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5話・東から吹く風と転校生
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誠高校の二学期初日。
その校門では恒例の風紀委員会による身だしなみチェックが行われていた。同じマンションに住む、一年の風祭朱音に俺は私生活までチェックされている。そして――風祭と金髪の転校生、西村唯は違いを睨み合っていた。
「彼女は今日から転校して来た西村唯だ。唯とは中学時代の同級生。風紀委員会として金髪やイヤリングは見逃せないだろうが、唯も今日が初日だ。その辺も考慮してくれ」
「フン! 赤井の友人か。この誠高校では金髪など言語道断だ。これから私がみっちり気合いを入れ直してやる!」
「……」
ここで言い返すのが唯のキャラであるが、何故か唯は黙ったままだ。まるで風祭を見透かすように見据えていた。
(風紀委員として、今は転校生の唯を見逃してくれるといいんだが。つか、何で俺は唯のフォローしてるんだ? ここでも俺はグレイの立場だな……)
わざわざグレイの立場で唯をフォローしている自分が嫌になった。
すると、唯はアクセサリーを外して風祭の横をすり抜ける。すかさず、風祭は唯の前に立った。
『……』
東から吹く風が嫌な風に感じる。
ここで唯がキレるのはいつものパターンだ。すぐに唯は風祭に向けて動いた。
(ヤル気だな。距離的に風祭を止めた方が早いな――)
唯より風祭の方が近いから、唯から攻撃を受けないよう風祭の腕を掴んだ。
振り上げられた唯の手に、風祭も驚いている。そして風祭の竹刀を持つ手が強張り――。
『……』
俺と風祭は目の前の金髪頭を見て止まっていた。
「地毛ですけど? 頭皮まで見ますか?」
差し出されたような頭から目をそらす風祭は、竹刀を持つ手を緩めた。
「……転校生なら仕方ない。赤井、とりあえず案内してやれ」
「あぁ。行くぞ唯。この高校は規則にウルサイ高校だ。今はしょうがないが、今後はこの風紀委員会がいるから注意しろよ」
「はーい。わかりました風紀委員会さん! 西村唯は誠高校の一員になれるよう努力します!」
とりあえず、風祭と唯のバトルは終わった。すると、何故か俺を風祭は赤い顔で見つめていた。
「おい、赤井……」
「何だ? 風祭?」
「いつまで私の肌に触れている?」
さっきから風祭の腕を掴んだままだった。らしくも無く、風祭は顔が赤くなっていた。男嫌いな所があるから仕方ないか。
(にしても、よくもまぁ平然と頭を見せて地毛と言えるな。お前は生粋の日本人だろ)
この唯のふてぶてしさに感心すらしてしまう。そうして、俺は唯を職員室に連れて行く事になる。
「ねぇ、あの男女。総司の何なの?」
「風祭は同じマンションの人間だ。風紀委員会だから少し細かいが、悪い奴ではない」
「ふーん。わかりやすい男女」
「? どうした?」
「早く案内してよね。まだあの男女が睨んでるから。覚悟も無いくせに」
どうやら、唯が振り返るとまだ風祭は俺達を見ていたようだ。俺は人が増えて来た校門で立ち止まるのも嫌だから進んで行く。気付かなかったが、風祭に振り返る唯の唇はこう動いていたようだ。
「つまらない女」
※
職員室で、担任から唯のクラスを知らされ俺は絶望した。
「お前! 俺と同じクラスなの!?」
「何その嫌そうな顔。私は転校生なんだら校舎とか案内してよね。私、カワイイから怖い人に目をつけられたら嫌だし」
「お前程度いくらでもいる。それに校舎なんて自分で回れ。どうせお前はまた手下のような連中作るんだろうが、そういうのはこの高校だと風紀委員会がウルサイからな」
「ふーん。でも、そんなつまらない連中には関わらないし、私も手下とかいらないから。部下ならいるけど」
「それが手下じゃねーのか?」
どうしても唯といるとペースが狂う。このまま一緒だと俺がグレイでない事もバレてしまうな。とりあえず昼休みは逃げよう……?
「おはよう赤井君」
「おはよう東堂さん」
職員室の通路で今日はポニーテールの東堂さんと出会った。黒髪清楚な東堂さんとは対照的な金髪の唯もクラスメイトになるので、東堂さんを紹介した。昔のように偉ぶる事も無く、唯は東堂さんに自己紹介をする。
「唯。東堂さんに余計な事するなよ」
「変な事したいのは総司でしょ? 総司はかなりスケベだから気をつけなよ東堂さん」
すると、東堂さんの青い瞳が輝き微笑んだ。
一応、俺からも東堂さんを紹介する事にした。
「この子は俺と同じクラスの東堂さんだ。青い瞳で洞察力が高いから、青眼の東堂と呼ばれている」
「いきなりそこ説明しちゃうんだ赤井君。昔の知り合いだとやっぱり対応が違うね」
「うーん……そうか?」
知り合いじゃなくて、元カノですとは言えない。特に唯もそれを言う感じはしなかった。そうして、一時間目も始まるので東堂さんは教室に向かう。そのキリッとした背後を唯は眺めていた。
「……東堂真白。彼女、気付いてたのに最後まで言わなかったね」
「何をだ?」
「総司が私を唯って呼んでいる事を」
そうして、唯は担任と教室に行く事になり、俺はマズイな……と思いつつ教室に向かう。
※
誠高校一年一組には西村唯が転校して来た。誠高校には存在しない金髪で派手な女が現れた事で、ノリのいい男はすでにアピールしていた。唯の本性を知らずに。
その唯は普通にクラスメイトと仲良くなっていた。やはり、コイツのコミュニケーション能力は凄まじい。荒波を立てるかと思いきや、特に何も無くクラスの男女と仲良くなっている。
(昔のように俺は唯を唯と呼んでいた……か。確かに、これだと誠高校ではグレイであり、他人との距離感を大事にしている俺のキャラには合わない。下の名前で呼ぶ奴なんて、同じグレイの勇だけだしな。東堂さんに聞かれたのは痛いかも)
もう、校門で風祭に中学時代の知り合いというのも知られていて、担任にもバレてるから変に呼び方を変えると怪しまれる。だから唯に関しては、唯と呼ぶ事にした。
子供の頃から知ってるからという理由は本当だから大丈夫だろう。
ようやく昼休みになり、俺は外へ行く事にした。隣のクラスの勇が女の子の相手でいないから、恋愛掃除相談が無ければ昼は一人でスマホを見ながらブラブラしてる事が多い。たまに掃除もしてる。特に唯が来た以上教室にはいたくないから、外だけが落ち着ける空間だ。
コンビニで買っていた惣菜パンとカルピスソーダを持って、校庭の横にある資材倉庫裏に来ていた。ここは丁度座れるスペースも有り、見晴らしも良くて隠れスポットでもある。
「相変わらず、ここは東から吹く風が気持ちいい場所だ……」
ふと、コロッケパンを食べながらそう呟いた。そのフレーズの東という言葉で、反対の西である西村唯を思い出す。当然、東は――。
「東が何だ? 東堂さんは大食いの早食いでも太らないのが羨ましいとも思う。風紀委員としてではなくな」
「風祭……」
さっきの呟きを少し聞かれていたらしく、俺は少し不機嫌になった。それに、この場所に来られた事も、東堂さんと言う答えを出す前に言われた事も不快だった。
けど、これは風祭の偶然の台詞だ。
そして、俺はカルピスソーダを一口飲んでから、グレイとしてそんな感情は一切見せずに微笑んだ。
その校門では恒例の風紀委員会による身だしなみチェックが行われていた。同じマンションに住む、一年の風祭朱音に俺は私生活までチェックされている。そして――風祭と金髪の転校生、西村唯は違いを睨み合っていた。
「彼女は今日から転校して来た西村唯だ。唯とは中学時代の同級生。風紀委員会として金髪やイヤリングは見逃せないだろうが、唯も今日が初日だ。その辺も考慮してくれ」
「フン! 赤井の友人か。この誠高校では金髪など言語道断だ。これから私がみっちり気合いを入れ直してやる!」
「……」
ここで言い返すのが唯のキャラであるが、何故か唯は黙ったままだ。まるで風祭を見透かすように見据えていた。
(風紀委員として、今は転校生の唯を見逃してくれるといいんだが。つか、何で俺は唯のフォローしてるんだ? ここでも俺はグレイの立場だな……)
わざわざグレイの立場で唯をフォローしている自分が嫌になった。
すると、唯はアクセサリーを外して風祭の横をすり抜ける。すかさず、風祭は唯の前に立った。
『……』
東から吹く風が嫌な風に感じる。
ここで唯がキレるのはいつものパターンだ。すぐに唯は風祭に向けて動いた。
(ヤル気だな。距離的に風祭を止めた方が早いな――)
唯より風祭の方が近いから、唯から攻撃を受けないよう風祭の腕を掴んだ。
振り上げられた唯の手に、風祭も驚いている。そして風祭の竹刀を持つ手が強張り――。
『……』
俺と風祭は目の前の金髪頭を見て止まっていた。
「地毛ですけど? 頭皮まで見ますか?」
差し出されたような頭から目をそらす風祭は、竹刀を持つ手を緩めた。
「……転校生なら仕方ない。赤井、とりあえず案内してやれ」
「あぁ。行くぞ唯。この高校は規則にウルサイ高校だ。今はしょうがないが、今後はこの風紀委員会がいるから注意しろよ」
