終末のアストラム

RiOS

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*  本章(話数未定)  *

【閑話 01】制作裏話

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ここまで、如何だったでしょうか。

書いている私としては、プロローグ部分執筆時は(小説連載を長いことしていなかったこともあって)小説文体の難しさにうちひしがれつつの執筆でした。(本編に入るとだいぶ慣れてきた気がしますw)

それもそのはず。

普段は同人ゲームの企画屋/執筆担当なのですが、ゲームシナリオと小説とでは「書き方」のルールが色々と違うのです。

例を示してみますと、

<<ストーリー>>
主人公【健太郎】が放課後、学校の近所に新しく出来た"たこ焼き屋"で、校則で禁止されている"買い食い"をしているところを、幼馴染の堅物生徒会長【優子】に見つかり、注意を受けるも、優子がたこ焼き好きということを思い出した健太郎が買収をもちかける

……というストーリーにしてみましょう。



<<ゲームシナリオ>>(「;」以下は演出用注釈)

; 背景:通学路
普段と違う道を通っていると、見慣れない看板が目に入った。
; 背景:たこ焼き屋(全体)
【健太郎】「あれ、こんなところにたこ焼き屋なんてあったか?」
眺めていると、中にいたおじさんが声をかけてきた。
; 背景:たこ焼き屋(アップ)
【 店主 】「いらっしゃい兄ちゃん、何か食べてくかい? 先週オープンしたばかりなんで安くするよ」
メニュー表には、たこ焼きのほかに料理や飲み物がいくつか載っていた。
【健太郎】(ここは無難にたこ焼きにしておくべきか……)
【健太郎】「じゃあ……たこ焼き6つ」
【 店主 】「あいよ、100円ね」
校則では買い食い禁止だが、まぁいいだろう。
学園からはある程度離れているし、そうそう見つかるまい。
【 店主 】「はい、お待ちどう様」
湯気をあげる出来立てのたこ焼きを早く食べてしまいたい衝動に駆られつつ、近所の公園へ向かう。
; 背景:公園
【健太郎】「よし、食うか」
冷めないうちに食べてしまおう。

——そうして、半分ほどを食べ終えた時。
【  ???  】「健太郎、何をやってるの?」
不意に声をかけられ、振り返る。
; 立絵:優子(表情差分:通常)
【健太郎】「優子?」
【 優子 】「なにしてたの?」
【健太郎】「いやー、だから……そう、見てたんだよ」
【 優子 】「何を?」
【健太郎】「子供たちを」
; 立絵:優子(表情差分"ジト目")
【 優子 】「ふーん、それじゃあ後ろ手にたこ焼き隠しながらそう言ってたって、担任に報告しておくわね」
【健太郎】「ちょっと! 絶対"生活指導"って名目で罰掃除させられるじゃん!」
; 立絵消去
ウチの学校は校則にうるさい。
買い食いくらいで……とは思うのだが、校則を緩くするとロクなことがない、というのがお偉いさん方の共通の認識らしい。
どうにか、先生達にチクられるのは回避せねばならない。
【健太郎】「話せばわかるって」
; 立絵:優子(表情差分"ジト目")
【 優子 】「へー、どんな内容?」
思いっきり信用してませんね……まぁ仕方ないけど。
【健太郎】「実はな、ガキどもに振る舞おうと……」
; 立絵:優子(表情差分"丸口")
【 優子 】「さっき食べてたのに?」
なるほど、見られてましたか。
これは言い訳出来なさそうだ。
……しかし、さっきからと視線を感じるんだよな、主に俺の手元たこやきに。
; 立絵消去
【健太郎】(そういえば優子って、たこ焼き大好物だっけ)
そうとわかれば話ははやい。
それ、買収だ!
【健太郎】「ほら、やるよ」
たこ焼きのパックを差し出す。
しかし、優子はすぐには受け取らなかった。
; 立絵:優子(表情差分"丸口/指差し")
【 優子 】「何よ、私に罪を着せようっていうの?」
【健太郎】「いや、食べたいんじゃないかなぁーって」
; 立絵:優子(表情差分"白目怒")
【 優子 】「バカじゃないの」
そういいつつ、差し出したパックからは目を離さない。
; 立絵:優子(表情差分"丸口/指差し")
【 優子 】「こ……今回だけだからね!」
; 立絵消去
差し出したたこ焼きのパックを奪うようにして踵を返す優子。
きっと、帰って食べようとでも思っているのだろう。
【健太郎】「おーい、今食べないと冷めるぞーっ」
; 立絵:優子(縮小、表情差分"白目怒/指差")
【 優子 】「うっさい! あんたと違って私はマジメなのっ!」
; 立絵消去
【健太郎】「まったく、カタいんだかチョロいんだか……」
【健太郎】「まぁでも、そんなところが憎めないんだよな」
見えなくなった背中に、ひとりごちた。

<終>



どうでしょう? わかりましたでしょうか?

まず、誰が発言したのか、というのがわかる説明口調の文がありません。
小説につきものの、"優子が言った"といった発言者明示の表現がなく、セリフ括弧の前に【】括弧によって発言者を表示します。これはゲーム画面にも出るので、わざわざ地の文で発言者明示をする必要がないわけです。

加えて、場面転換にも触れていませんよね。演出注で背景変更の指示は出していますが、文章で表してはいません。

当たり前のことではありますが、ゲームでは文章以外にも画面上で背景/立ち絵により状況やある程度の心情を表現できますし、それをわざわざ文章で二重に触れるとプレーヤー側にはかえって読みづらく、鬱陶しく感じるものです。

このようなゲームシナリオの表現に慣れてしまうと、久々に小説執筆をする時に大変な思いをするわけです。




というわけで、どーでもいい裏話でした。

お付き合い頂きましてありがとうございましたm(_ _)m


次の投稿は、本編前話のまとめと次回予告です。引き続きよろしくお願いいたします。
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