悪魔神罰-共感不要の革命者-

鬼京雅

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10話・外の悪魔と内の悪魔

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「悪魔程度に怯むな! ルーンメイズの連中はザコ悪魔を駆逐しろ! ハロウィンは俺がやる!」

 美空リーダーにそう伝え、センター街の奥に消える渋谷ボス・ハロウィンを追う。渋谷悪魔を束ねるハロウィンを倒す力があるのは魔法が使える悪魔神罰の俺だけだ。悪魔の策にかかって壊滅状態とは言え、ルーンメイズは悪魔達の相手をするしかない。
 生き残りたければ、各々が最善の動きと判断をしなければ死ぬだけだ――。

 隣にいるハロウィンに警察の父親を殺された女にも伝えないとならない。

「舞花。お前もリーダーと共に悪魔退治だ。俺は一人でいい。お前を守っては戦えない」

「確かにまだ魔法を使えない私じゃ足手まといだね。了解だよ。ヤバイ状況だけど、ここの悪魔達を倒してからハロウィンの額にも鉛玉叩き込んでやる。だから星矢もやられるんじゃないわよ」

「俺はやられない。この戦いに勝たないと明日は無いからな。ありったけの武器を使って悪魔を殺せ。銃火器と人間の恐ろしさを教えてやるんだ」

「当然。この美空舞花様は銃を使わせても最強なのよ!」

「なら、ここは任せたぞ!」

 俺と舞花はそこで別れた。すぐさまゲラゲラと笑う悪魔が大勢迫って来る。ルーンメイズ兵士の死体近くに落ちてた銃い、悪魔を狙撃しつつ閃光のように俺は悪魔の集団を突っ切る。

『うおおおーーーっ!』

 背後からは美空リーダーの掛け声で勢いを取り戻しているルーンメイズの声が聞こえ、その声に押されるようにセンター街方面に消えたハロウィンの元へ駆けた。





「――悪魔雷罰!」

 雷の一撃で複数のザコ悪魔を蹴散らす。センター街まで来ると周囲は悪魔だらけで全てが敵だった。いくら倒しても、ボスのハロウィン本体が隠れていては拉致があかない。

(ここで無駄な魔力は消費出来ない。ハロウィン本体を見つけないと――)

 慣れている炎の悪魔神罰を威力調整して使いつつ、悪魔の少ない路地に入る。地形は街が壊れて変わっているが、建物内部を通れば悪魔達を回避出来る事もわかっていた。全ての悪魔を倒す必要は無い。俺は渋谷のボス・ハロウィンを倒すのが目的だからだ。

(ルーンメイズが壊滅すれば、俺もこの悪魔東京での寝ぐらを失う。同時に、現実世界との連絡も途絶えて武器や食料も手に入らないようになる。けど、今後は悪魔を奴隷として使うのもいいかと思うな。奴等に人間を受け入れる奴がいればの話だが……)

「何を考えてるの? 残念ながら悪魔は人間を利用しても従わない。不用意に従わせれば、悪魔は消滅する生き物だから」

 と、左目の魔レンズから生まれた悪魔妖精のミミは紫色の長い髪を揺らしながら言う。

「ミミ、俺の心を読むなよ」

「魔レンズを使いながら強い意志を持つからだよ。ハロウィンに集中しなさいな。別に舞花が死んでもいいじゃん。その方が星矢も興奮するんじゃない? 死体の舞花とセックスでもすれば? アハハッ!」

「黙れよミミ。舞花が死ぬか生きるかは舞花の運次第だ。俺は死んだ奴に興味は無い」

 ミミの言う通り、舞花はこの戦いで死ぬ可能性は高い。まだ魔法も使えないし、体術が強い女でしかないからだ。戦場に自分から向かう以上、悪魔に犯されて殺されるのも仕方ない事。それに、ハロウィンへの復讐心があるならこの戦いで今の自分の殻を破るしかない。悪魔東京で――。