「はーい。わかりました風紀委員会さん! 西村唯は誠高校の一員になれるよう努力します!」
とりあえず、風祭と唯のバトルは終わった。すると、何故か俺を風祭は赤い顔で見つめていた。
「おい、赤井……」
「何だ? 風祭?」
「いつまで私の肌に触れている?」
さっきから風祭の腕を掴んだままだった。らしくも無く、風祭は顔が赤くなっていた。男嫌いな所があるから仕方ないか。
(にしても、よくもまぁ平然と頭を見せて地毛と言えるな。お前は生粋の日本人だろ)
この唯のふてぶてしさに感心すらしてしまう。そうして、俺は唯を職員室に連れて行く事になる。
「ねぇ、あの男女。総司の何なの?」
「風祭は同じマンションの人間だ。風紀委員会だから少し細かいが、悪い奴ではない」
「ふーん。わかりやすい男女」
「? どうした?」
「早く案内してよね。まだあの男女が睨んでるから。覚悟も無いくせに」
どうやら、唯が振り返るとまだ風祭は俺達を見ていたようだ。俺は人が増えて来た校門で立ち止まるのも嫌だから進んで行く。気付かなかったが、風祭に振り返る唯の唇はこう動いていたようだ。
「つまらない女」
※
職員室で、担任から唯のクラスを知らされ俺は絶望した。
「お前! 俺と同じクラスなの!?」
「何その嫌そうな顔。私は転校生なんだら校舎とか案内してよね。私、カワイイから怖い人に目をつけられたら嫌だし」
「お前程度いくらでもいる。それに校舎なんて自分で回れ。どうせお前はまた手下のような連中作るんだろうが、そういうのはこの高校だと風紀委員会がウルサイからな」
「ふーん。でも、そんなつまらない連中には関わらないし、私も手下とかいらないから。部下ならいるけど」
「それが手下じゃねーのか?」
どうしても唯といるとペースが狂う。このまま一緒だと俺がグレイでない事もバレてしまうな。とりあえず昼休みは逃げよう……?
「おはよう赤井君」
「おはよう東堂さん」
職員室の通路で今日はポニーテールの東堂さんと出会った。黒髪清楚な東堂さんとは対照的な金髪の唯もクラスメイトになるので、東堂さんを紹介した。昔のように偉ぶる事も無く、唯は東堂さんに自己紹介をする。
「唯。東堂さんに余計な事するなよ」
「変な事したいのは総司でしょ? 総司はかなりスケベだから気をつけなよ東堂さん」
すると、東堂さんの青い瞳が輝き微笑んだ。
一応、俺からも東堂さんを紹介する事にした。
「この子は俺と同じクラスの東堂さんだ。青い瞳で洞察力が高いから、青眼の東堂と呼ばれている」
「いきなりそこ説明しちゃうんだ赤井君。昔の知り合いだとやっぱり対応が違うね」
「うーん……そうか?」
知り合いじゃなくて、元カノですとは言えない。特に唯もそれを言う感じはしなかった。そうして、一時間目も始まるので東堂さんは教室に向かう。そのキリッとした背後を唯は眺めていた。
「……東堂真白。彼女、気付いてたのに最後まで言わなかったね」
「何をだ?」
「総司が私を唯って呼んでいる事を」
そうして、唯は担任と教室に行く事になり、俺はマズイな……と思いつつ教室に向かう。
※
誠高校一年一組には西村唯が転校して来た。誠高校には存在しない金髪で派手な女が現れた事で、ノリのいい男はすでにアピールしていた。唯の本性を知らずに。
その唯は普通にクラスメイトと仲良くなっていた。やはり、コイツのコミュニケーション能力は凄まじい。荒波を立てるかと思いきや、特に何も無くクラスの男女と仲良くなっている。
(昔のように俺は唯を唯と呼んでいた……か。確かに、これだと誠高校ではグレイであり、他人との距離感を大事にしている俺のキャラには合わない。下の名前で呼ぶ奴なんて、同じグレイの勇だけだしな。東堂さんに聞かれたのは痛いかも)
もう、校門で風祭に中学時代の知り合いというのも知られていて、担任にもバレてるから変に呼び方を変えると怪しまれる。だから唯に関しては、唯と呼ぶ事にした。
子供の頃から知ってるからという理由は本当だから大丈夫だろう。
ようやく昼休みになり、俺は外へ行く事にした。隣のクラスの勇が女の子の相手でいないから、恋愛掃除相談が無ければ昼は一人でスマホを見ながらブラブラしてる事が多い。たまに掃除もしてる。特に唯が来た以上教室にはいたくないから、外だけが落ち着ける空間だ。
コンビニで買っていた惣菜パンとカルピスソーダを持って、校庭の横にある資材倉庫裏に来ていた。ここは丁度座れるスペースも有り、見晴らしも良くて隠れスポットでもある。
「相変わらず、ここは東から吹く風が気持ちいい場所だ……」
ふと、コロッケパンを食べながらそう呟いた。そのフレーズの東という言葉で、反対の西である西村唯を思い出す。当然、東は――。
「東が何だ? 東堂さんは大食いの早食いでも太らないのが羨ましいとも思う。風紀委員としてではなくな」
「風祭……」
さっきの呟きを少し聞かれていたらしく、俺は少し不機嫌になった。それに、この場所に来られた事も、東堂さんと言う答えを出す前に言われた事も不快だった。
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