黒き死神が笑う日

神通百力

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脳の種

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 一人の男が研究に没頭していた。男の娘は三年前に脳死した。男は娘を蘇らせるために、ある研究を始めた。そして三年の月日が流れ、ついに研究は成功した。
 その研究とは『脳を作る』ことだ。その研究成果が『脳の種』である。男は庭に『脳の種』を植えた。
 男は実が育つのを待ち、脳を収穫した。収穫した脳を娘の頭に入れる。その直後に娘は蘇った。
 娘が動く様を見た男は泣いて喜んだが、それも束の間だった。娘は全くの別人になっていた。生前は明るかったが、今は暗くなっていた。
 
 ――あの頃の娘にはもう二度と会えない。
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