真里亞

琥太朗

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真里亞

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真里亞が嫁いできたのは5年前。23の時だった。
おれとは飲み屋で知り合い、意気投合してホテルにお持ち帰りしてから数ヶ月。トントンと結婚となった。サラリーマンだった俺は27才の営業マン。そんなに優秀でも無ければ欠陥社員でも無い。中クラスの社員で目立たない存在であったから上司からも目をつけられる事も無ければ女子社員にも人気がある訳もなく、疎まれる存在でもない。
だから結婚したと言うと周りが唖然としたくらいだった。
「えー?お前が?」
「結婚願望あったんだ?」

とか言われ、まぁまぁ注目を浴びた。そして以前から親と暮らす実家から通っていたから結婚後も実家暮らしをする事が女子社員から批判の的になった。
「何でですか?奥さんが可哀想です。」
「どんな優しいお義母様でも入ってきたお嫁さんには厳しく当たりますよ!」
「新婚のうちは2人で暮らした方がいいですよ」

等等なアドバイスをくれる。

でも、実家暮らししかも母親と実妹が暮らす家なのにそこで良いと言ったのは真里亞からで、無理はするなと言ったが、彼女は頑として同居を選んだ。

最初は母や妹は真里亞のやる事をじっと見ていた。そのうち自分に気に食わない事が出てくると一言二言が出始める。
真里亞は
「何でも言ってくれた方が助かりますから、よろしくお願いします」

と取り合わない。それが彼女達には気に食わなくなってきた。
何かにつけて小言を言う。

掃除が行き届いていない、おかずの味付けが濃い等等である。
「いい加減しろ!真里亞は一緒懸命にやっているじゃないか。亜紀(実妹)!お前は家では家事もせずにいるのに何言ってるんだ!」
「私だって外で仕事してるのよ。帰ってまで家事なんてできるわけないじゃない!」
「真里亞だってお袋の手伝いで仕事をしてるだよ?同じじゃないか?」
「真里亞さんはわたしの手伝いだからそんなに仕事なんてしてないわよ、外に出て来るのも遅いし」
「掃除、洗濯だってあるだろう?遅くなるのもしょうがないだろう!」
「私が嫁いだ頃は、皆んなが起きる前に掃除洗濯は終わらしたわよ。」
「最初真里亞がしてたら、そんな事したらうるさいと言ったのはお袋や亜紀だろうが?」
「それは・・・昔は手洗いや箒でやってたからよ。」
「それを今、やれって言うのか? お袋!そりゃイジメだそ!嫁イビリ!亜紀もそうだ!小姑の嫁イビリだからな!」
「そりゃお前、言い過ぎじゃないの?私達はそこまで真里亞さんに無理強いするつもりで言っているわけじゃないけど・・・」

典型的なイビリをやって、攻撃されたらシオらしくみせ、反省する態度だけ見せる。お袋や妹の行動だ。

「あなた、いいの。私も至らない所があるんだから、そこまでにして」
「真里亞さんだってそういっているわけだし、この辺でいいでしょう!」

分が悪いと見た亜紀はサッサと自室へ入った。
お袋も自分は悪くないといいたい目つきで自室ね入って行った。
「真里亞、何もこんな事で我慢する必要は無いからね。」
「大丈夫よ。こんな事でへこたれませんから。」

余りにも露骨な嫌がらせに何も動じない、真里亞は逞しい奴なんだ。 
それでも、多少母と妹の嫌がらせは続いていた。


 そんなある日の晩に見知らぬ夫婦が家に訪ねて来た。
O市にあるT建設会社の営業係長と奥さんだという。T建設会社と言えば、亜紀が勤めている会社な訳で不倫の噂はこの係長か?

「亜紀さん。あなた、私の夫と不倫関係にありますよね?」
「いいえ、そのような事はありませんが。何かの間違いではないですか?」
「ではこれ、見てもらいます。」

奥さんが出したのは興信所が撮った亜紀と係長がホテルに入る所と出てくる所等昼夜問わず逢瀬を重ねている写真と事細かくいつどこで会っているかを書いたレポートだ。写真だけではない。車の中の会話も録音された物、車の足取りを記録した物など、2人が言い訳出来ないくらいの資料だ。
「これだけの証拠があります。まだ否定しますか?」
「私は知りません!この写真とかはあなたの捏造じゃないですか?私は係長とは不倫はしてません! そりゃ、たまにはお茶くらいは・・・」
「夫の下半身のお世話もでしょう?」
「だって係長はあなたとはうまくいってないって!だから・・・」
「だから、私の夫とホテルに行ったんですか?」
「わ、私だって係長に騙されたのよ!」
「亜紀くん!もうよそう。私は全て妻に話したんだ。そして妻と離婚して会社も辞める事にした。」
「そして貴女にはこの不倫の代償を支払っていただきます。そして金輪際、この男とは会わないと約束していただきます。それとも、裁判で戦いますか?私の兄は弁護士です。勝ち目は有りますか?」