「――生きたいならな!」

 悪魔風罰による風切断により三体の半魚人悪魔を倒して、ビルの路地にまた隠れた。そこでやけに反応している魔レンズに意識を集中させた。

「……この強い魔力反応。ミミ、気付いていて黙ってたな。ハロウィンの奴は……あのゲーセンの中か!」

「そうだよぉ。ハロウィンちゃんはあのゲーセンの中。でもぉ……」

 アハハッ! と笑うミミはセーラー服をスカートをヒラヒラさせながら笑いまくる。目の前には確実な死が待ち受ける光景だからだ。

「入口は悪魔達がごった返しているよ。流石に無理じゃない。死体にならないと?」

「そうだな。確かに入口は厳しい。おそらくあれはハロウィンの親衛隊だろう。今の俺が戦えば、奴等を倒せても深手を負って魔力も尽きる」

「それはそれでいいんだよ。入口が嫌なら裏口? おそらく、あそこの倉庫には鍵がかかってる。それを壊したら中のセキュリティが反応するっぽいね。見た所、電子ロックのようだから」

「流石は魔レンズから生まれた妖精だ。電子ロックだとよくわかったな。でもミミ。人間を見くびるなよ?」

 そして、俺は鍵のかかった倉庫しか無いゲーセンの裏口に回った。







「よぉ、ハロウィン。ボスはこんなゲーセンで高みの見物か? ゲームの悪役の悪魔がゲーセンでゲームとは面白いもんだな」

『!?』

 言いつつ、両手に持つ銃を乱射して悪魔達を殺した。そのマッドピエロのような顔と衣装の渋谷ボス・ハロウィンは仲間の悪魔を盾にして弾丸を防いでいる。弾が切れた銃を投げ捨てると、ケケッ……とコンソメポテチを食べていたハロウィンが笑っていた。

「イヤーン。まさか裏から現れるとは。チミはこのゲーセンにどうやって忍び込んだんだい?」

「このゲーセンの入口は実は裏の倉庫からも入れるんだよ。マスターに認められた人間なら深夜と早朝にも遊べるように倉庫の解除キーを知らされてる。倉庫内部でも荷物だらけで扉が隠れてるから、ここに入口があるとはわからないだろうがな。渋谷のボスかも知れないが、元の渋谷を知る人間には勝てないぜ?」

 仲間を殺され、ゲームの記録を潰され、背後からの奇襲をされた事にイラつくハロウィンは地団駄を踏んだ。フラフラとセーラー服姿のミミはゲームに興味を示し飛んでいく。ハロウィンの怒りは頂点を超えていた。

「キィー! せっかく高得点でステージ記録がかかってたのにねぇ……イライラするよねぇ。ここまで馬鹿にされたら。ねぇ!」

「そんな記録なんて忘れろ。実力があるなら次に更新すればいい。お前はここで死ぬからそれも無いけどな」

「ならこのコンソメポテチのように食われるがいい。チミの脳みそは何味かしら?」

「コンソメポテチは人間の脳ミソより美味いのか?」

「そうねぇ……そうかもねぇ! この指についたコンソメをねっとり舐めるのが最高なんだよね!」

「成る程。そんなにコンソメ好きなら舞花とも気が合うかもな。俺はのり塩派だがな」

「――なら焼けチネ!」

 両手の指の先から火炎放射器のように炎を放った。それに直撃する俺を見てハロウィンは笑っている。だが、その炎を両手で上手く捕まえつつ操って、ダメージをほぼゼロにしていた。

「炎への耐性はある。炎の悪魔神罰は得意だからな……でも他人の炎は熱っ!」

 手をブラブラしてハロウィンの炎を消した。マッドピエロのような出で立ちのハロウィンはあんぐりと大きな口を開けていた。子供達が見たら爆笑してる顔だ。

「チッ、指の皮が剥けたな。猫舌なのに炎の耐性があるのも自分でもよくわからんぜ。ん? どうしたパハロウィン? 外の親衛隊に頼れよ。俺の炎がこの空間を焼き尽くすぞ?」

 そうして悪魔炎罰を放とうとする。すると、さっきの地団駄によって外の連中に内部の危機を知らせていたらしく、仲間の悪魔達がゲーセン内部に乗り込んで来る。ハロウィンはニタァ……と薄気味悪い笑みを浮かべた。

「そう、チミの能力はお見通しなのね! 火炎悪魔よカモーン!」

 火炎系のマッチョ悪魔がハロウィンの前に盾として塞がる。このままなら俺の炎が吸収されるだけだ。けど、もう俺の攻撃魔法は止まらない。

「――悪魔炎罰!」

 スパスパスパッ! と火炎マッチョ悪魔達は八つ裂きにされる。ズガガ……とその風は天井も切り裂く。アレ? という顔のハロウィンは今度は口を梅干しのようにすぼめていた。ギャー! と叫びつつ今の俺の言葉の意味に気付いたようだ。

