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どうも、哀れ代表です
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シルヴィアの横でひっそりと控えていた焦茶色の髪を持つ男子生徒に、そっと紫の瞳が向けられた。
扇をわずかに傾けた仕草だけで心得たように前に足を踏み出した姿は、顔面だけは輝かしいアーロン達に比べるとどうにも素朴な、貴族というより牧場辺りで働いていそうな朴訥とした面持ちだった。
「えー、では失礼してご説明させていただきます。キーン伯爵が次男、オーネスト・キーンと申します」
「いきなり出てきて何だ。キーン? 知らんな、どこの田舎者だ」
「これは失礼。殿下がル・カンパネラを貸し切ったディナーで『今年のフェーズワインは当たりだな』と堪能されていたワインを名産としている田舎領地にございます。まさか、ボトルが違うのに堂々と間違われるとは思いませんで」
「っ⁉︎ あ、あの店は赤ワインといえばいつもフェーズだったからそう思っただけだっ」
「ル・カンパネラは毎年オーナーがブランド関係なく一番当たりだと思ったワインだけを扱う事で有名な店なんですがね。ちなみにうちは毎年白ワインを卸していまして今年はめでたく赤白取り扱うことになったのですが、ご存知ないとは残念。まぁ、そんな事はどうでも良いんですが」
「ど、どうでも良いって」
「我がキーン領はワインが名産で、この学園のプロムパーティでのワインも代々承っておりますが……何故か今年は発注書が届かない、と実家から相談を受けまして」
「……」
「何か手違いかと事務の方に伺えば生徒会から書類を受けていない、と言われました」
「……」
「契約を結んでいる訳ではないので、別のワイナリーに頼んだと言う事かと思いましたが……まぁ、普通はそれでも一言あるものですが。事務の方が言うにはワインどころか、料理もスタッフもオーケストラの手配も何もしてないって言うじゃないですか」
「……」
「これはどう考えてもおかしいな、と思って生徒会室に訪ねてみたんですが、いつ行っても扉は閉まったままで誰も出てこられない」
「……」
「自由登校になる前にどうにか面会を、とクラスまで伺いましたが、何と生徒会メンバー全員が自主的に自由登校を開始されていていやびっくり! 高貴なお方の自由登校って開始時期まで自由だったとは存じませんで!」
「……っ、」
「そうこうしている内にうちと同じく学園御用達の商会の子やスィーツを担当してるホテルの子達からも発注を受けてない、と相談されましてこれはいよいよ先生に確認すべきかと思ったところで」
「私からお声がけさせて頂きましたの」
一つの文章を繋げるように、滑らかにシルヴィアが引き継いだ。
「私も卒業式並びにプロムの準備が全く進んでいない情報は届いていました。本来ならばここに至るまでの間に先生をはじめとした大人が介入するのでしょうが、生憎生徒会執務は王太子の査定として最大のポイントですので手を出しあぐねていたご様子。私も勝手に殿下の査定に割り込むのはいかがなものかと思ったのですが」
ふぅ、と扇子で隠した口元からため息が漏れる。
「このままではどう考えてもまともな卒業式は送れません。ですが我が校の卒業式は国の重鎮並びに諸外国からのゲストもいらっしゃいます。『できませんでした』で済むことではございませんもの」
元々は己が希望した議会承認のせいで周囲が口出しできなくなっているのだ。ならば、自分が責任をとるべきだろう、とシルヴィアは減点覚悟で生徒会室へ現状確認のため入室を果たそうとした。が、
「まさか生徒会執行印の入った棚の鍵を持ったまま旅行に出かけられたとは思いもよりませんでしたの」
シルヴィアの横でひっそりと控えていた焦茶色の髪を持つ男子生徒に、そっと紫の瞳が向けられた。
扇をわずかに傾けた仕草だけで心得たように前に足を踏み出した姿は、顔面だけは輝かしいアーロン達に比べるとどうにも素朴な、貴族というより牧場辺りで働いていそうな朴訥とした面持ちだった。
「えー、では失礼してご説明させていただきます。キーン伯爵が次男、オーネスト・キーンと申します」
「いきなり出てきて何だ。キーン? 知らんな、どこの田舎者だ」
「これは失礼。殿下がル・カンパネラを貸し切ったディナーで『今年のフェーズワインは当たりだな』と堪能されていたワインを名産としている田舎領地にございます。まさか、ボトルが違うのに堂々と間違われるとは思いませんで」
「っ⁉︎ あ、あの店は赤ワインといえばいつもフェーズだったからそう思っただけだっ」
「ル・カンパネラは毎年オーナーがブランド関係なく一番当たりだと思ったワインだけを扱う事で有名な店なんですがね。ちなみにうちは毎年白ワインを卸していまして今年はめでたく赤白取り扱うことになったのですが、ご存知ないとは残念。まぁ、そんな事はどうでも良いんですが」
「ど、どうでも良いって」
「我がキーン領はワインが名産で、この学園のプロムパーティでのワインも代々承っておりますが……何故か今年は発注書が届かない、と実家から相談を受けまして」
「……」
「何か手違いかと事務の方に伺えば生徒会から書類を受けていない、と言われました」
「……」
「契約を結んでいる訳ではないので、別のワイナリーに頼んだと言う事かと思いましたが……まぁ、普通はそれでも一言あるものですが。事務の方が言うにはワインどころか、料理もスタッフもオーケストラの手配も何もしてないって言うじゃないですか」
「……」
「これはどう考えてもおかしいな、と思って生徒会室に訪ねてみたんですが、いつ行っても扉は閉まったままで誰も出てこられない」
「……」
「自由登校になる前にどうにか面会を、とクラスまで伺いましたが、何と生徒会メンバー全員が自主的に自由登校を開始されていていやびっくり! 高貴なお方の自由登校って開始時期まで自由だったとは存じませんで!」
「……っ、」
「そうこうしている内にうちと同じく学園御用達の商会の子やスィーツを担当してるホテルの子達からも発注を受けてない、と相談されましてこれはいよいよ先生に確認すべきかと思ったところで」
「私からお声がけさせて頂きましたの」
一つの文章を繋げるように、滑らかにシルヴィアが引き継いだ。
「私も卒業式並びにプロムの準備が全く進んでいない情報は届いていました。本来ならばここに至るまでの間に先生をはじめとした大人が介入するのでしょうが、生憎生徒会執務は王太子の査定として最大のポイントですので手を出しあぐねていたご様子。私も勝手に殿下の査定に割り込むのはいかがなものかと思ったのですが」
ふぅ、と扇子で隠した口元からため息が漏れる。
「このままではどう考えてもまともな卒業式は送れません。ですが我が校の卒業式は国の重鎮並びに諸外国からのゲストもいらっしゃいます。『できませんでした』で済むことではございませんもの」
元々は己が希望した議会承認のせいで周囲が口出しできなくなっているのだ。ならば、自分が責任をとるべきだろう、とシルヴィアは減点覚悟で生徒会室へ現状確認のため入室を果たそうとした。が、
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