亜紀はグウの音も出ず、ただ係長の奥さんが出した念書にサインをした。

係長等が帰った後、お袋が亜紀を酷く叱った。
「亜紀!何をやっているんです?私は近所の笑い物になるじゃないですか。しかも200万円の賠償金だなんて。あなたもあの会社はお辞めなさい!そしてこの家からも出て行きなさい!」
数日後亜紀は家を出て全く違う所に居を持った。
200万円の賠償金はお袋が貯めてあった貯金を取り崩し工面したようだ。
それからと言うもの、お袋は真里亞に一層強く当たり散らし俺を取り入れようと真里亞の悪い所をネチネチと言うようになった。俺はそんなものに関心を持たず、真里亞を庇ってお袋とは対立していた。
真里亞は相変わらずの態度で接していた。その半年後、母親が投資詐欺に遭って300万円を失った。母の貯金は底を付きすっからかんになった上にまだ株で儲けようと100万円を貸してくれと懇願してきた。

「投資詐欺に遭ってまだ目が覚めていないのか?」
「いや、今度は大丈夫だから。ちゃんとした所だから。それで儲けたら全て返すから。」

俺は断固反対したが、真里亞は自分の通帳と印鑑を母の前に渡すと
「これは私が貯めたお金と死んだ実母が残したもので200万円あります。使ってください。ただし、これはお貸しするものですよ。ちゃんと返していただきますからね。そしてこちらに借用書があります。形式的なものですが、こちらに署名と捺印をお願いします。」
「息子と違って良い嫁だわ!これで儲けられるから。大丈夫だよー、ちゃんと帰してあげるわよ、心配しないで!」
母は頭も下げず、署名、捺印をすると真里亞の通帳と印鑑を掻っ攫うように懐に入れた。
母はしばらくは真里亞に気兼ねしてか、悪態をつく事はしなかった。 
 しかし多少株が儲かり始めたのか、横柄な態度になってきた。

「株で儲けたなら、真里亞に少しずつでも返しておけよ。」
「今がいい時なんだから、返したらケチが付くわよ!今はドンドン攻める時なんだから、嫁に返すなんて勿体なくて出来ないわよ!」

しかしその攻めも数ヶ月で終わった。暴落に転落した株価で逆に500万円の赤字を生んだ。
俺の叱責にグウの根も出ない母はすっかり元気を失い、部屋に引きこもってしまった。
数日後、母は裏の小屋で首を吊ってしまった。



 亜紀は俺や真里亞を責めたてが、事の経緯や借用書、母がこまめに記録していた事で不満ながらも納得はした。
「お母さん、生命保険入っていたよね?それはおりるのかなぁ?」
「いや、保険も勝手に解約して株の赤字に埋めていた様だ。だから何も無いよ。」
葬儀の後、亜紀や真里亞と3人で母親の部屋を片付けてみたが、着物や指輪や装飾品等は全て無くなっていて、ゴミで処分出来る物ばかりしか残っていなかった。
「お義母さん、このひと月くらい荷物を持って出る事がありましたから、もしかしたら着物とか、指輪とか質屋に持って行ったんでしょうか」
「分かっていたなら何故アンタが止めなかったのよ!」
「お義母さん、見られたくなかった様子で隠れるように出て行ってたの、だから・・・」
「そりゃ、真里亞が言っても聞かないだろうよ。真里亞に200万円借りてる訳だし、姑が嫁に弱みを見せるのは嫌だったろうしな。」

