異世界転生で最低最悪の外れスキル『射精管理』を与えられた私がオス共のシコシコ管理&ご褒美で成り上がり!?

SenY

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シンスペディア皇后コノミ

最愛の息子がシコシコオスガキになってしまうなんて

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 シンスペディア帝国。
 かつてアステル王国と呼ばれた我らの国が、その名を改めてから久しい。ユリウスの賢明な統治と、私の「特殊な内助の功」により、帝国はかつてないほどの勢いで版図を広げ、その領土は、もはや長年人類の脅威とされてきた魔王軍の支配領域すら凌駕していた。
 いよいよ、人類史上初となる、魔王討伐の偉業達成にも、帝都中が期待に沸き立っている。私もまた、皇妃として前線を慰問し、兵士たちを鼓舞する(そして、希望者には個別にご褒美を与える)日々を送っていた。

 そんな目まぐるしい日々の中、私は久方ぶりに帝都へと帰還していた。
 目的はただ一つ。愛する息子、アレクシオスが、十歳の誕生日を迎えるのに合わせて執り行われる、彼の立太子の儀式のためだ。

 儀式当日、大聖堂は帝国の重鎮たちで埋め尽くされていた。
 色とりどりの旗がはためき、荘厳なパイプオルガンの音色が、高い天井に響き渡る。その中央、緋色の絨毯が敷かれた通路を、アレクシオスは、まだ幼さの残る顔を引き締め、しかし堂々とした足取りで歩んでくる。

 私の隣に立つ皇帝ユリウスは、誇らしげな、そして少しばかり寂しげな、複雑な表情で息子の姿を見つめている。
 アレクシオスは、祭壇の前で恭しく膝をつき、大司教から皇太子の証である王冠を授けられた。その小さな頭に、帝国の未来が託された瞬間だった。
 割れんばかりの拍手と歓声。
 私もまた、胸にこみ上げる熱い思いを抑えきれずに、そっと目頭を押さえた。

 あの、トラックに撥ねられた平凡な私が。
 ハズレスキルを嘆き、出家までした私が。
 今、この世界で最も強大な帝国の皇妃として、我が子の立太子を見届けている。人生とは、本当に、何が起こるか分からないものだ。

 儀式が終わり、祝賀の宴が始まった。
 アレクシオスは、少し緊張しながらも、挨拶に訪れる貴族たちに、立派に皇太子としての応対をしている。その姿に、私は目を細めた。
「コノミ」
 ユリウスが、私の肩を優しく抱き寄せる。
「君がいてくれたから、今の私と、この国がある。そして、あの子がいる。心から感謝しているよ」
「私の方こそ、あなたと出会えて幸せよ、ユリウス」
 私たちは、見つめ合い、穏やかに微笑み合った。
 これ以上の幸福はない。私は、心の底からそう思った。

 宴もたけなわの頃、アレクシオスが私の元へ駆け寄ってきた。
「母上!」
「まあ、アレク。どうしたの?」
「少し、お話がしたくて」
 彼は、少し照れたような、しかし真剣な眼差しで私を見上げている。ユリウスは、「普段なかなか会えない母に甘えるのもいいだろう」と、にこやかに席を外した。

 二人きりになったバルコニーで、アレクシオスは、少し言いにくそうに口を開いた。
「母上は……その、とても特別な力をお持ちだと、父上から伺いました」
「ええ……そうね」
 いつか、話さなければならないと思っていたことだ。
「その力で、父上を助け、この帝国を築き上げたと」
「ええ」
「僕は……僕は、母上のような特別な力を持っていません。父上のような、天賦の才もありません。そんな僕が、この大きな帝国の、次の皇帝になれるのでしょうか。時々、とても不安になるんです」

 十歳の少年が抱えるには、あまりにも重いプレッシャー。私は、愛しい息子の頭を優しく撫でた。
「アレク。力や才能だけが、王の資質ではないわ。大切なのは、民を愛し、国を思う、その心よ。あなたには、その一番大切なものがある。だから、何も心配いらないわ」
「……はい、母上」
 私の言葉に、アレクシオスは少しだけ、安心したような表情を見せた。
 その、幼い横顔を見つめながら、私は、この子の未来が、どうか幸多きものであるようにと、心から願った。

 この、完璧な一日。完璧な幸福。
 それが、崩れ去る前触れなど、どこにも見当たらなかった。
 少なくとも、この時の私には。

 立太子の儀式も無事に終わり、私は向こう一ヶ月ほど、帝都でゆっくりと休息を取る予定だった。
 前線の慰問や占領地の視察といった皇妃としての公務はしばらく忘れ、母親としての時間を満喫するつもりだった。十歳になったアレクシオスと、そして五つになる愛らしい娘、リリディアンナと共に過ごす、穏やかな日々。それこそが、今の私が何よりも望むものだった。

 だが、その穏やかな期待は、すぐに小さな影に覆われ始める。
「皇妃陛下。申し上げにくいのですが……」
 アレクシオスの家庭教師を務める老学者が、困惑した様子で私に報告してきた。
「近頃、アレクシオス皇太子殿下は、どうも勉学に身が入っておられないご様子です。授業中も、明らかに集中力を欠いておいでで……」
 続いて、近衛騎士団長の地位を退いて現役を引退し、アレクの剣術の師範となったアランからも、同様の報告が寄せられた。
「陛下。アレクの奴、最近どうもおかしいんです。稽古中にぼーっとしたり、前はあんなに熱心だったのに、どこか上の空で。何か、他に気を取られているとしか思えません」

 幼い頃から、驚くほど真面目で、何事にも一生懸命だったあのアレクが、一体なぜ?
 母親として、私の胸に、じわりと不安が広がっていく。反抗期にしては少し早い気もするし、何か悩み事でもあるのだろうか。それとなく話を聞いてみようかと思案する日々が続いた。

 そして、運命の夜が訪れる。
 リリディアンナの部屋に、おやすみのキスをしに行った時のことだった。ベッドの上で、侍女に絵本を読んでもらっていたリリィは、私を見つけるとパタパタと駆け寄ってきた。
「母様!」
「どうしたの、リリィ。もう寝る時間よ」
 私が娘の柔らかな髪を撫でると、彼女は少し声を潜め、秘密を打ち明けるような顔で私に囁いた。
「ねえ、母様。最近、お兄ちゃん、とってもへんなの」
「お兄ちゃんが?」
「うん。このあいだね、お兄ちゃんのお部屋に遊びに行こうとしたら、鍵がかかってたの。だからドアの隙間から覗いてみたらね……」

 リリィは、少し顔をしかめ、思い出すのも嫌だというように続けた。
「お兄ちゃん、ベッドの上で、なんだか苦しそうに『ん……っ、んー……』って変な声を出してた。それでね、それでね!」

 娘は、どこで覚えてきたのか、その言葉を、無邪気な非難の響きを込めて、はっきりと私の耳に叩きつけた。

「ぴゅーっ♡ って、白いのをいっぱい出してたの! 最近、お兄ちゃんはお部屋に隠れてシコシコしてばっかりなんだよ! エッチ! 超気持ち悪い!」

 ―――っ!

 私の思考が、完全に停止した。
 世界から、音が消える。
 シコシコ。
 その言葉は、私の人生を根底から変え、私の運命を捻じ曲げ、そして、この帝国の礎にすらなった、呪いであり、祝福でもある言葉だ。
 その言葉が、今、私の最愛の娘の口から、私の最愛の息子に向けて、放たれた。

 いや、待ちなさい。落ち着くのよ、コノミ。

 シコシコは、別に悪いことではない。
 それは分かっている。年齢的に、少し早い方かもしれないけれど、男の子なら誰だって通る道だということくらい、私も知っている。だから、本来なら、母親として見て見ぬフリをしてあげるのが、一番正しい対応なのだろう。

 しかし、勉強や剣術の稽古にまで支障が出ているとなると、話が少し変わってくる。
 次期皇帝となるべき人間が、自慰に耽溺して務めを疎かにしている。これを、果たして放置していいものなのだろうか。私の胸中は、母親としての愛情と、皇妃としての責任感の間で、激しく揺れ動いていた。
 アレクにさりげなく「最近、何か悩み事はないの?」「好きな子はできた?」などと探りを入れてみるが、彼は「何でもないよ、母上!」「好きな子なんていないよ!」と、無邪気な笑顔を返すばかり。もう、母親に対して、プライベートな内心の秘密を隠すくらいは、平気でできる年齢なのだ。その成長が、今はただ、もどかしかった。

 そんな風に一人で悩んでいたある日、私の元をゴードンが訪ねてきた。
 すっかり帝国の宮廷官僚として板についた彼は、少し緊張した、しかし喜びを隠しきれない様子で、私に一枚の招待状を差し出した。
「コノミ様。ご報告が……。私、結婚することが決まりました」
「まあ、ゴードン! 本当に!?」
 相手は、王立工廠に勤めるドワーフの女性だという。頑固だが腕は確かで、そして何より、ゴードンの誠実さに惹かれたのだそうだ。
 男性しかおらず、知性も言語能力も低く、異種族の女性を犯すことでのみ繁殖するのが基本とされるゴブリンという種族。そんな彼らが、双方の合意に基づいた「結婚」をするなど、極めて稀な、歴史的な事例と言っていい。
 だが、ゴブリンとしては例外的に高い知性を持つ、このゴードンだからこそ、それが可能だったのだ。

「おめでとう! 本当におめでとう、ゴードン!」
 私は、友人として、心からの祝福を伝えた。
「もちろん、結婚式には必ず出席させてもらうわ。何か欲しいものがあったら、遠慮なく言ってちょうだい」
「ありがとうございます、コノミ様……」
 ゴードンは、感極まったように頭を下げる。だが、その表情には、喜びだけでなく、一抹の不安が影を落としていた。

「ただ……一つだけ、不安なことがあるんです」
 彼は、慎重に言葉を選びながら、悩みを打ち明けた。
「俺……子供を作っても、大丈夫なんでしょうか」

 ゴブリンの種から生まれた子は、母親がどのような種族であれ、必ずゴブリンとして生まれてくる。それは、この世界の法則だ。彼の妻となるドワーフの女性も、そのことは承知の上で結婚を決めたはずだ。
 だが、ゴードンの悩みは、もっと深いところにあった。

「俺は、幸運にも『普通のゴブリン』じゃなかったから、こうして言葉を覚え、社会の中で生活できて、結婚まですることができました。でも……もし、生まれてくる息子が、言葉も通じなくて、理性もなく、ただ本能のままに自慰にふけるだけの、『普通のシコシコゴブリン』として生まれてきたら……」
 彼の声は、震えていた。
「そうなってしまったら、その子は、この人間社会で生きていくことはできない。妻も、きっと深く悲しむでしょう。そして俺は……俺は、自分の息子を、かつての俺のように、蔑まれ、疎まれる存在として、この世に生み出してしまっていいのか……。それが、怖いんです」

 ゴードンの告白は、私の胸に重く突き刺さった。
 それは、私がいま、アレクシオスのことで抱えている悩みと、奇妙な形で共鳴していたからだ。
 自分の子供が、自分のコントロールの及ばない「本能」に支配されてしまうかもしれない、という恐怖。
 そして、その子の人生を、親として、どう導いてやるべきなのか、という問い。
 私は、友人の切実な悩みに、何と答えてやればいいのか、言葉を見つけられずにいた。

 ゴードンの切実な悩みに、私はすぐには答えを返せなかった。だが、彼の話を聞いているうちに、私の頭の中に、一つの大胆な、そして少しばかり突飛なアイデアが浮かび上がった。
 それは、彼自身の悩みを解決するだけでなく、私とアレクシオスの問題を解決する、一石二鳥の妙案かもしれない。

「ゴードン」
 私は、意を決して彼に提案した。
「あなたのその悩みを、そして私の悩みをも解決するために、あなたに一つ、重要な役目を任せたいのです」
「役目、でございますか?」
「ええ。皇太子、アレクシオスの『教育係』になってもらいたいの」
「私が、皇太子殿下の……?」
 何をとんちんかんな、という顔をするゴードンに、私は真剣な眼差しで続ける。
「ええ。学問や剣術ではありません。あなたにしかできない、特別な教育です。……『性教育』を、あなたに任せたい」

 今、シコシコしてばかりな息子に悩む母親である私。
 今後の未来、シコシコしてばかりな息子が産まれる可能性に悩む父親候補であるゴードン。

 もしもゴードンがアレクに対して同性の『兄貴分』として性教育を行ってくれれば。
 彼がいかに欲望のままにシコシコを続けて女性を見境なく妊娠させたがる厄介な本能を克服したかを、アレクにフィードバックし、彼にシコシコ以外の価値観を教えてくれれば。
 アレクはオナニー依存から抜け出せるかもしれないし、ゴードンだってアレクと接する教育経験を将来産まれるであろう自分の息子に対して活かせるかもしれない。
 そう考えたのだ。

 こうして、帝国史上、最も異例な人事が行われた。
 最初は戸惑っていたアレクシオスも、自分と同じ「悩み」を経験し、それを乗り越えてきたゴードンの存在に、次第に心を開いていった。
 ゴードンは、自らの経験――いかにして本能と理性を両立させるか、過度な耽溺がいかに心身を蝕むか――を、時に真面目に、時にユーモアを交えて、アレクに語って聞かせた。やがて二人の間には、師弟であり、友人であり、そして「シコシコの先輩後輩」でもあるような、奇妙な絆が芽生えていく。
 男同士のぶっちゃけトークで、二人がどんな会話をしているのか。
「突っ込んだ詳細については、お母様といえどご報告はできませんが、ご安心ください」とゴードンは口を濁す。
 だが、彼になら任せても大丈夫だろう。そんな確信があった。

 やがて私が期待した通り、アレクシオスの成績や稽古への集中力は、徐々にかつての輝きを取り戻していった。
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