黒き死神が笑う日

神通百力

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追いつめられて

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 古びた木造二階建ての一軒家。
 その中で両手両足を縄で縛られ、猿轡をされた少女は震えていた。
「…………」
 男は無言で少女の髪を掴み、思いっきり引っ張った。ベリベリと皮膚ごと髪の毛を抜いた。
「……んん!」
 少女は激痛に暴れる。男はやんわりと押さえ込み、剥がれた箇所に硫酸を吹きかける。
「…………!」
 傷口に硫酸が染み込み溶けていく。
 男は皮膚ごと髪の毛を抜き、硫酸を吹きかける行為を繰り返した。やがて少女は髪の毛を失い、頭が血だらけになった。
 あまりの激痛に少女は白目を向いて失神していた。
 男は立ち上がり、扇風機を取り出した。羽根にかみそりの刃を取り付けた、男のお手製の扇風機だ。男はプラグをコンセントに差し込んだ。扇風機の羽根が回り出す。
 男は少女の人差し指を掴み、扇風機の中に突っ込んだ。一瞬にして少女の人差し指は切断された。男は何度も少女の指を扇風機に突っ込んだ。少女は両手の指をすべて失い、扇風機の羽根は血に染まっていた。少女の指の切断面から血液が流れ落ちて血の海を構築した。
 扇風機のカバーに男は手をかけて外すと、血臭が部屋に漂い始めた。
「次は両足の指だな」
 男はポツリと呟いた。
「…………!」
 少女は必死に首を振った。その様は首を左右に動かす扇風機を連想させた。
 男は少女の両足を掴んで、すべての指を扇風機に突っ込む。ギギギ、と音を立てながら次々と指を切断していく。
「指を切断するのに扇風機は便利な道具だ。羽根がボロボロになったから、買い換えないとな」
 男はプラグを抜いた。扇風機の羽根は回転を弱めて止まった。
 男は隣の部屋へと行き、戻ってきた。
「動くな。じっとしていろ」
 男が喉から搾り出すような声を出す。男はやすりを少女の腕に押し付け、力を込めて擦り始めた。何かがパラパラと落ちた。それはやすりによって削られた皮膚だった。
「……んむ!」
 少女は暴れようとするも押さえ込まれて動けなかった。
「動くなと言ったはずだが? 聞いてなかったのか」
 男は何かにジッと耐えるように一心に擦り続ける。パラパラと皮膚は落ちて積もっていく。反対側の腕も同じようにやすりで擦っていく。パラパラと皮膚が落ちる。
 男は削った皮膚をゴミ箱に捨て、台所へ向かった。皮むき器を手に戻ってくる。
 男は人参を剥く様に少女の腕に皮むき器を当てると、肌を剥いでいく。薄くスライスされた皮膚が落ちた。
「…………」
 少女は白目を向き、気絶していた。
「…………」
 男は無言で次々と皮膚をスライスしていく。すると血肉が見えてきた。男が指で押さえると血が滲み出してきた。今度は血肉をスライスする。やがて骨が見えてきた。反対側の腕も同じようにした。
「……んん」
 少女は目を覚ましたが、自分の腕の状態を見て、また気絶した。
「殺そう」
 男は側に置いていた包丁を握ると、少女の眼球を突き刺した。眼窩から眼漿が垂れてくる。さらに奥まで包丁を突き刺す。後頭部まで突きぬけ脳漿が飛び散った。 
 包丁を抜くと少女はゆっくりと後ろに倒れた。

 ☆☆

 翌日――。
 男は少女をゴミ袋に詰めて遠くの雑木林に捨てた。
 
 しばらく経つとバラバラにしたはずの少女の死体が一つに集まり、時間が巻き戻ったかのように本来の美しい少女の姿へと戻っていく。やがて少女はにっこりと微笑みながら男の家へと歩き始める。
 
 男は家でじっと恐怖に耐えるように歯を食いしばっていた。するとそこへコツコツとドアを静かに叩く音が聞こえる。
「やっぱりだめか」
 男は小さく肩を震わせながら呟いた。

 男がこの少女を殺すのはこれで七度目である。
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