女の子同士で気持ちよくなっちゃった私達…

SenY

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本編

第十三章:創作と現実の境界線、あるいはヤンキーの純情な暴走

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 放課後の教室には、独特の匂いがある。
 チョークの粉っぽさと、埃の匂い。そして、西日に焼かれた木の机の匂い。
 私は、その静寂が好きだった。図書委員の当番を終え、誰もいなくなった教室の隅、自分の席に戻って秘密のノートを開く瞬間が、私――水野(みずの)栞(しおり)にとって、一日で最も心安らぐ時間だったからだ。

 私は、いわゆる「文芸少女」というやつだ。
 眼鏡におさげ、休み時間は図書室に入り浸り、太宰や芥川を愛読している……というのは表向きの顔。
 このキャンパスノートの中に広がっているのは、純文学とは程遠い、禁断の花園だ。

 『百合』。
 それも、ただ手をつないで赤面するようなプラトニックなものではない。
 肌と肌が擦れ合い、汗と蜜が混ざり合う、濃厚でドロドロとした官能小説。それが、私の真の創作活動だった。

 カリカリ、とシャープペンシルを走らせる。
 今日のヒロインは、真面目な委員長と、クラスの不良少女。
 正反対の二人が、放課後の教室で反発し合いながらも、抗えない性衝動に身を焦がす……そんな妄想を書き殴っていた、その時だった。

 ガララッ――!

 乱暴に引き戸が開く音がして、私は心臓が口から飛び出るかと思うほど驚いた。

「あー、マジだりぃ。スマホ忘れたし」

 入ってきたのは、このクラスで一番関わりたくない人物――赤城(あかぎ)レイナだった。
 金髪に染めた髪、極端に短くしたスカート、緩めたリボン。そして、人を射殺せそうな鋭い目つき。
 クラスのヒエラルキー最上位に君臨するヤンキー女子だ。

「……あ」

 目が合ってしまった。
 私は慌ててノートを隠そうとしたけれど、その挙動不審さが逆に彼女の気を引いてしまったらしい。
 レイナがコツコツとローファーの音を響かせて、私の席まで歩いてくる。

「おい、地味子。何隠した?」
「な、なにも……ただの、勉強のノートで……」
「ふーん? 勉強熱心だねぇ。見せてみろよ」

 彼女の手が伸びる。
 ダメ。それだけは見られたら死ぬ。社会的に死ぬ。
 私は必死に抵抗しようとしたけれど、喧嘩慣れしている彼女の力には敵わなかった。
 パッ、とノートが奪われる。

「あ……っ! か、返して……っ!」
「うるせーな。……ん? なんだこれ、小説?」

 レイナがパラパラとページをめくる。
 西日が彼女の横顔を照らし、金髪がキラキラと光る。その美しい横顔に見とれている場合じゃない。
 彼女の視線が、あるページで止まった。
 そこは、ちょうど私が一番気合を入れて書いていた、「濡れ場」のシーンだった。

「……『レイカは、震えるシオリのスカートの中に手を滑り込ませた』……?」

 レイナが声に出して読み上げた瞬間、私の顔から火が噴き出した。
 よりにもよって、登場人物の名前を、自分たち(レイナとシオリ)をもじった名前にしていたことが、最悪の形で露見してしまったのだ。

「『やだ、レイカ、そこは……』『うるせえ、こんなに濡らしてんじゃねえか』……『ジュプ、と卑猥な水音が響き……』」
「や、やめてぇっ! 読まないでっ! お願いだからぁっ!」

 私は耳を塞いでうずくまった。
 終わった。明日から学校に来られない。いじめられる。晒し者にされる。
 絶望で涙目になっている私を見下ろして、レイナはニヤリと口角を上げた。

「へえ……。お前、普段こんな真面目そうな顔して、頭ん中はこんなドスケベなこと考えてんだ?」
「うぅ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
「謝るなよ。……これ、モデルはあたしだろ?」

