黒き死神が笑う日

神通百力

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私がお姉ちゃんを殺した理由

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 私はお姉ちゃんの墓参りに来ていた。
 墓地に来る途中に購入した花をそっと花瓶に差し、私は手を合わせた。
「|桃花《ももか《が死んでから今日で一年だね」
 海斗かいとさんはしばらく手を合わせた後、私の方を見てそう言った。海斗さんはお姉ちゃんと付き合っていた。結婚の約束もしていたが、それは叶わなかった。
 海斗さんは亡くなったお姉ちゃんのことを今でも思っている。
「犯人が早く捕まってくれるといいね」
「……そうだね」
 お姉ちゃんは一年前に通り魔に刺されて死んだ。海斗さんの家を出た数分後に起きた出来事だった。
 犯人は今なお捕まっていない。しかし、私は犯人を知っている。だが、警察に言うつもりはまったくない。なぜなら犯人は私だからだ。
 まずは自分とまったく関係のない人間を何人か殺し、その後に本命のお姉ちゃんを殺した。お姉ちゃんを殺害した後も、自分とは無関係の人間を殺した。その理由は自分に疑いの目が向けられないようにするためだ。現に捜査の手は私にまで伸びていない。
 お姉ちゃんが嫌いだったわけじゃない。その逆でお姉ちゃんのことが大好きだった。けれどそれ以上に海斗さんのことが大好きだった。
 海斗さんと二人っきりで過ごしたくてたまらなかった。でもお姉ちゃんが彼女である以上、それはできない。だからお姉ちゃんを殺した。お姉ちゃんさえいなくなれば海斗さんと二人っきりで過ごすことができる。私の目論見は見事成功し、海斗さんと一緒に過ごせている。でも海斗さんの心にはまだお姉ちゃんがいる。海斗さんの中で死んだはずのお姉ちゃんが生きている。なのに生きているはずの私は死んでいる。
 海斗さんは私のことを見てくれない。お姉ちゃんのことしか見ていない。私はこんなにも海斗さんを愛しているのに。
「少し冷えてきたね。そろそろ帰ろうか」
「……うん」
 海斗さんは私の手を握ってきた。そっと表情を伺ってみる。海斗さんは悲し気な表情をしていた。
 お姉ちゃんを殺しただけではダメだった。どうすれば海斗さんは私のことを見てくれるのだろう?
 頼れる人が私しかいない環境を作り出せばいいのだろうか? ならば海斗さんの家族を殺すしかない。明日にでも実行に移すとしよう。
 私は一抹の不安を払拭しようと海斗さんの手を強く握りしめた。

 ――お姉ちゃんは私の恋を応援してくれるよね?
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