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⑧ケンムン奇譚 後編
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この話は、真弓さんから聞いた話を再構成しています。
変な子供のようなものが洞窟のような奥の方に入って行ったので、おじいさんは蟹を採ります。蟹と言っても大きな蟹ではなく、手のひらサイズのサワガニのような蟹です。大きめの石をどけるとそこに蟹が隠れている事が多く、その日もたくさん蟹が採れたそうです。
洗面器のような容器に蟹が満杯になったのでおじいさんは帰ろうかと思ったそうです。奥の方に目をやるとさっきの子供のようなものがこちらを凝視していたそうです。目は大きくギョロっとしており、少し不気味に思ったそうです。おじいさんは「蟹分けてあげようか?」とその子供のようなものに話かけました。蟹を手に持ち、その子供のようなものに渡すしぐさをしたそうです。
その子供のようなものは、手を出してきたので、おじいさんは蟹を手渡したそうです。蟹を受け取るとそれはそそくさと奥の方に歩いて行ったそうです。
おじいさんは、家に帰りました。おじいさんのお母さんに蟹を採ってきた報告をすると、炭をおこしてくれたそうです。ここでおじいさんは、お母さんに先ほどの子供のようなものの話をします。変な奴を見た、蟹をあげると奥に入って行ったとあらましを話すとお母さんは、不思議そうな顔をしたそうです。そのような子供を見た事がないので、誰だろうという事になりました。おじいさんのお父さん(真弓さんのひいじいさん)と一緒にその洞窟のような所に行くことになりました。
「本当にそんな奴いたのか」「見間違いではないか」などとおじいさんのお父さんに言われながら、歩いて行ったそうです。洞窟のような所につくと、子供のようなものはいませんでした。奥の方に入って行ったと主張するおじいさん、やっぱりいないじゃないかと揶揄うおじいさんのお父さん、少し言い合いになったそうです。
おじいさんは「おーい」「出てこい」と洞窟のような所の奥に向かって叫びました。その時です、奥からさっきの子供のようなものが手を下にブランとさせた猫背のような状態で奥から出てきたそうです。それを見たおじいさんのお父さんは、おじいさんを抱きかかえて、一気に走り始めました。何の説明もなく、おじいさんはされるがままです。浜辺を30メートル程度走った所で、おじいさんのお父さんは振り返ります。先ほどの子供のようなものは、洞窟のような所から少し出た所にポツンと立ってこちらを見ていたそうです。
おじいさんを地面に下したおじいさんのお父さんは真っ青な顔をしていたそうです。おじいさんの手を掴み、後ろを何度も振り返りながら、家に帰ったそうです。
「ケンムンが出た」おじいさんのお父さんがおじいさんのお母さんに報告しています。おじいさんは、その時に初めてケンムンという言葉を聞いたそうです。おじいさんのお父さんが言うには、ケンムンは危ない妖怪で、川に引きずり込まれて、死んでしまう事もあるそうです。
蟹をあげた事をおじいさんのお父さんに言うと、もしかしたら、それが良かったのかもしれないという事でした。あれを見たら逃げる事、もう1人であの洞窟のような所に行かないと約束させられたそうです。しかし、子供ですから、そんな事を守る訳がありません。おじいさんは何度もその洞窟のような所に1人で見に行ったそうです。時には、「おーい」と声をかけたり、「蟹あげるぞ」と蟹でケンムンをつってみたそうなのですが、ケンムンが現れる事はもうなかったそうです。
これでおじいさんのお話は終わりです。真弓さんは、ケンムンを信じている訳ではないそうです。おじいさんの作り話か、もしかしたら、可哀そうな家庭の子がそこで暮らしていたのではないかとおっしゃっていました。しかし、1900年当時の話でも、子供が1人でそんな危険な場所で暮らしているとは思えないので、やはりおじいさんの作り話ではないかとおっしゃっていました。
おじいさんがケンムンを見た場所が今はどうなっているかというと、人の手が入り、山の水を排出するきちんとした暗渠になっているそうです。
ケンムンの目撃談は、奄美大島では多数残されています。真弓さんのおじいさんは嘘をついていたのでしょうか。本当にケンムンはいたのでしょうか。それは分かりません。そんなのいないと考える人もいるかもしれません。私は、ケンムンはいたのではないかと思っています。というか、いてほしいと思います。奄美大島には、多くのケンムン像が立っており、「ケンムン注意」の標識もあるそうです。ケンムンを見かけた人はお知らせください。
