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人の巻 鄙のこと
仏僧と呪言師、術師を追うこと
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狩り人の長は、思わず目を逸らした。不快感が胃から喉元まで登ってくるのを何とか堪える。座込んだ場所にまで血の臭いが漂ってきているような錯覚に襲われた。
「長、無理に見なくてもよいぞ」
金太郎の言葉は相変わらず感情が乏しい。心根の優しい男ではあるが、淡々としているのである。狩り人の長はようやく落ち着き三人の後を追う。
近づけば肉塊の姿がはっきりとわかった。
男であった。
頭は禿げていたが顔の皮が剥され、首を引き千切られている。首から下は四つん這いで、臓物を尻の穴から引き抜かれていた。
腸があたりに散らばり、いやな臭いを漂わせて、首には糞尿まみれの魔羅を口に突っ込まれた姿であった。男の魔羅が引き千切られている所を見ると、口に咥えさせられた物は本人の者なのであろう。
時間は経っていないのか、血はまだ乾ききっていない。すでに蠅が集り始めている。
環が鼻も抑えず、肉塊に近づいた。着物も引き裂かれ、背中の皮も剥がされている。
「狩り人の方。この男に見覚えは?」
狩り人の長は首を振った。流れ者であろう。このような体躯の男は里にはいない。
「里の者ではなさそうですな」
目も当てられない肉塊に被せられた、ボロボロになった着物を、荒太郎が汚らしいものだという様子で摘まむ。
「随分目立つな」
狩り人の長が襤褸切れになった着物を広げる。
「こりゃ流れ者の芸売り達が揃えていた羽織ですよ。よく覚えている」
「芸売り?」
斑目の声色が変わる。狩り人の長が頷いた。
「場所柄、芸人や八卦読みやら色々な者が通りますからな。わしらは、普段は山の中にいますが、三日に一度は里に戻ります。
余所者はどうしても悪さをするとき山中で何かするものでしてね。それとなく探りはいれとるんですよ」
斑目たちを置いて荒太郎と、金太郎が少し先に進んだ。獣道が見えていて、少し開けているのが見えた。
「何かあるのか?坂田殿」
「樵の人、あんなところを獣道が付くとおもわれるか?あれは新しくついたんだろうさ」
金太郎の指摘した通り、何度も踏まれてできた道ではなく、何かを引き引き摺ったのか、草木は折れて倒れていた。
金太郎は倒れた草や枯れ枝を払い、のり面を昇る。緩やかだが確かに獣道にするには不便であった。
上った先にはやはり道はない。金太郎は顔を空へ向けている。後ろからついて上がった荒太郎は、金太郎の目線の先を見た。
巨大な鳥の死骸と勘違いした。しかしそれはまだ真新しい死体であった。
背中の皮と肉が開かれ、肋骨まで開かれた姿は羽を広げた鳥であった。全裸で尻の穴からはこれもまた臓物が引き抜かれ、ブラブラと揺れている。着物は無く皮膚が残る男の顔には傷が見て取れた。
死骸は杉に釣られ背中の肉を両方に広げられている。
「むぅ…」
荒太郎が唸った。人の力とは到底思えない。
「やはり鬼…」
荒太郎が呟く。金太郎は男の死体に手を合わせた。
「惨い事を」
斑目についてきた狩り人達が追い付く。肉塊になった男の姿に凍り付いた。
騒めく狩り人達を置き、金太郎と荒太郎は炭小屋へと戻った。斑目が禿げた男の死骸を調べていた。
「長殿、芸売りは他に仲間が?」
「はい。幾人かおりました。出入りが多かったですが、この男と他に二人ほど、顔を覚えるほどに居ついておりました」
斑目が立ち上がる。
荒太郎が戻り、環と斑目を見た。
「もう一人いた。死んでおる」
「はやり鬼…かの御仁か」
「わからぬ。しかし御仁にしてはやり様がむごすぎるように思うが」
斑目が、切り裂かれた着物の一部を小刀で切り裂いた。
