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義母の訪問
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冬の足音が近づき、屋敷にもひんやりとした空気が漂い始めたころ。
カタリーナたちは穏やかな日々を重ね、子どもたちも日に日に笑顔を取り戻していた。
そんなある日の午後だった。
(レオナルドは王都での政務のため、この日も不在だった。)
屋敷の門番が慌ただしく駆け込んできた。
「奥様、侯爵夫人様が……お越しに。」
カタリーナは一瞬、手にしていた本を閉じる手を止めた。
お義母様が?
珍しいことだった。
結婚後、義母が自ら屋敷を訪れることはほとんどなかったのだ。
レオナルドが帰ってきたからだろうか、とカタリーナはふと思った。
カタリーナは静かに呼吸を整え、応接間へ向かった。
あえてレオナルドがいない時を狙ったのだろうか。そんな考えが、静かに胸をよぎった。
義母は、以前と変わらぬ冷ややかな威厳をまとって、静かに腰掛けていた。
「お久しぶりですね、カタリーナ。」
柔らかい言葉とは裏腹に、その声音には、もともとカタリーナを気に入らないと思っていた感情が滲んでいた。探るような棘と冷ややかさが、隠しきれずにあらわれていた。
「こちらこそ、お義母様。お元気そうで何よりです。」
カタリーナは礼儀正しく微笑みながら応じたが、心の中では深いため息をついていた。
侍女が静かに茶を運ぶ間も、義母の鋭い視線はカタリーナを逃さなかった。
そして、茶器を手に取ると、ふとつぶやくように言った。
「そろそろ、次の準備を考えなければなりませんね。水面下では、すでに動いておりますが。」
意味深なその言葉に、カタリーナは小さく眉をひそめた。
「……次、とは?(水面下?)」
義母は微笑みを崩さないまま、カップを受け皿に戻した。
「レオナルドにも、そろそろ正式なお相手をお考えになる頃でしょう。」
カタリーナの心臓が、一瞬だけ跳ねた。
何を、言っているの?正式な相手?
「もちろん、家族のためにも、立場のためにも。」
あくまでも穏やかに、しかし確実に、義母はカタリーナの心を突き刺す言葉を紡いでいった。
カタリーナは静かにカップを持ち上げながら、胸の奥に冷たいものを感じていた。
どうして、わざわざ私にこれを伝えに来たのか。
息子に直接言うでもなく、レオナルドの不在を狙って、私だけに。
それは、まるで先に私を追い詰め、身を引かせるための布石のように思えた。
静かな応接間に、微かな茶器の音だけが響いていた。
カタリーナは、静かにカップを置いた。
「お母様、私はレオナルドの正式な妻です。」
声は震えなかった。むしろ静かに、凛と響いた。
義母は微笑みを崩さぬまま、涼しげに応じた。
「もちろん、形式上はそうでしょう。」
その言葉に、カタリーナは胸の奥に鈍い痛みを覚えた。
形式上。
つまり、心から認めるつもりはないということだ。
セレスタ家の威厳を保っていられるのも、私の実家、リベルタ家のおかげなのに。
そう、カタリーナの実家であるリベルタ家は、セレスタ家の資産減少に伴い、金銭的な援助を行った家だった。
それがあってこその、この結婚だったのに。
「ですが、時代は変わります。」
義母はそう続けた。
「レオナルドには、よりふさわしい未来が必要です。あなたには、理解していただけると信じています。」
私が相応しくないということ。結局は平民だから。
何が「時代が変わる」だろう。爵位や家柄に縛られる方が、よほど古いじゃない。
カタリーナは悔しさを押し殺しながら、静かに心の中で呟いた。」
カタリーナは、胸の奥で静かに拳を握った。
それなら、子どもたちも私が平民だから、セレスタ家に相応しくないとでも言いたいのだろうか?