ケンムン奇譚 おしまい
変な子供のようなものが洞窟のような奥の方に入って行ったので、おじいさんは蟹を採ります。蟹と言っても大きな蟹ではなく、手のひらサイズのサワガニのような蟹です。大きめの石をどけるとそこに蟹が隠れている事が多く、その日もたくさん蟹が採れたそうです。
洗面器のような容器に蟹が満杯になったのでおじいさんは帰ろうかと思ったそうです。奥の方に目をやるとさっきの子供のようなものがこちらを凝視していたそうです。目は大きくギョロっとしており、少し不気味に思ったそうです。おじいさんは「蟹分けてあげようか?」とその子供のようなものに話かけました。蟹を手に持ち、その子供のようなものに渡すしぐさをしたそうです。
その子供のようなものは、手を出してきたので、おじいさんは蟹を手渡したそうです。蟹を受け取るとそれはそそくさと奥の方に歩いて行ったそうです。
おじいさんは、家に帰りました。おじいさんのお母さんに蟹を採ってきた報告をすると、炭をおこしてくれたそうです。ここでおじいさんは、お母さんに先ほどの子供のようなものの話をします。変な奴を見た、蟹をあげると奥に入って行ったとあらましを話すとお母さんは、不思議そうな顔をしたそうです。そのような子供を見た事がないので、誰だろうという事になりました。おじいさんのお父さん(真弓さんのひいじいさん)と一緒にその洞窟のような所に行くことになりました。
「本当にそんな奴いたのか」「見間違いではないか」などとおじいさんのお父さんに言われながら、歩いて行ったそうです。洞窟のような所につくと、子供のようなものはいませんでした。奥の方に入って行ったと主張するおじいさん、やっぱりいないじゃないかと揶揄うおじいさんのお父さん、少し言い合いになったそうです。
おじいさんは「おーい」「出てこい」と洞窟のような所の奥に向かって叫びました。その時です、奥からさっきの子供のようなものが手を下にブランとさせた猫背のような状態で奥から出てきたそうです。それを見たおじいさんのお父さんは、おじいさんを抱きかかえて、一気に走り始めました。何の説明もなく、おじいさんはされるがままです。浜辺を30メートル程度走った所で、おじいさんのお父さんは振り返ります。先ほどの子供のようなものは、洞窟のような所から少し出た所にポツンと立ってこちらを見ていたそうです。
おじいさんを地面に下したおじいさんのお父さんは真っ青な顔をしていたそうです。おじいさんの手を掴み、後ろを何度も振り返りながら、家に帰ったそうです。
「ケンムンが出た」おじいさんのお父さんがおじいさんのお母さんに報告しています。おじいさんは、その時に初めてケンムンという言葉を聞いたそうです。おじいさんのお父さんが言うには、ケンムンは危ない妖怪で、川に引きずり込まれて、死んでしまう事もあるそうです。
蟹をあげた事をおじいさんのお父さんに言うと、もしかしたら、それが良かったのかもしれないという事でした。あれを見たら逃げる事、もう1人であの洞窟のような所に行かないと約束させられたそうです。しかし、子供ですから、そんな事を守る訳がありません。おじいさんは何度もその洞窟のような所に1人で見に行ったそうです。時には、「おーい」と声をかけたり、「蟹あげるぞ」と蟹でケンムンをつってみたそうなのですが、ケンムンが現れる事はもうなかったそうです。
これでおじいさんのお話は終わりです。真弓さんは、ケンムンを信じている訳ではないそうです。おじいさんの作り話か、もしかしたら、可哀そうな家庭の子がそこで暮らしていたのではないかとおっしゃっていました。しかし、1900年当時の話でも、子供が1人でそんな危険な場所で暮らしているとは思えないので、やはりおじいさんの作り話ではないかとおっしゃっていました。
おじいさんがケンムンを見た場所が今はどうなっているかというと、人の手が入り、山の水を排出するきちんとした暗渠になっているそうです。
ケンムンの目撃談は、奄美大島では多数残されています。真弓さんのおじいさんは嘘をついていたのでしょうか。本当にケンムンはいたのでしょうか。それは分かりません。そんなのいないと考える人もいるかもしれません。私は、ケンムンはいたのではないかと思っています。というか、いてほしいと思います。奄美大島には、多くのケンムン像が立っており、「ケンムン注意」の標識もあるそうです。ケンムンを見かけた人はお知らせください。
ケンムン奇譚 おしまい
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