「この死骸の連れ合いとやらもう一人いたそうだ。長殿もう一人を見たことは?」
狩り人の長は少し考え込み、思い出そうとしていた。流れ者、特に芸事を推し売っている輩は入れ替わりが激しい。
しかし狩り人の長は思い当たった。
「あれじゃ。思い出した。行者の風体じゃったが、陰陽師と言っておったの。あやつの連れ合いぞ」
斑目が切り裂いた着物に真っ黒な灰をまぶした。
「その行者とやらもおそらく生きてはおりますまい」
斑目が簡易な祭壇を作る。奇妙な祭壇で、仏法のように見えるが、どこか違和感がある。
環がその祭壇を見つめる。
「大威徳大明ですか…」
斑目は絹の切れ端を祭壇に入れようとした。
狩り人の長が、何気なく皆に告げる。
「いや…行者様、それに荒太郎殿。その陰陽師。今朝、里におりましたぞ」
荒太郎が唸った。
「陰陽師は生きておるのか」
「間違いありませぬ。あの者、この里で三カ月は居座っております」
狩り人の長は、斑目の連れてきた狩り人達に同意を伝えた。久太もまたその陰陽師の事を良く見て知っていた。
「あれでしょう?よく瓜を育てる術などしておった行者。違いましたか?」
斑目は祭壇をたたみ始めた。少し顔色が悪い。
「もしや、相手は鬼か妖の類とかも…」
斑目は慎重であった。
「しかし、恐れておっては何もはじまりませぬぞ。斑目殿」
荒太郎の声は強い。
「しかし、悪戯に相手に気取られれば…」
逡巡、迷い、恐怖。
斑目の顔にはそれがはっきりと見て取れた。
鬼の恐ろしさを良く知っているからこそなのであろうか。それとも別の何かがこの行者の恐怖を抱かせているかがわからない。
金太郎は流れ者の死骸を供養せねばならないと思案しながら、荒太郎たちの様子をみていた。
ふいに金太郎が、声を出す。
「わしが手伝ってやろう。樵の人構わぬか?」
場違いといえば場違い、しかしそれを思わせないほど自然に金太郎は言った。
三人は金太郎に振り向いた。
「なんじゃ?わしでは役不足か?樵の人」
荒太郎は知っている。
あの大熊を素手で打倒したのは、この武士の子だった。
環が荒太郎に目線を走らせた。
荒太郎はうなずく。腕には間違いなく信用があったが、仕事に引き入れるとなると、三人の事を黙っていくわけにもいかなかった。
環の視線は判断を迫っている。
三人の仕事は複雑な経緯があった。荒太郎にはそれを差し引いても味方に引き入れてよいとさえ考え始めていた。それは環にも斑目にも伝えていないもう一つの仕事である。
「わかった。坂田殿、こちらからも改めて、この一件について合力を願う」
環と斑目の顔は驚いていた。見知らぬ土地のよくわからぬ侍の子と名乗っている者を引き入れるとは、考えなかった。
「荒太郎殿、何を…」
荒太郎が、金太郎の座る切り株の前で、勢いをつけて座った。
「それがし。相模国は碓井の生まれ、平良文が子、平貞光と申す。今は都の守りを任された摂津源氏の棟梁、源頼光に付き従っておる者でござる。
坂田殿この度の一件どうか合力くだされ。どうやらこの三人と、里の狩り人だけでは荷が重い」
荒太郎はゆっくりと頭を下げた。
金太郎は居住まいを正す。
「承った。平殿」
荒太郎が顔を上げる。
「荒太郎でよい。それに平氏だと人が多いでな。今は碓井と名乗っておるのだ」
顔を上げた荒太郎はニンマリと人懐っこい笑顔を作った。
こちらのほうがこの男の本性なのであろう。
環がやれやれと言った様子で、荒太郎の隣に座す。斑目がそれに続いた。
「拙僧、高野山の環浄と申します」
「わしは、園城寺の斑俊と申す。今は故合って斑目と名乗っております」
園城寺、またの名を三井寺いう。
天智、弘文帝に所縁が深く。天台宗とも皇室とも曰く因縁が多いのは、また別の話であろう。
三井寺は、後に聖護院を開く増誉を生む。後の世に修験の総本と言われることとなる聖護院は、三井寺の系譜に連なっている。
金太郎は仏法界には詳しくない。都のことにもまったく興味が無い。しかし礼を持って名乗られ、頼られたのであれば、他人事として無視することもしない。そんな男であった。
斑目が真面目腐って青ざめた顔で告げる。
「坂田殿、この度の一件すぐに全てをお話は出来ませぬが、相手は…」
「鬼ですね。このような真似人に出来るはずもない。あの肉と皮の様子見られましたか?」
斑目が頷く。
刃物ではない。爪で引き裂いたとも思えない。背の皮と肉を引き千切るように剥いているのである。骨も強い力で抜いたとしか思えない。刃物の形跡が一つもない。それを金太郎は見て取っていた。
「熊よりは骨が折れそうですな」
金太郎の言葉に、荒太郎は思わず声を出して笑った。
◇
行者の格好から水干姿になり、男はゆるゆると酒を口に運んでいる。どこか青白い顔をしているのは、男の心情が顔色に浮かんでいるからであろう。
男は焦っていた。
竹筒から何やら膿のようなものを里長の牛小屋に巻いていた小僧を捕まえ、雇った荒くれものに任せたのが三日前。
色々と大人の方法で聞きだしたまではよかったが、肝心の都から来たという陰陽師の姿を見失っていた。
見失った時から、少々勝手が変わってきている。自分の術が見透かされているのを今ははっきりと認識していた。
何処かから式でも飛ばされているかと思い、気が気では無くなっている。
炭小屋で若い里者を可愛がったのが三日前、若い男が自分たちを追ってきたと考えていたが、里長の雇った陰陽師の下働きであった。
男についてきていた流れ者たちは、相模国から来た芸事一座の用心棒である。
女であろうと童であろうと関係なく手を出し性のはけ口にしているような輩であり、方々で人を弄り殺して、逃げているような男たちであった。
あの里の若い衆もおそらく生きてはいないだろう。密会をしていた女すら呼び出させて慰み者にしていたのだが、いい加減に飽きた陰陽師の男は、早々と炭小屋から里に下りていた。
一人里に戻ったのには理由があった。
男は自分の術に自信があった。そして深く術の世界を知ることで、力を試したくもなった。
邪な考えが男の心に生まれた。とある場所で聞いた邪法を試したくなり、それを横走で行っていたのだが、どうやらその術を勘ぐられた。
炭小屋で用心棒の乱暴を見ている時も視線を感じ、休まることが無かったのである。
人に紛れたが、視線は明らかに男に近づいてきていた。里の外に逃れようかと思ったが、人の中に紛れている方が安全だと経験的に知っている。
術も止め身動きも取れない男は、流れ者の集まる里の広場で、無為に時を費やしている。いい加減、芸人一座と共に里を出る算段を考えていた。目立たぬ様にそして誰が自分を探しているかを用心深く観察している。しかしその影も見つけられぬままでいた。
夜の闇が濃くなっている。
芸人も荒くれものも薬売り達も、各々寝床に引っ込んでいる。草木が揺れる音だけが、中央の広場に響いていた。陰陽師の男は昼も夜もなく神経を尖らせ、あまり眠ることも出来なくなっている。
草の音。
人の気配ではない何か。その道で長らく生きてきた男にははっきりとわかる。
しかし陰陽師の前に現れたのは、少し年増の女であった。
影が無い。女には影が無かったが、男も闇に生きた来ただけはある。
「もうし…」
甲高く、作ったような声色を女が発する。
暗闇の中、薄気味悪く響きわたり、陰陽師の背筋を浅く掻かれたようなむず痒さを覚える。
「申し…其方様」
女の声を最初無視していたが、今度ははっきりと陰陽師を呼んでいる。
恐る恐る振り返ると、闇の中に若いころは、その昔は美しかったのであろう熟れた女が足っていた。
陰陽師は黙っている。声の主が人ではないことに気付いていた。
「はて…」
女が動く。闇から顔がうっすらと月明かりに照らされる。
泥眼であった。
女の表情は面を付けたかのように動きがない。わずかに開いた口元は歯が見えている。
「返事をいたしませぬか?こちらに陰陽の術を使う方がおられると聞き、主人の言付けで参りましたのに…」
人の言葉を使っているが、どこか違和感があった。そもそも口が動いていないのに声が出ている。
陰陽師はその女から目を離さない。目の前にある酒の入った土器に印を結んだ。
女の顔が険しくなる。
「おのれ…人の分際で」
一瞬角が見えたような気がしたが、すぐに女の顔は変わった。
「姿を見せませぬか尋太様…」
名を呼ばれた。
陰陽師の心臓が大きく波打つ。
名を知っている。しかも隠し名や通り名ではなく本名を知っている。
陰陽師、尋太は顔色を悪くした。
「心を動かされましたなぁ」
術が乱れる。尋太は目を閉じた。口の中で術を唱える。
「我は霞なり、雲なり、霧なり…」
尋太の術を掻き消す声。
「無駄なことを…尋太様。其方は我らが虜。人の分をわきまえず、あのような事をいたせば、神が許しませぬ」
知っている。女鬼は尋太の施した術を知って捜しに来ている。
「さて、其方の術。最後まで終わらせていただこう。それが主上の望み…」
女はガチガチと歯を鳴らして笑い始めた。擦れ合う歯が一本、また一本と口元から落ちる。
女の唇から血が滴り落ち始めた。
尋太は真言を唱える。
歯が抜け落ち、女の額から瘤が二本生えてくる。犬歯だけが異様に伸びる。
「ほう、ほう。無駄なことを。因果因縁が無ければ、お主の姿も見えぬか」
女鬼はあたりの臭いを嗅ぐ。夕闇に腐敗臭が漂う。尋太はその臭いにも顔色を変えなかった。
まがりなりにも闇に生きてきた自負がある。陰陽師と喧伝してきた見栄もある。そして尋太は自分の術に自信があった。
「はて、姿を見せてくださらぬか」
女鬼が顔を作り、声色を変えた。その声色がまたおぞましさを際立たせる。
「わしとは因果がありませぬ。因果があるものならば…」
女鬼が暗闇に手招きしているのが、月明かりでわずかに見えた。
暗闇の中にもう一体いる。尋太は今更ながらそれに気づいた。
見覚えがある。生気の乏しい顔、髪はばらりと下がって、脂ぎっていた。髪の毛が垂れ下がった右半分の顔が、月に照らし出される。
殴られた後、赤黒く腫れあがり、眼底が砕かれているのか、目玉はほとんど見えていない。唇も半ば切れて垂れ下がっていた。
陰陽師は生唾を飲み込む。
男は先日、里長の牛小屋で捕まえた若い男であった。因果があると言えば、確かに陰陽師と顔の晴れた男、熊丸には因果が生まれていた。
熊丸はあの晩、一晩かけて陰陽師の連れていた流れ者に犯された。最初は術を返そうとしている者をあぶり出そうとして弄ったのだが、連れたちはそれだけでは飽き足らず、熊丸を慰み者にしたのである。
流れ者たちは男でも女でもお構いなしであった。
犯し、殴り、弄る。
それを繰り返し、熊丸の尊厳を傷つけ、それを笑った。終いには熊丸の女を夜中に攫い、同じように弄りつくした。
陰陽師は二晩続いた蛮行が食傷気味になり山を下りたのである。その後どうなったかはわからない。里の若者も若い女も無事ではすまないであろう。
死んでしまったところで、流れ者たちはどうにでも出来ると考えていたし、実際そうしてきたのである。
あの時の若い男、熊丸が目の前にいる。陰陽師は怖気に襲われていた。
因果は結ばれている。顔だけではない、体の臭いすら鬼となった熊丸は覚えていて不思議ではなかった。
「おるか?熊童子…」
熊丸。いや鬼となり熊童子と呼ばれた男は、汗か皮脂かわからぬものに濡れた鼻を動かした。
「そのあたり…臭う」
枯れた声、熊童子は陰陽師が座した場所を指さした。
喉が渇きひり付いている。尋太は唾も飲み込めない。因果と名がわかっているのであれば、術者はどうしようもなくなっていた。
咄嗟に変わり身を探ろうとした。
腐臭が女鬼から漂う。
「そこにおったかぁ」