胸にこみ上げる怒りと悲しみを、必死に押し殺しながら。
何があっても、私は子どもたちを守らなければ‥‥。
応接間に流れる張りつめた空気の中で、カタリーナは静かに、自らに誓った。
カタリーナたちは穏やかな日々を重ね、子どもたちも日に日に笑顔を取り戻していた。
そんなある日の午後だった。
(レオナルドは王都での政務のため、この日も不在だった。)
屋敷の門番が慌ただしく駆け込んできた。
「奥様、侯爵夫人様が……お越しに。」
カタリーナは一瞬、手にしていた本を閉じる手を止めた。
お義母様が?
珍しいことだった。
結婚後、義母が自ら屋敷を訪れることはほとんどなかったのだ。
レオナルドが帰ってきたからだろうか、とカタリーナはふと思った。
カタリーナは静かに呼吸を整え、応接間へ向かった。
あえてレオナルドがいない時を狙ったのだろうか。そんな考えが、静かに胸をよぎった。
義母は、以前と変わらぬ冷ややかな威厳をまとって、静かに腰掛けていた。
「お久しぶりですね、カタリーナ。」
柔らかい言葉とは裏腹に、その声音には、もともとカタリーナを気に入らないと思っていた感情が滲んでいた。探るような棘と冷ややかさが、隠しきれずにあらわれていた。
「こちらこそ、お義母様。お元気そうで何よりです。」
カタリーナは礼儀正しく微笑みながら応じたが、心の中では深いため息をついていた。
侍女が静かに茶を運ぶ間も、義母の鋭い視線はカタリーナを逃さなかった。
そして、茶器を手に取ると、ふとつぶやくように言った。
「そろそろ、次の準備を考えなければなりませんね。水面下では、すでに動いておりますが。」
意味深なその言葉に、カタリーナは小さく眉をひそめた。
「……次、とは?(水面下?)」
義母は微笑みを崩さないまま、カップを受け皿に戻した。
「レオナルドにも、そろそろ正式なお相手をお考えになる頃でしょう。」
カタリーナの心臓が、一瞬だけ跳ねた。
何を、言っているの?正式な相手?
「もちろん、家族のためにも、立場のためにも。」
あくまでも穏やかに、しかし確実に、義母はカタリーナの心を突き刺す言葉を紡いでいった。
カタリーナは静かにカップを持ち上げながら、胸の奥に冷たいものを感じていた。
どうして、わざわざ私にこれを伝えに来たのか。
息子に直接言うでもなく、レオナルドの不在を狙って、私だけに。
それは、まるで先に私を追い詰め、身を引かせるための布石のように思えた。
静かな応接間に、微かな茶器の音だけが響いていた。
カタリーナは、静かにカップを置いた。
「お母様、私はレオナルドの正式な妻です。」
声は震えなかった。むしろ静かに、凛と響いた。
義母は微笑みを崩さぬまま、涼しげに応じた。
「もちろん、形式上はそうでしょう。」
その言葉に、カタリーナは胸の奥に鈍い痛みを覚えた。
形式上。
つまり、心から認めるつもりはないということだ。
セレスタ家の威厳を保っていられるのも、私の実家、リベルタ家のおかげなのに。
そう、カタリーナの実家であるリベルタ家は、セレスタ家の資産減少に伴い、金銭的な援助を行った家だった。
それがあってこその、この結婚だったのに。
「ですが、時代は変わります。」
義母はそう続けた。
「レオナルドには、よりふさわしい未来が必要です。あなたには、理解していただけると信じています。」
私が相応しくないということ。結局は平民だから。
何が「時代が変わる」だろう。爵位や家柄に縛られる方が、よほど古いじゃない。
カタリーナは悔しさを押し殺しながら、静かに心の中で呟いた。」
カタリーナは、胸の奥で静かに拳を握った。
それなら、子どもたちも私が平民だから、セレスタ家に相応しくないとでも言いたいのだろうか?
胸にこみ上げる怒りと悲しみを、必死に押し殺しながら。
何があっても、私は子どもたちを守らなければ‥‥。
応接間に流れる張りつめた空気の中で、カタリーナは静かに、自らに誓った。
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