黒き死神が笑う日

神通百力

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デビルイレイザー

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「初めまして。今日からここの配属になった伊賀来風月いがらいふうげつです。よろしくお願いします」
 俺は椅子に座っている人たちに頭を下げた。俺はとある研究所で開発された薬により、『悪魔化』した者を抹殺する特殊部隊『デビルイレイザー』に配属されることになった。
 目の前の一際小柄な女性が立ち上がった。
「私は隊長の神帝憑依しんていひょういです」
 隊長は拳銃と実弾を渡してきた。それを受け取る。
「どの部位を狙っても傷をつけることは可能ですが、なるべく心臓を狙ってください。そこが弱点ですから。それと噛まれてしまうと『悪魔化』してしまうので、くれぐれも注意してください。それから『悪魔化』した者が元人間だということは忘れて、非情に徹してください。でないと殺られます」
「分かりました」
 俺はしっかりと頷いた。その時、ジリリリ、と警報が鳴り響いた。
「『悪魔化』した者が現れたようですね。現場に向かいましょう。行きますよ」
『はい、隊長!』
 俺たち部隊は車に乗り込み、現場へと向かった。

 ☆☆

「グルルルルルル」
 現場に到着して最初に目に飛び込んできたのは、数十人の『悪魔化』した者が人間の顔を真っ二つに切り裂き、中を開いて脳をグチュリと握りつぶしている光景だった。
 口が耳まで裂け、頭から二本の鋭い角が生えていた。背中からは四本の翼が生えており、爪が鋭く全体的に黒かった。日焼けでもそこまでならねえよってぐらい黒かった。人間の要素が見受けられない。悪魔としか言いようがなかった。
「これが『悪魔化』した者ですか」
「ええ、そうです。心苦しいですが、抹殺しましょう」
 隊長はそう言って、拳銃を握り締めて引き金を引いた。ズキュン――『悪魔化』した者の心臓を撃ち抜いた。血液が溢れだし地面を濡らした。
 隊長は次々と撃ち抜いていった。
 俺も拳銃を握り締めて『悪魔化』した者の心臓へ狙い定めて、引き金を引いた。銃弾が心臓を撃ち抜き、血液が俺の顔に降りかかる。顔をサッとぬぐい、次へ狙いを定めようとした時、肩に激痛が走った。
「あがっ……!」
 振り向くと、『悪魔化』した者が俺の肩に噛みついていた。俺は『悪魔化』してしまうのか。
 隊長と目が合った。隊長はギュッと目を瞑った。そして目を開けて、
「風月くんごめんなさい」
 そう言って拳銃の引き金を引いた。ズキュン、と音がして銃弾が俺ごと『悪魔化』した者を撃ち抜いた。 

 ☆☆

 数十人の『悪魔化』した者を抹殺し終えた。何十人もの犠牲者が出た。
「大事な部下たちを守れませんでした。私は隊長失格かもしれませんね」
 ……風月くん。配属されたばかりだったのに。
「隊長、来てください!」
 部下が私を呼んでいた。
「どうかしましたか?」
「風月、まだ生きています」
 耳を疑うようなことを言った。
「え? でも、私は確かに心臓を撃ったはず」
「心臓から僅かにずれていました」
「そうですか……でもこのままだと『悪魔化』してしまいますね。どうしましょう」
「ああ、その点は大丈夫です。どうやら、風月は『悪魔化』に耐性を持っているようです」

 ☆☆

 俺は眠りから目を覚ました。そこは病室だった。なぜ、俺はこんなところにいる? 訳が分からなかったが、とりあえず、身体を起こした。
「あ! 起きましたか」
 病室の椅子に座っていたのは隊長だった。
「隊長。あの、これは一体どういうことですか? ってか俺って死んだんじゃ」
「死んでません。銃弾は心臓から僅かにずれていました」
「はあ~。だとすると俺は『悪魔化』って奴になってるのでは?」
「どうやら風月くんは『悪魔化』に耐性があるみたいなんです」
 耐性だって? どうして耐性なんかあったのだろうか?
「それで、俺はどうして病室に?」
「実弾を摘出するために手術をしました」
「なるほど」
「ごめんなさい」
 隊長は俺から離れて頭を下げた。
「何で謝るんですか?」
「あなたを撃ってしまったからです」
「守るために撃ったんでしょう、他の人を。だから、気にしないでください」
「……風月くん、本当にごめんなさい」
「何で二度も謝るんですか?」
「あなたを二度殺すことになりそうだから」
「え? どういう意味ですか?」
「あなたの身体、どうして『悪魔化』に耐性があるのか、調べさせてもらいます」

 ――ズキューン――
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