女鬼の顔が生成りとなり、黒い歯が口からはみ出て伸びる。
両手を伸ばし、四肢で奇妙な動きを見せた。芥虫のような姿になり、異様な速さで尋太に向かって襲い掛かった。
「長、無理に見なくてもよいぞ」
金太郎の言葉は相変わらず感情が乏しい。心根の優しい男ではあるが、淡々としているのである。狩り人の長はようやく落ち着き三人の後を追う。
近づけば肉塊の姿がはっきりとわかった。
男であった。
頭は禿げていたが顔の皮が剥され、首を引き千切られている。首から下は四つん這いで、臓物を尻の穴から引き抜かれていた。
腸があたりに散らばり、いやな臭いを漂わせて、首には糞尿まみれの魔羅を口に突っ込まれた姿であった。男の魔羅が引き千切られている所を見ると、口に咥えさせられた物は本人の者なのであろう。
時間は経っていないのか、血はまだ乾ききっていない。すでに蠅が集り始めている。
環が鼻も抑えず、肉塊に近づいた。着物も引き裂かれ、背中の皮も剥がされている。
「狩り人の方。この男に見覚えは?」
狩り人の長は首を振った。流れ者であろう。このような体躯の男は里にはいない。
「里の者ではなさそうですな」
目も当てられない肉塊に被せられた、ボロボロになった着物を、荒太郎が汚らしいものだという様子で摘まむ。
「随分目立つな」
狩り人の長が襤褸切れになった着物を広げる。
「こりゃ流れ者の芸売り達が揃えていた羽織ですよ。よく覚えている」
「芸売り?」
斑目の声色が変わる。狩り人の長が頷いた。
「場所柄、芸人や八卦読みやら色々な者が通りますからな。わしらは、普段は山の中にいますが、三日に一度は里に戻ります。
余所者はどうしても悪さをするとき山中で何かするものでしてね。それとなく探りはいれとるんですよ」
斑目たちを置いて荒太郎と、金太郎が少し先に進んだ。獣道が見えていて、少し開けているのが見えた。
「何かあるのか?坂田殿」
「樵の人、あんなところを獣道が付くとおもわれるか?あれは新しくついたんだろうさ」
金太郎の指摘した通り、何度も踏まれてできた道ではなく、何かを引き引き摺ったのか、草木は折れて倒れていた。
金太郎は倒れた草や枯れ枝を払い、のり面を昇る。緩やかだが確かに獣道にするには不便であった。
上った先にはやはり道はない。金太郎は顔を空へ向けている。後ろからついて上がった荒太郎は、金太郎の目線の先を見た。
巨大な鳥の死骸と勘違いした。しかしそれはまだ真新しい死体であった。
背中の皮と肉が開かれ、肋骨まで開かれた姿は羽を広げた鳥であった。全裸で尻の穴からはこれもまた臓物が引き抜かれ、ブラブラと揺れている。着物は無く皮膚が残る男の顔には傷が見て取れた。
死骸は杉に釣られ背中の肉を両方に広げられている。
「むぅ…」
荒太郎が唸った。人の力とは到底思えない。
「やはり鬼…」
荒太郎が呟く。金太郎は男の死体に手を合わせた。
「惨い事を」
斑目についてきた狩り人達が追い付く。肉塊になった男の姿に凍り付いた。
騒めく狩り人達を置き、金太郎と荒太郎は炭小屋へと戻った。斑目が禿げた男の死骸を調べていた。
「長殿、芸売りは他に仲間が?」
「はい。幾人かおりました。出入りが多かったですが、この男と他に二人ほど、顔を覚えるほどに居ついておりました」
斑目が立ち上がる。
荒太郎が戻り、環と斑目を見た。
「もう一人いた。死んでおる」
「はやり鬼…かの御仁か」
「わからぬ。しかし御仁にしてはやり様がむごすぎるように思うが」
斑目が、切り裂かれた着物の一部を小刀で切り裂いた。
「この死骸の連れ合いとやらもう一人いたそうだ。長殿もう一人を見たことは?」
狩り人の長は少し考え込み、思い出そうとしていた。流れ者、特に芸事を推し売っている輩は入れ替わりが激しい。
しかし狩り人の長は思い当たった。
「あれじゃ。思い出した。行者の風体じゃったが、陰陽師と言っておったの。あやつの連れ合いぞ」
