2 / 9
これは……生徒の間で流行っていたいわゆる「異世界もの」か?
こんな形で異世界に飛ばされるなんて……2
しおりを挟む
貧血にでもなったかのように視界が真っ白なもので覆われ、意識も薄れていく。あぁ、これが死というものか──。率は達観にも似た目線で、自身の行く末を案じていた。
ほどなくして、身体に何かが触れるのを感じた。ほんのりと温かいこれは人肌か──。蒸れた体臭がほんのり鼻を擽《くすぐ》る。ここがあの世なのか──。重い瞼《まぶた》を恐る恐る上げると──、
「──おっ、ようやくお目覚めか」
「えっ……?」
それが、相手の投げかけた第一声──いや、二言目といったほうが正しいか──。肩に回された浅黒い腕を見て確信した。パソコンをクラッキングしたのも、あのメッセージを送ってきたのもこの青年の仕業と見て間違いない。彼は日焼けした肌に目立つ白い歯を光らせる。
「何度も異世界に信号を送ったんだけど、これがまたなかなか捕まらなくてさ~」
「ははっ……」
そりゃあそうだろう──。ただでさえ算数嫌いが大多数を占めているというのに、あんなごく一部の人間しか喜ばないレベルの問題を出したところでホイホイ釣れるわけがない。己のいた場所を「異世界」と表現するあたり、やはりここは自分のとってのパラレルワールドらしい。傍目には冷静に分析していると思われるかもしれないが、内心は戸惑いと半信半疑の感情でいっぱいだった。
生徒が好きなものとして挙げる代表格であるアニメや漫画、ゲーム──。サクセス・ストーリーやシンデレラ・ストーリー、そしてそれを彩るキャラクターに対する一種の憧れが大いなる共感へとつながる。だからこそ、こういった形で幻想の扉を開くことになるなんて思わなかった。本来ならもっとこうファンタジックで、ハーレムが出てきてみたいな展開が支持されるのだろうが、ここにいるのはムサイおじさん一匹と名も知らない兄ちゃん一人──。まぁ彼にしてみれば、どこの馬の骨とも知れぬオッサンにこんなこと指摘されたくないだろうが──。
皮肉っぽい笑いがこみ上げてきたのも束の間、青年はこちらの肩をバシッと叩いて、
「挨拶が遅れたな。オレはラヴィアフェルズ──このフェアルフタワーを治めている。よろしくなリツ!」
「えっ……?」
どうやら自己紹介の必要はないらしい。いったいいつ、どうやって情報を得たのか──などという疑問を抱くこと自体、このパラレルワールドにおいては野暮以外の何物でもないということか──。圧倒的なアドバンテージを見せつけられ、もはや謎の「な」の字も浮かばない。
「訊かねぇの? なんでここに召喚されたか──」
「あっ……」
相手は相手で「もっと絡んでこい」とでも言わんばかりの口振りである。それはこちらにとっても好都合なことだし、話の潤滑油にもなる──そう思っていたのに、
「まっ、それはこのオレを倒してからだけどな」
「えっ……?」
まさか、この状況下で戦うのか──。率はサッと血の気が引いていくのを感じた。
ほどなくして、身体に何かが触れるのを感じた。ほんのりと温かいこれは人肌か──。蒸れた体臭がほんのり鼻を擽《くすぐ》る。ここがあの世なのか──。重い瞼《まぶた》を恐る恐る上げると──、
「──おっ、ようやくお目覚めか」
「えっ……?」
それが、相手の投げかけた第一声──いや、二言目といったほうが正しいか──。肩に回された浅黒い腕を見て確信した。パソコンをクラッキングしたのも、あのメッセージを送ってきたのもこの青年の仕業と見て間違いない。彼は日焼けした肌に目立つ白い歯を光らせる。
「何度も異世界に信号を送ったんだけど、これがまたなかなか捕まらなくてさ~」
「ははっ……」
そりゃあそうだろう──。ただでさえ算数嫌いが大多数を占めているというのに、あんなごく一部の人間しか喜ばないレベルの問題を出したところでホイホイ釣れるわけがない。己のいた場所を「異世界」と表現するあたり、やはりここは自分のとってのパラレルワールドらしい。傍目には冷静に分析していると思われるかもしれないが、内心は戸惑いと半信半疑の感情でいっぱいだった。
生徒が好きなものとして挙げる代表格であるアニメや漫画、ゲーム──。サクセス・ストーリーやシンデレラ・ストーリー、そしてそれを彩るキャラクターに対する一種の憧れが大いなる共感へとつながる。だからこそ、こういった形で幻想の扉を開くことになるなんて思わなかった。本来ならもっとこうファンタジックで、ハーレムが出てきてみたいな展開が支持されるのだろうが、ここにいるのはムサイおじさん一匹と名も知らない兄ちゃん一人──。まぁ彼にしてみれば、どこの馬の骨とも知れぬオッサンにこんなこと指摘されたくないだろうが──。
皮肉っぽい笑いがこみ上げてきたのも束の間、青年はこちらの肩をバシッと叩いて、
「挨拶が遅れたな。オレはラヴィアフェルズ──このフェアルフタワーを治めている。よろしくなリツ!」
「えっ……?」
どうやら自己紹介の必要はないらしい。いったいいつ、どうやって情報を得たのか──などという疑問を抱くこと自体、このパラレルワールドにおいては野暮以外の何物でもないということか──。圧倒的なアドバンテージを見せつけられ、もはや謎の「な」の字も浮かばない。
「訊かねぇの? なんでここに召喚されたか──」
「あっ……」
相手は相手で「もっと絡んでこい」とでも言わんばかりの口振りである。それはこちらにとっても好都合なことだし、話の潤滑油にもなる──そう思っていたのに、
「まっ、それはこのオレを倒してからだけどな」
「えっ……?」
まさか、この状況下で戦うのか──。率はサッと血の気が引いていくのを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
女神の顔も三度まで?いやいや、その前に腹立ちましたから我慢しません!
渡里あずま
ファンタジー
女神のミスで亡くなった少女。
女神は、その償いに転生させた少女の希望を聞いたが、少女の言い分はエスカレートして。
※
『捨てら令嬢。はずれギフト『キノコ』を理由に家族から追放されましたが、菌の力とおばあちゃん力で快適生活始めます』の前日譚です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる