君の肌

神通百力

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君の肌

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 君ってさ、いつも厚着をしているよね。
 季節を問わずに服を着こんでいるね。

 いつも服がひんやりしているから気になるんだよね。
 服が湿っている点も気になっているんだよね。

 僕は温かすぎるって? まるで炎のようだって? まあ、僕は炎を司っていると言っても過言ではないからね。
 
 それにどこを見つめたらいいのか分からないだって? 君の好きなように見つめればいいさ。どの僕も君を見ているからね。

 獣っぽいところは良いだって? 獣なんだけどね。君は吐いた息が白くて美しいのが良いね。息が冷たすぎるのが難点だけどね。

 次のデートの時には厚着ではなく、薄着で来てほしいな。どうしてかというと君の肌を覚えていないからだよ。厚着姿の君ばかり見ているからね。

 薄着姿なら露出も多いし、君の肌がどんなだったかひと目で分かるからね。
 どうしてそんなに怒っているんだい? 本当に愛しているのかだって? もちろん愛しているに決まっているじゃないか。
 
 肌を覚えていないのにだって?
 だからね、君の肌を思い出すために、次のデートの時は薄着で来てほしいんだ。

 今からもう一度デートしようだって? うん、別にそれでもいいよ。
 それじゃ、薄着になってくれるかい?

 ああ、そんな肌をしていたね。
 すっかり忘れていたよ。

 やっぱり君はそっちの方が似合っているね。


 ねぇ、僕の愛しの雪女さん。

 ――えぇ、私の愛するケルベロスさん。
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