斑目が切り裂いた着物に真っ黒な灰をまぶした。
「その行者とやらもおそらく生きてはおりますまい」
斑目が簡易な祭壇を作る。奇妙な祭壇で、仏法のように見えるが、どこか違和感がある。
環がその祭壇を見つめる。
「大威徳大明ですか…」
斑目は絹の切れ端を祭壇に入れようとした。
狩り人の長が、何気なく皆に告げる。
「いや…行者様、それに荒太郎殿。その陰陽師。今朝、里におりましたぞ」
荒太郎が唸った。
「陰陽師は生きておるのか」
「間違いありませぬ。あの者、この里で三カ月は居座っております」
狩り人の長は、斑目の連れてきた狩り人達に同意を伝えた。久太もまたその陰陽師の事を良く見て知っていた。
「あれでしょう?よく瓜を育てる術などしておった行者。違いましたか?」
斑目は祭壇をたたみ始めた。少し顔色が悪い。
「もしや、相手は鬼か妖の類とかも…」
斑目は慎重であった。
「しかし、恐れておっては何もはじまりませぬぞ。斑目殿」
荒太郎の声は強い。
「しかし、悪戯に相手に気取られれば…」
逡巡、迷い、恐怖。
斑目の顔にはそれがはっきりと見て取れた。
鬼の恐ろしさを良く知っているからこそなのであろうか。それとも別の何かがこの行者の恐怖を抱かせているかがわからない。
金太郎は流れ者の死骸を供養せねばならないと思案しながら、荒太郎たちの様子をみていた。
ふいに金太郎が、声を出す。
「わしが手伝ってやろう。樵の人構わぬか?」
場違いといえば場違い、しかしそれを思わせないほど自然に金太郎は言った。
三人は金太郎に振り向いた。
「なんじゃ?わしでは役不足か?樵の人」
荒太郎は知っている。
あの大熊を素手で打倒したのは、この武士の子だった。
環が荒太郎に目線を走らせた。
荒太郎はうなずく。腕には間違いなく信用があったが、仕事に引き入れるとなると、三人の事を黙っていくわけにもいかなかった。
環の視線は判断を迫っている。
三人の仕事は複雑な経緯があった。荒太郎にはそれを差し引いても味方に引き入れてよいとさえ考え始めていた。それは環にも斑目にも伝えていないもう一つの仕事である。
「わかった。坂田殿、こちらからも改めて、この一件について合力を願う」
環と斑目の顔は驚いていた。見知らぬ土地のよくわからぬ侍の子と名乗っている者を引き入れるとは、考えなかった。
「荒太郎殿、何を…」
荒太郎が、金太郎の座る切り株の前で、勢いをつけて座った。
「それがし。相模国は碓井の生まれ、平良文が子、平貞光と申す。今は都の守りを任された摂津源氏の棟梁、源頼光に付き従っておる者でござる。
坂田殿この度の一件どうか合力くだされ。どうやらこの三人と、里の狩り人だけでは荷が重い」
荒太郎はゆっくりと頭を下げた。
金太郎は居住まいを正す。
「承った。平殿」
荒太郎が顔を上げる。
「荒太郎でよい。それに平氏だと人が多いでな。今は碓井と名乗っておるのだ」
顔を上げた荒太郎はニンマリと人懐っこい笑顔を作った。
こちらのほうがこの男の本性なのであろう。
環がやれやれと言った様子で、荒太郎の隣に座す。斑目がそれに続いた。
「拙僧、高野山の環浄と申します」
「わしは、園城寺の斑俊と申す。今は故合って斑目と名乗っております」
園城寺、またの名を三井寺いう。
天智、弘文帝に所縁が深く。天台宗とも皇室とも曰く因縁が多いのは、また別の話であろう。
三井寺は、後に聖護院を開く増誉を生む。後の世に修験の総本と言われることとなる聖護院は、三井寺の系譜に連なっている。
金太郎は仏法界には詳しくない。都のことにもまったく興味が無い。しかし礼を持って名乗られ、頼られたのであれば、他人事として無視することもしない。そんな男であった。
斑目が真面目腐って青ざめた顔で告げる。
「坂田殿、この度の一件すぐに全てをお話は出来ませぬが、相手は…」
