黒き死神が笑う日

神通百力

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ひったくり?

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 私はバッグを肩からぶら下げて商店街を歩いていた。昔から商店街をぶらぶらと歩くのが好きだった。
 ぶらぶらと歩いていると視界の端に行列が映り込んだ。気になって見てみるとコロッケ屋だった。小腹も空いてきたし、私は行列に並ぼうとした。
「そのバッグを寄こせ!」
 突然聞こえてきた声に驚き、私は思わず背後を振り返る。二十代半ばと思しき男が近づいてきていた。バッグを盗られると思った瞬間、なぜか私はお姫様抱っこをされた。
「へへっ、バッグはいただいたぜ」
 男は私を抱えたまま走った。
 状況が理解できず、私は混乱した。これはひったくり? それとも誘拐? 私は何でお姫様抱っこをされている? 次々と疑問が湧いてくる。 
 どうするべきか悩んでいると、男は急に立ち止まった。
「……重いな」
 失礼な男だ。これでも私は五十キロ台なのに。平均くらいだと思う。そもそもバッグだけ盗ればいいのに、私ごと盗っていくからいけないのだ。
「君、署まで来てくれるかな?」
 いつの間にか警察が来ていた。誰かが警察に通報したのだろう。
 男はあっさりと逮捕された。
 まだ体に男の手の感触が残っている。初めてお姫様抱っこをされた。
 私は気を取り直して商店街をぶらぶらと歩き出した。
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