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これは……生徒の間で流行っていたいわゆる「異世界もの」か?
こんな形で異世界に飛ばされるなんて……4
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「──んじゃ、約束どおり話してやる──と、その前に──」
ボスはぶつぶつと念じ、呪文を唱えた。暗闇に沈んでいたはずの部屋に眩いばかりの光が差し、四方にある重々しいドアもすべて開かれた。背後からは外の景色も見える。なるほど、ここがエントランスホールで、ある種の通せんぼをされていたということらしい。ほどなくして奥から足音が聞こえてきた。
「あっ、やっと出られる。お──い、出られるぞ────!」
号令にも似たその雄叫びが合図だったかのように、戦士らしき恰好の人や魔法使いとおぼしき冒険者が次々と姿を現した。どうやら皆このダンジョンに閉じ込められていたらしい。
彼らが一堂に会したそのタイミングで、ダンジョンの主はリツを抱き寄せて鶴の一声を上げる。
「聞くがいい──! 我が領域をクリアしたのはこのリツという男だ! オレはコイツとともに世界を統一する!」
「……えっ? と、『統一』!?」
どういうことかと問い尋ねる間もなく、わっと沸き起こる歓声の波に飲み込まれた。よくよく考えると不思議なことばかりである。傍観者としてコントローラーを操作していた当時は、「同じ服をずっと着ていて、いつ洗濯しているのだろう?」とか「風呂とかトイレとかどうしているのだろう?」といった突っ込み的疑問のほうが先行していたけれど、文字どおり肌で感じたことでまた新たな要素も加わった。異世界なのに言葉が通じるというのも大概だが、それ以上にお祭りムードで満ち満ちたこの空気はなんだろう。ここの滞在を余儀なくされていたという割にはやけに明るいし、このボスに対してもずいぶんと好意的だ。服従といっても畏怖の念というよりむしろ自ら望んでそうしているような印象すら受ける。
恰好も恰好で不衛生とは程遠く、衣食住に対して難儀をしていたようにも見えない。あれこれと訝《いぶか》しんでいたのも束の間、彼は自身の汗の臭いを嗅がせるように、脇をこちらの顔に押しつけてきた。
「これからよろしくなっ、相棒!」
「なっ……」
もといた世界では過剰なこのスキンシップもまた、歓迎の表れということか──。声援が飛び交うなか、率はぎこちなくも笑顔でダンジョンの主の言葉に答えた。
ボスはぶつぶつと念じ、呪文を唱えた。暗闇に沈んでいたはずの部屋に眩いばかりの光が差し、四方にある重々しいドアもすべて開かれた。背後からは外の景色も見える。なるほど、ここがエントランスホールで、ある種の通せんぼをされていたということらしい。ほどなくして奥から足音が聞こえてきた。
「あっ、やっと出られる。お──い、出られるぞ────!」
号令にも似たその雄叫びが合図だったかのように、戦士らしき恰好の人や魔法使いとおぼしき冒険者が次々と姿を現した。どうやら皆このダンジョンに閉じ込められていたらしい。
彼らが一堂に会したそのタイミングで、ダンジョンの主はリツを抱き寄せて鶴の一声を上げる。
「聞くがいい──! 我が領域をクリアしたのはこのリツという男だ! オレはコイツとともに世界を統一する!」
「……えっ? と、『統一』!?」
どういうことかと問い尋ねる間もなく、わっと沸き起こる歓声の波に飲み込まれた。よくよく考えると不思議なことばかりである。傍観者としてコントローラーを操作していた当時は、「同じ服をずっと着ていて、いつ洗濯しているのだろう?」とか「風呂とかトイレとかどうしているのだろう?」といった突っ込み的疑問のほうが先行していたけれど、文字どおり肌で感じたことでまた新たな要素も加わった。異世界なのに言葉が通じるというのも大概だが、それ以上にお祭りムードで満ち満ちたこの空気はなんだろう。ここの滞在を余儀なくされていたという割にはやけに明るいし、このボスに対してもずいぶんと好意的だ。服従といっても畏怖の念というよりむしろ自ら望んでそうしているような印象すら受ける。
恰好も恰好で不衛生とは程遠く、衣食住に対して難儀をしていたようにも見えない。あれこれと訝《いぶか》しんでいたのも束の間、彼は自身の汗の臭いを嗅がせるように、脇をこちらの顔に押しつけてきた。
「これからよろしくなっ、相棒!」
「なっ……」
もといた世界では過剰なこのスキンシップもまた、歓迎の表れということか──。声援が飛び交うなか、率はぎこちなくも笑顔でダンジョンの主の言葉に答えた。
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