 ドンッ!
 レイナが私の机に手をつき、顔を近づけてきた。
 ミントのガムと、甘い香水の匂いが鼻孔をくすぐる。
 至近距離で見る彼女の瞳は、怒っているというより、どこか獲物を見つけた肉食獣のように楽しげに輝いていた。

「あたしを使って、こんなオナニーみたいな小説書いてたんだ? いい度胸じゃん」
「ち、ちが……これは、ただの妄想で……」
「妄想ねぇ。……じゃあさ、確かめてみようか」

 レイナの手が、私のあごをクイッと持ち上げる。

「この小説に書いてあること、本当にお前がシて欲しいことなんだろ? だったら、あたしが叶えてやるよ」
「え……?」

 理解が追いつかないまま、私は机の上に押し倒された。
 ガタッ、と机が揺れ、筆箱が床に落ちる。
 夕日の逆光で、レイナの顔が影になり、表情が見えない。
 怖い。殴られるかもしれない。
 そう思った瞬間、私の唇は柔らかい感触によって塞がれていた。

 チュッ……♥

 殴られたわけじゃなかった。キス、されたのだ。
 それも、小説に書いたような乱暴なキスではなく、意外なほど不器用で、たどたどしいキス。

「んぐっ……!? ぁ……」
「……唇、やわらけーな。お前」

 唇を離したレイナが、少し顔を赤らめて呟く。
 その反応に、私の恐怖心は一瞬で吹き飛んだ。
 ヤンキーで、怖くて、乱暴者だと思っていた彼女が、キス一回でこんなに動揺している。
 そのギャップが、私の「百合脳」を強烈に刺激した。

「小説だとさ、もっと激しく舌入れてたよな? ……こうか?」

 レイナが再び顔を寄せてくる。
 今度は、強引にこじ開けるように。
 ぬるりとした舌が侵入してくる。

「んっ! ふぁ、んぅっ……!♥」
「ん、ちゅ……れろ……っ、お前、舌、逃げんな……っ♥」

 レロレロ……チュプッ……♥
 口の中で舌が絡み合う感覚。
 私が今まで文字だけで描写してきた「熱」とは比べ物にならない。
 生々しい体温。唾液の味。息継ぎの荒い呼吸音。
 すべてがリアルで、圧倒的だった。

「はぁ……っ、お前、小説通りだな。キスだけで腰砕けそうになってんじゃん」
「だって……こんなの、はじめて、だから……っ」
「初めて? 小説じゃ経験豊富なビッチみたいに書かれてたけど?」
「あれは、創作で……っ、私は、処女です……っ」

 私が涙目で訴えると、レイナは「マジかよ」と吹き出し、それから愛おしそうに私の頭を撫でた。

「かわいいとこあんだな。……じゃあ、続きも小説通りにやってやる」

 レイナの手が、私の制服のスカートの中に滑り込んでくる。
 ひんやりとした指先が、太ももの内側をなぞる。
 ゾワッ♥ ゾワワッ♥
 活字にするだけなら簡単だった描写が、現実になるとこんなにも刺激的で、耐え難いものだなんて知らなかった。

「『レイカの指は、シオリの熱く湿った秘部に触れた』……だっけ?」
「や、言わないで……恥ずかしい……っ♥」
「事実だろ? ほら、触るぞ」

 レイナの指が、ショーツ越しに私のそこを愛撫する。
 既に下着はぐっしょりと濡れていて、レイナの指が動くたびに、クチュ……♥ という音が教室内で反響した。

「うわ、マジで濡れてる。……お前、あたしにこんなことされて、興奮してんの?」
「だ、だって……レイナさんが……っ♥」
「レイナでいいよ。……ほら、足開け」

 私は言われるままに、机の上でM字開脚を晒した。
 夕日に照らされた私の秘部は、恥ずかしいほど赤く充血し、蜜を垂らしている。
 レイナはそれをまじまじと見つめ、喉をゴクリと鳴らした。