「まさか炎罰と言いつつ、風罰を放っていた? テメェ! 嘘こきやがったな!?」

「騙される方が悪い」

「ならボクチンの親衛隊に殺されるがいいわ! カモーン! ショータイム!!!」

 かなり強力な悪魔達が現れた。まるで渋谷の不良らしい悪魔を集めた集団だ。この三十近い数の悪魔達を相手するのは不可能。だからこその悪魔風罰でもあった。ゲーセンに軽い地響きのようなものがあり、俺の肩に小石が当たる。

「ハロウィンショータイム! んじゃ、外で会おうぜハロウィン。ここは狭くて仕方ねぇ」

「は? チミ、ちょっと待ちなさいよ! あら痛い。誰か石を投げた?」

『……』

「投げてない。また当たった……天井から? アレェ!?」


 悪魔風罰による天井破壊により、ハロウィンの親衛隊はゲーセンの天井崩壊に巻き込まれた。





 ゲーセン崩壊前に外に出ていた俺は砂煙を浴びつつ、ハロウィンの出現を待っていた。あのハロウィンがこんな事では死ぬわけが無い。奴は仲間を犠牲にしても自分が生き残るタイプだからな。そうして、ミミが砂煙で咳き込んでいると、視界の悪い中から道化師のようなシルエットが浮かび上がる。そのマッドピエロに言った。

「これでルーンメイズの復讐は果たしてやった。さぁハロウィン。俺とお前の一騎打ちを始めよう。渋谷エリアなどどうでもいい、ただの殺し合いだ」

「チミは人間の癖に節操の無い悪魔のようだな。ボクは渋谷エリアのボス。だから渋谷のボスとしてチミを殺すよ! この煙がチミにとっての地獄になるのをわかってなかったねぇ……」

「俺の魔レンズは悪魔の反応を教えてくれる。闇であろうが、煙で誤魔化そうが無駄だ」

「バカねぇ! この煙はあくまでボクチンの仕掛けの為の煙。このハロウィンの蜘蛛の巣に引っかかった以上、逃げれないのよチミわぁ!」

「ん? 何だこの糸は? 千切れない!?」

 右腕に絡み付いた蜘蛛の糸が何故か千切れない。おそらくハロウィンが使った技なんだろうが、煙でまだハッキリとはハロウィンの姿は見えない。けど、確実に人間のような格好のハロウィンの姿とは違い、丸いフォルムのようなシルエットに見えた。

(魔レンズの使い過ぎか? この煙の先にいるハロウィンがハッキリ見えない。早めに終わらせないとコッチがやられる……)

「そうだねぇ。残念だけど負けたらこの身体はミミのモノだから。魔レンズは便利だけど、これはあくまでゼロノスの一部であり悪魔のモノ。人間がいつまでも使うにはリスクがあるんだよ? アハハッ!」

 どうやら悪魔妖精のミミがこの件について詳しいようだ。この魔レンズそのものであるミミは語る。

「魔レンズを使うという事は、魔レンズに侵食されるという事。つまり、この魔レンズの使用は使用者の肉体を蝕む正に悪魔のレンズなのよ。この魔レンズが最後に写す姿は、自分が魔レンズに殺される姿……ねぇ、楽しみでしょう?」

 ククク……と楽しそうに微笑んでいるミミが、いつか俺の身体を奪うようだ。その理由とは単純だった。

「だって人間と悪魔は殺し合わなきゃならないでしょ?」

「……そうだな。殺し合う奴は前にもいるし、中にもいたのか。魔レンズを使えば使うほどに、ミミが俺の身体を侵食するのか。それに目の前の奴は化け物になってやがる」

 すると、煙が晴れた先には蜘蛛の化け物になるハロウィンの野郎がいた。どうやらアレがマッドピエロのハロウィンの本体のようだ。奇声を上げつつ、冷静に俺という標的を捉えていた。

 俺は蜘蛛は嫌いだから気分が悪いぜ。すでに右腕に蜘蛛の糸が絡みついている最悪の状況だが、これこそが俺が望んだ悪魔東京での戦いだと思った。

「こりゃ、楽しくなって来たぜ。最高だな悪魔東京……」

 これにより、外の悪魔と内なる悪魔と戦う事になった。最悪の戦いは幕を開ける――。
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