超訳・古事記列伝

新世代編

第10話 天孫降臨──ニニギと三種の神器

出雲の「国譲り」が成立し、地上の支配権が高天原に移った。
が、神々にとってここからが本当の勝負だ。
だって「はい今日から天照グループが経営します！」と宣言したところで、現場の士気がついてこなければただの紙切れだ。

親会社と子会社のM&Aで一番大事なのは、誰を社長に送り込むか。
神話でもそれは同じだった。


三代目、降臨内定

高天原が白羽の矢を立てたのは、アマテラスの孫・ニニギノミコト。
つまり「ファウンダーの孫にして三代目社長」。

現代の日本企業でよく見る構図だ。
「おい、大丈夫か？ 三代目ってやつはたいてい“ボンボン”だろ」と社内はざわつく。
でも血筋が最強の資格証明。
いわば「アマテラスのDNA」という株券を握っている限り、誰も逆らえない。

三種の神器＝経営リソース

送り出す前にアマテラスは三つの神器を授けた。

八咫鏡（やたのかがみ） → 「コンプライアンス部門」
　嘘や粉飾は映すとバレる。要はガバナンス。

八尺瓊勾玉（やさかにのまがたま） → 「社章バッジ」
　社員を一つにまとめるシンボル。ブランドの力。

草薙剣（くさなぎのつるぎ） → 「護身用の軍事力」
　取引先が荒れたらこれで交渉力を発揮。

まとめると「透明性・一体感・抑止力」。
これが組織運営の三本柱だっていうのだから、神話の人事戦略は意外と理にかなっている。


降臨チーム＝新規事業部立ち上げ

「孫ひとりで降ろすのは不安」ということで、支援メンバーも派遣された。
その顔ぶれが絶妙にスタートアップ感ある。


サルタヒコ：現地ガイド。土地勘の鬼。

アメノウズメ：広報＆イベント担当。例の“天岩戸ダンス”で実績あり。

アメノコヤネ：神事担当／参謀役っぽい

フトダマ：総務・経理担当

タマノオヤ（勾玉の神）やイシコリドメ（鏡作りの神）など、職人


完全に「立ち上げチーム」。
親会社からの出向で現地法人を仕切る……もうベンチャーの支社設立レベルの描写だ。


降臨の地＝オフィス開設

ニニギが降り立ったのは、九州・高千穂の峰。
雲が晴れ、山頂から国を見渡せる光景。

「……ここが俺の新オフィスか」

胸中は緊張でいっぱいだっただろう。
実績ゼロの孫が「本日付で社長です」と言われるのだから。
普通ならTwitterで叩かれて炎上している。
だが彼には三種の神器と「太陽の血統」という無敵カードがあった。

婚姻＝アライアンス戦略

地上でニニギが妻に迎えたのは、コノハナサクヤヒメ。
桜のように美しい女神で、その名の通り「繁栄と開花」を象徴する存在だった。

政略婚と言えば冷たく聞こえるが、これは完全に「現地の有力株主との資本提携」である。
クシナダヒメを娶ったスサノオと同じく、地元の血を取り込み、統治の正当性を固めた。

国家ブランド戦略

天孫降臨の物語は単なる「孫の冒険譚」ではない。
後の天皇家が「自分たちはアマテラスの直系であり、神器を継承している」と主張するための正統性プロローグ。

つまりこれは、古代日本における国家ブランド戦略だ。
「俺たちが支配者なのは神話的に正しい」というPRが、三種の神器を通して完成している。

こうして「アマテラス本社」から「ニニギ支社長」が派遣され、地上の経営権は天孫へと完全に移った。
次に待っているのは、血統をめぐるさらなる試練。