「……すげえ。エロ漫画みたい」
「見ないでぇ……っ、恥ずかしいっ……!」
「見せろよ。お前の書いた小説より、実物のほうが百倍エロいじゃん」

 レイナが、濡れた下着をずらし、直接その場所に触れる。
 そして、躊躇なく中指を突き入れた。

「ひゃああっ!?♥」

 声にならない悲鳴。
 ズチュッ……!♥
 異物が入ってくる感覚。でも、それは不快なものではなく、空っぽだった場所が満たされるような充足感。

「きつ……。処女ってマジだったんだな。……でも、中はトロトロじゃん」
「ああっ、そこっ、指、動かないでぇっ……!♥」
「動かさなきゃ気持ちよくなんねーだろ? ……小説のレイカは、ここをグリグリ攻めてたよな?」

 レイナが意地悪く笑い、中にあるGスポットらしき場所を、指先で招くように刺激した。

「あぎっ!♥ そこっ、それっ、すごいっ……!♥」
「ここか。……お前、ここ触られると弱いんだ?」

 グチュッ、グチュグチュ……♥
 水音が激しくなる。レイナの指使いは、最初はぎこちなかったけれど、私の反応を見ながらどんどん大胆に、そして的確になっていく。
 私の小説を「教科書」にして、彼女は私の身体を攻略しているのだ。

「ああっ、ああっ! レイナっ、レイナっ! 気持ちいいっ、小説より、ずっと気持ちいいぃぃっ!!♥」
「だろ? 現実はもっとすげーんだよ。……イく時は、あたしの名前呼べよ?」

 レイナがもう片方の手で、クリトリスをコリコリと弾く。
 中と外、同時の責め苦。
 私のキャパシティはとっくに限界を超えていた。

「くるっ、きちゃうっ! レイナっ、好きっ! レイナぁぁぁッ!!♥」
「おう、イケっ! シオリッ!!♥」

 ズポッ、ズチュチュッ!!♥
 激しい出し入れと共に、私は机の縁を掴んで絶叫した。
 脳髄が白く弾け、全身が痙攣する。
 今まで妄想の中だけで処理していた性欲が、本物の愛撫によって解放され、魂ごと持っていかれるような強烈なオーガズムとなって炸裂した。

「あぁぁぁぁぁぁぁんッッ!!!♥♥」

 キュウゥッ……♥
 中が収縮し、レイナの指を締め付ける。
 私はガクガクと震えながら、レイナの胸に崩れ落ちた。

 ***

 放課後のチャイムが、遠くで鳴っている。
 教室は完全に夕闇に包まれていた。
 私は制服を乱したまま、レイナの肩に寄りかかり、荒い息を整えていた。

「……はぁ、はぁ……。ヤバかったな」

 レイナが、私の汗ばんだ額をハンカチで拭いてくれる。
 その手つきは優しくて、やっぱり小説の中の暴君とは違っていた。

「……ごめんね、勝手にモデルにして」
「いいよ別に。……気持ちよかったし」

 レイナが照れくさそうにそっぽを向く。
 その耳が真っ赤になっているのを見て、私は胸がキュンとした。
 私の書いた「百合」は妄想だったけれど、ここにいるレイナは本物だ。そして、本物の彼女は、私の想像よりもずっと可愛くて、エッチで、優しい。

「……ねえ、シオリ」
「はい」
「そのノートの続き、書けよ」
「えっ……?」
「でも、内容は変えろよ。……これからは、あたしらが実際にやったことだけ書くこと。……いいな?」

 レイナが私の耳元で囁き、耳朶を甘噛みした。
 ゾクリとした予感と、期待。
 それはつまり、これからもこういうことをする、という宣言だ。

「……はい。取材、よろしくお願いします……レイナさん♥」
「おう。……次は保健室な。あそこのベッド、小説で使いたかったんだろ?」

 ヤンキー女子の彼女は、ニカッと悪戯っぽく笑った。
 私の創作活動は、今日から「ノンフィクション」に変わる。
 文芸少女とヤンキー女子。
 現実は小説より奇なり、そして小説よりもずっと、甘く淫らな物語が幕を開けたのだった。

(第十三章 完)
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