「鬼ですね。このような真似人に出来るはずもない。あの肉と皮の様子見られましたか?」
斑目が頷く。
刃物ではない。爪で引き裂いたとも思えない。背の皮と肉を引き千切るように剥いているのである。骨も強い力で抜いたとしか思えない。刃物の形跡が一つもない。それを金太郎は見て取っていた。
「熊よりは骨が折れそうですな」
金太郎の言葉に、荒太郎は思わず声を出して笑った。
◇
行者の格好から水干姿になり、男はゆるゆると酒を口に運んでいる。どこか青白い顔をしているのは、男の心情が顔色に浮かんでいるからであろう。
男は焦っていた。
竹筒から何やら膿のようなものを里長の牛小屋に巻いていた小僧を捕まえ、雇った荒くれものに任せたのが三日前。
色々と大人の方法で聞きだしたまではよかったが、肝心の都から来たという陰陽師の姿を見失っていた。
見失った時から、少々勝手が変わってきている。自分の術が見透かされているのを今ははっきりと認識していた。
何処かから式でも飛ばされているかと思い、気が気では無くなっている。
炭小屋で若い里者を可愛がったのが三日前、若い男が自分たちを追ってきたと考えていたが、里長の雇った陰陽師の下働きであった。
男についてきていた流れ者たちは、相模国から来た芸事一座の用心棒である。
女であろうと童であろうと関係なく手を出し性のはけ口にしているような輩であり、方々で人を弄り殺して、逃げているような男たちであった。
あの里の若い衆もおそらく生きてはいないだろう。密会をしていた女すら呼び出させて慰み者にしていたのだが、いい加減に飽きた陰陽師の男は、早々と炭小屋から里に下りていた。
一人里に戻ったのには理由があった。
男は自分の術に自信があった。そして深く術の世界を知ることで、力を試したくもなった。
邪な考えが男の心に生まれた。とある場所で聞いた邪法を試したくなり、それを横走で行っていたのだが、どうやらその術を勘ぐられた。
炭小屋で用心棒の乱暴を見ている時も視線を感じ、休まることが無かったのである。
人に紛れたが、視線は明らかに男に近づいてきていた。里の外に逃れようかと思ったが、人の中に紛れている方が安全だと経験的に知っている。
術も止め身動きも取れない男は、流れ者の集まる里の広場で、無為に時を費やしている。いい加減、芸人一座と共に里を出る算段を考えていた。目立たぬ様にそして誰が自分を探しているかを用心深く観察している。しかしその影も見つけられぬままでいた。
夜の闇が濃くなっている。
芸人も荒くれものも薬売り達も、各々寝床に引っ込んでいる。草木が揺れる音だけが、中央の広場に響いていた。陰陽師の男は昼も夜もなく神経を尖らせ、あまり眠ることも出来なくなっている。
草の音。
人の気配ではない何か。その道で長らく生きてきた男にははっきりとわかる。
しかし陰陽師の前に現れたのは、少し年増の女であった。
影が無い。女には影が無かったが、男も闇に生きた来ただけはある。
「もうし…」
甲高く、作ったような声色を女が発する。
暗闇の中、薄気味悪く響きわたり、陰陽師の背筋を浅く掻かれたようなむず痒さを覚える。
「申し…其方様」
女の声を最初無視していたが、今度ははっきりと陰陽師を呼んでいる。
恐る恐る振り返ると、闇の中に若いころは、その昔は美しかったのであろう熟れた女が足っていた。
陰陽師は黙っている。声の主が人ではないことに気付いていた。
「はて…」
女が動く。闇から顔がうっすらと月明かりに照らされる。
泥眼であった。
女の表情は面を付けたかのように動きがない。わずかに開いた口元は歯が見えている。
「返事をいたしませぬか?こちらに陰陽の術を使う方がおられると聞き、主人の言付けで参りましたのに…」
人の言葉を使っているが、どこか違和感があった。そもそも口が動いていないのに声が出ている。