妹には不倫の賠償金が遺産相続の分として納得させた。まぁ欲しいものが有れば持って行ってくれとは言ったが何も持ってはいかなかった。

赤字で出来た借金は弁護士を通じて俺たちや亜紀は相続しない権利を主張し、本人死亡で返済不可となった。


母の四十九日が終わった数日後、
「あなた、少しいいですか?」
「あぁ、いいよ、何か?」
「これ、あなたに預かって頂きたいんです。」
真里亞が出したのは通帳と印鑑。
中には500万円が記帳されている。

「これは?」
「亜紀さんの賠償金300万円、お義母さんの株の元金200万円です。」
「どうしてこの金がここに?」
「亜紀さんの不倫相手の奥さん。実は私と友達なんです。不倫していた時、相談を受けていてそれで。」
「じゃあ株の元金は?」
「株の元金っていうより、投資詐欺のお金ですね。あれもあの奥さんとの共謀です。」
「でも株にもお袋使っていたよな?それは?」
「偽の株投資です。」
「何でそんな事を?」
「・・・これ、私の復讐なんです、あの2人に対しての。」
「えっ?」
「あなたはとても優しくしてくださいました。でもあの2人は違った。朝から晩までずっとイジメられていました。くる日もくる日。だから復讐したんです。」
「だって妹の不倫相手は本物の夫婦だったろう?」
「ええ、夫婦でした。でもあの旦那さん凄い浮気物で夫婦の間は冷めていたんです。『妹さんの賠償金は要らない、旦那の手切れ金だけでいいから』と言う事だったんです。」
「お袋の投資や株は?」
「投資詐欺で終わらせるはずだったのですが、株にまで手を出してしまったのは誤算でした。でもキッパリと辞めさせる為に彼女にもう一芝居うって貰ったんです。でも自殺してしまったのは意外でした。残念です。」
「そうか、僕と結婚して数年、君にはとても辛い思いをさせたね。申し訳なかった。」
私は頭を下げた。

「それからもうひとつお願いがあります。」
真里亞は一枚の紙が机に置かれた。離婚届だ。
「これは・・」
「別れて欲しいんです。」
「何故?」
「妹さんの不倫、お義母さんの詐欺投資。これだけなら私は口を噤んでいたでしょう。でもお義母さんを死に追いやったのは私の罪です。もうあなたと一緒には居られません。」
「そんな事はない。君の責任ではないよ。元はち言えば自業自得なんだから。」
真里亞は首を振る。
「これは私の贖罪。この事をあなたが知った事であなたは悩むわ。私との間にも何らかの歪みが出ます。それはいけない事。」
「・・・でも。」
「ううん、これが一番いいの。署名と捺印はしてあるわ。お互い愛している間に別れた方がいいの。」
「分かった、これ・・・預かる。出すかどうかは俺に任せてくれ。」
「判りました。」

その夜、真里亞は私の布団に入ってきた。
「抱いてくれますか?」
俺は何も言わずにパジャマを脱がした。下着は付けていない。

俺は真里亞の乳房をむしゃぶりつき、乳首を吸いまくった。無心に吸い付き真里亞の中心に俺を突き立てた。
「あぁ!あう!あー!いいッ!」
真里亞も俺の肩を抱きしめ声を上げる。
「もっと!もっと突いて!」
真里亞は何度も絶頂を迎え、俺も数回真里亞の中で果てた。

朝、真里亞の姿が無い。俺が寝ている間に出て行ってしまった。
居間の机に手紙が置いてあった。
所々、字が滲んでいる。

「あなたへ
この様な形で別れる事、申し訳ありません。
あなたはずっと私を支えてくれました、本当に感謝しています。ありがとうございます。

私ね、結婚してすぐに妊娠したの。丁度あなたが長い研修でいなかった時。でもお義母さんや亜紀さんは喜んでくれなかった。逆に疎ましい態度だった。重い荷物を持たせたりして流産したの。それを鼻で笑ってたわ。体が回復しないのにまた、重労働を強いられた。そしてそれが原因で子供が出来にくい体になったみたい。その時から私は復讐しようと決めたの。何故言わかったって?言ったらあなたはめちゃくちゃ2人を責めるでしょうし、あなたが二人に遺恨を残すのは忍びないの。
これは私と生まれて来れなかった子供との復讐なんです。 お義母さんが死んだ事は残念だけど、安堵する自分もいるのね。もう私達を邪魔する人は居ないって。でももう私は子供を産めない。あなたは欲しくて堪らないと思っていたよね?あなたには子供が産める私よりいい人が現れるわ。 だから・・」

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