あ・い・う・え・お

夢=無王吽

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おまけ②『関取っぽい声質の心の声』

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 痛い痛いイタイ!
 なんだこいつは。
 なんでこんな混雑した電車のなかで、こんな強引に移動するんだ?
 え、そこで止まるのかよ? なんなんだよジャマだよウゼェな。
 暑い。ふう、立っているだけで息が切れる。
 えっと、なんだった?
 ああ、こいつだ。
 テメェのせいで暑さが倍に感じるんだよコノヤロウ。
 おい! だから、痛えって!
 なんでそんなグイグイと押すんだよ。
 もうフザケんなよ、疲れてんだよ、こっちはよ。
 あー眠い。
 徹夜明けだからもう、立ったまま寝てしまいそうだ。
 うう、まぶたが閉じる。
 ん? なんだコイツ、なんでそんな風に俺にくっついて、俺のほうを向く?
 え、ちょっと待てよ。まさか、痴漢とかじゃねぇだろうな。
 朝っぱらから男が好きな痴漢なんて、冗談じゃねぇぞ。
 俺は違うからな、やめろよテメェ、ぶっ飛ばすぞ。
 ちっ、なんだよ、こっち向くんじゃねぇよ。
 あっち向いて立てよ、不自然だろそれ。
 なぁんだよその、不満そうな顔はよ。
 あ、あっち向いた。おい。だから痛ぇって!
 でも、そうそう、それでいいんだよ、その体勢が普通だろ。
 ああ、眠い、もう、倒れ、おっと。電車が揺れて、マジで倒れそうになった。
 お、なんだ?
 コイツ、すげー頑張って俺の体重を支えたよな、今。
 おかげでスッ転ばずに済んだ、なんだよ、いいやつじゃんか。
 にしても、眠い、ネム……おっと。
 おお、また支えてくれたか。おまえ、すげぇな。
 俺の半分くらいしか体重なさそうなのに。
 年齢も、たぶん、半分くらいか?
 若くて、なんかシュッとして、もてそうなやつだな。
 頑張れ、若者よ。
 俺は今、掴まるところがないから、振動に耐えられない。
 その調子で支えててくれ。
 おっと、おお、そうそう。おっと。
 おまえ、マジですげぇな。こりゃ楽でいいわ。おっと。


 ──おまけ②・完。
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