陰陽師はその女から目を離さない。目の前にある酒の入った土器に印を結んだ。
女の顔が険しくなる。
「おのれ…人の分際で」
一瞬角が見えたような気がしたが、すぐに女の顔は変わった。
「姿を見せませぬか尋太様…」
名を呼ばれた。
陰陽師の心臓が大きく波打つ。
名を知っている。しかも隠し名や通り名ではなく本名を知っている。
陰陽師、尋太は顔色を悪くした。
「心を動かされましたなぁ」
術が乱れる。尋太は目を閉じた。口の中で術を唱える。
「我は霞なり、雲なり、霧なり…」
尋太の術を掻き消す声。
「無駄なことを…尋太様。其方は我らが虜。人の分をわきまえず、あのような事をいたせば、神が許しませぬ」
知っている。女鬼は尋太の施した術を知って捜しに来ている。
「さて、其方の術。最後まで終わらせていただこう。それが主上の望み…」
女はガチガチと歯を鳴らして笑い始めた。擦れ合う歯が一本、また一本と口元から落ちる。
女の唇から血が滴り落ち始めた。
尋太は真言を唱える。
歯が抜け落ち、女の額から瘤が二本生えてくる。犬歯だけが異様に伸びる。
「ほう、ほう。無駄なことを。因果因縁が無ければ、お主の姿も見えぬか」
女鬼はあたりの臭いを嗅ぐ。夕闇に腐敗臭が漂う。尋太はその臭いにも顔色を変えなかった。
まがりなりにも闇に生きてきた自負がある。陰陽師と喧伝してきた見栄もある。そして尋太は自分の術に自信があった。
「はて、姿を見せてくださらぬか」
女鬼が顔を作り、声色を変えた。その声色がまたおぞましさを際立たせる。
「わしとは因果がありませぬ。因果があるものならば…」
女鬼が暗闇に手招きしているのが、月明かりでわずかに見えた。
暗闇の中にもう一体いる。尋太は今更ながらそれに気づいた。
見覚えがある。生気の乏しい顔、髪はばらりと下がって、脂ぎっていた。髪の毛が垂れ下がった右半分の顔が、月に照らし出される。
殴られた後、赤黒く腫れあがり、眼底が砕かれているのか、目玉はほとんど見えていない。唇も半ば切れて垂れ下がっていた。
陰陽師は生唾を飲み込む。
男は先日、里長の牛小屋で捕まえた若い男であった。因果があると言えば、確かに陰陽師と顔の晴れた男、熊丸には因果が生まれていた。
熊丸はあの晩、一晩かけて陰陽師の連れていた流れ者に犯された。最初は術を返そうとしている者をあぶり出そうとして弄ったのだが、連れたちはそれだけでは飽き足らず、熊丸を慰み者にしたのである。
流れ者たちは男でも女でもお構いなしであった。
犯し、殴り、弄る。
それを繰り返し、熊丸の尊厳を傷つけ、それを笑った。終いには熊丸の女を夜中に攫い、同じように弄りつくした。
陰陽師は二晩続いた蛮行が食傷気味になり山を下りたのである。その後どうなったかはわからない。里の若者も若い女も無事ではすまないであろう。
死んでしまったところで、流れ者たちはどうにでも出来ると考えていたし、実際そうしてきたのである。
あの時の若い男、熊丸が目の前にいる。陰陽師は怖気に襲われていた。
因果は結ばれている。顔だけではない、体の臭いすら鬼となった熊丸は覚えていて不思議ではなかった。
「おるか?熊童子…」
熊丸。いや鬼となり熊童子と呼ばれた男は、汗か皮脂かわからぬものに濡れた鼻を動かした。
「そのあたり…臭う」
枯れた声、熊童子は陰陽師が座した場所を指さした。
喉が渇きひり付いている。尋太は唾も飲み込めない。因果と名がわかっているのであれば、術者はどうしようもなくなっていた。
咄嗟に変わり身を探ろうとした。
腐臭が女鬼から漂う。
「そこにおったかぁ」
女鬼の顔が生成りとなり、黒い歯が口からはみ出て伸びる。
両手を伸ばし、四肢で奇妙な動きを見せた。芥虫のような姿になり、異様な速さで尋太に向かって襲い掛かった。
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