黒き死神が笑う日

神通百力

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人柄の服

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 私は窓からの陽光で目が覚め、ベッドから体を起こした。何気なく部屋を見回し、私は固まった。
 反対側のベッドで姉が首から血を流し、倒れていた。手にはカッターを持っている。ベッドの下には紙が落ちていた。
 私はベッドに近づき、紙を拾った。紙には『あの人にフラれたら、私はもう生きていけない。あの人だけが私の生きがいだったのに。あの人のいない人生なんて耐えられない。さよなら、あの人を奪った世界』と書かれている。どうやら自殺のようだった。昨夜、姉は彼氏にフラれて死にたいと言っていたが、まさか本当に実行するとは思わなかった。
 もっと姉と一緒にいたかった。私を置いていかないでほしかった。姉のいない人生なんて耐えられない。姉だけが私の生きがいだった。けれど、私は姉のように自殺する勇気なんてない。
 私はしばし思考を巡らせると、押入れを開けた。奥のダンボール箱を漁り、ミシンを探す。ミシンを見つけると、ベッドまで駆け寄った。姉の服を脱がし、全裸にさせる。
 姉の手からカッターを取ると、ゆっくりと皮膚を剥いでいく。破れないように気を付けながら、全身の皮膚を剥いだ。体中から血泡が沸き出てくる。皮膚に付着した血を洗い流すと、扇風機をあてた。
 皮膚を乾かしている間、姉が着ていた服をハサミで切って二枚に分けた。ズボンも同じように分ける。皮膚を確認すると、もう乾いていた。
 裏地を表にすると、上から皮膚、服、服、皮膚の順に重ねてミシンにセットした。時間をかけてゆっくりと服と皮膚を縫い合わせていく。縫い終わると、裏返した。表は何の変哲もない服だが、裏地は人柄となっている。トラ柄やパイソン柄のように派手ではないが、親近感がある。ズボンも同じように皮膚と縫い合わせた。
 私は服を着替えた。姉の皮膚の感触を肌で感じ取った。ひんやりと冷たくなっていたが、姉の温もりを感じた。私は嬉しくなり、思わず笑みがこぼれた。
 
 ――これからもずっと一緒だよ、お姉ちゃん。
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