上がると、狭い室内でのバトルとなった。向こうはかなり喧嘩慣れしてるのか、体術は素晴らしいものがある。
(何だこの女――侵入者か!? しかも強い! 格闘技の訓練でもしてるのか? 殺すしかない――)
すると、茶髪のセミロングの女は手を止めた。左腕には白い布が巻かれているのを見て、俺も殺すのをやめた。
「お前、誰か知らないがルーンメイズの人間か。俺は悪魔神罰の夜野星矢。悪魔東京を革命する人間だ。本間リーダーからこの部屋は与えられている」
「知ってるわよ。にしても、拳銃の弾を防ぐとはね。悪魔を飼っている噂は本当だったか」
「飼われてなーい! それと手がヒリヒリするー! この女殺しちゃえ! 下衆な内臓喰わせろ!」
と叫ぶミミがウルサイからデコピンで黙らせた。互いに緊張から少し解放され、俺はこの女をまじまじと見た。身長は160センチぐらいで髪は茶髪のセミロング。服装は警察官が着るようなシャツに紺のスカート姿だ。けど、顔は高校生ぐらいにしか見えない。しかも、腰に脇差のような刀をベルトにぶち込んでいる。よくわからないが、この女の実力は本物だ。
「お前の自己紹介を聞こう。それと俺を試した目的は?」
「死ななければ教えてあげる」
平然と女は俺を射殺しようと銃を撃った。そこにあえて突っ込んで銃口から身体を外させ、女をベッドの上に押し倒した。俺が女の喉元に突き付ける脇差は、少し首の肉に食い込んでいる。その血が――ベッドのマットレスに流れた。
「私の脇差を盗んだの?」
「殺す為にな」
と、その脇差をベッドに刺した。
そして、この女に忠告する。
「俺に関わるならそこそこの強さが必要だ。腕の一本もらう予定だったが、首が少し切れただけか」
「……やってくれるわね。女にも全く容赦しないなんて。ルーンメイズを敵に回したいの?」
「全て敵でいいんだよ。その方が楽しめる。食事、睡眠、性交時……どんな時でもスリルがあって楽しそうじゃないか?」
「悪魔より悪魔だわ。人間側とは思えない」
「人間さ。人間が想像した悪魔に、人間が悪意で負けるはずが無い」
「人間が想像した悪魔じゃ無くて、悪魔とは元々存在していたのよ? ゼロノス達は少し時間軸が違う世界を生きていた。ネット社会になって様々な電波が飛び交うようになり、たまに現世に出現する悪魔達が当たり前の存在になったの。これは悪魔達の示した事実よ」
「それは悪魔達の言い分だ。俺は俺の意見しか信じない」
「古臭い武士道ね。革命家とは思えないわ。人間に仇を成すなら私が殺してあげる」
「その考えを絶対に変えるなよ? ミミ。治してやれ」
「えぇ……後で人間の内臓を食べさせてよねぇ」
と言いつつミミは魔法で治療した。ミミには多少の傷なら回復出来る能力がある。ようやく、目の前のムカつく女は俺を認めたようだ。見た目はいいがハッキリ言って嫌いだ。ミミもかなり嫌がっている。毛嫌いしてる証拠か、紫の髪が逆立ってるのが面白い。それに気付く女も微笑む。
「私は美空舞花。ルーンメイズの幹部よ。舞花って呼んでいいわ」
どうやら、年齢は俺と同じようだ。高校一年で、すでに一体の悪魔を殺していて幹部に抜擢されたらしい。確かに、この女の体術や殺しに対する躊躇いの無さは凄いと思う。
「美空という事は、兄貴はリーダーの美空圭司か? それにその警察官の服は何だ? 着ていた服は悪魔にでもボロボロにされたのか?」
「兄は年は離れているけどルーンメイズのリーダーがそうだよ。この服を着る理由は、そもそも私は警察官志望だからね。着たいから着てるだけ。この世界じゃ警察なんてもう存在しないし」
「警察志望か。理由はあるのか?」
「私の父親は警察なのよ。だから、警察官が多いルーンメイズにもすんなり入れた。じゃあ、今度は私の質問ね」
「あぁ、答えよう」
「何故、そこまでこの環境に対応出来るの? 星矢は本当に人間なの?」
どうやら、少し重い質問のようだ。
本間リーダーからの意思もあるだろうが、この女は自分から命懸けでこの質問をして来た。今ならば、この世界ならもう話してもいいだろう。
「……なら俺の過去を少し教えよう」
すでにミミは寝こけているが、俺はベッドの上に座り過去の話をした。
かつて、俺は強盗犯に母と祖父母を殺されている。そして、その犯人を五歳児ながら包丁で撃退し、なます切りにしていた。
全ての手足と爪も剥ぎ取り、左目には包丁を突き刺して残る右目で犯人に罪と罰を与えていた。
そうする為に敢えて、生かしてもいた。
それは報道されていないが、犯人の怪我は家族とのもみ合いで重傷となっている。誰も、五歳児が刃物で撃退し、敢えて生かすなんて行為はしないだろう。
殺人専門家のような鮮やかな仕事である。
魔王と呼ばれた織田信長や、新選組の土方歳三さえも、この年齢でこんな拷問はするかはわからない。
その後も、学校での成績は良いがトラブルは続いていた。
他人と世界への憎悪が並外れていて、今まで影で数人の教師と同級生や上級生を病院送りにしている。その憎悪はいずれ世界に害をもたらすとして、俺を知る親戚などからは疎まれていた。
たった一人で世界を壊す力があれば……。
と、俺は本気で進化しているが世界崩壊を願っていた。進化しているが、硬直しかしていない世界は悪そのものだ。その思いがより強くなったのは、親戚の家を家出し「悪魔」を見たあの時からだった。
悪魔が人間にもたらすのは破滅だ。
この世の破滅こそ快楽だと俺は信じていた。
人類の終末期思考こそが、俺そのものなんだ。
「……という話だ。いわゆるサイコパスとかシリアルキラーとか、そんな感じの感覚がある人間だ。悪魔の存在も現実で見た事もあるしな」
「そう……その話は信用出来る。実際、こんな悪魔が出る世界で魔法まで使えるのは星矢だけ。本当に貴方なら世界を革命出来るかも」
すると、隣に座る舞花は優しく微笑んだ。
まさか、こんな柔らかな笑顔が出来るとは思わず怖くなった。この女は謎だとも思った。そして、舞花は言う。
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「……俺は女がいれば襲うタイプだから辞めとけ」
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それはお前もそうだろう? という言葉は飲み込んだ。すると、警戒警報のような音が館内に鳴り出した。瞬時に舞花は戦闘態勢に入る。
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