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プール
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「クロールで25メートル泳いでもらうけど、まずは私が手本を見せるから」
私は生徒たちを見回した後、勢いよくプールに飛び込んだ。しかし、あまりの冷たさにすぐにプールから出てしまった。震えていると、生徒たちの冷めた視線を感じた。手本を見せるなんて言っておいてこのざまだ。冷めた視線を投げかけられるのも当然だ。
私は気を取り直すと、プールサイドに座った。恐る恐る足をプールにつける。異常なまでの冷たさだ。なぜ学校のプールはこんなに冷たいのだろうか? 市民プールはちょうど良い温度なのに。教師や生徒を殺そうとしているのではないかと思わずにはいられない。飛躍し過ぎな気もするが。
生徒の手前、これ以上時間をかけるわけにはいかない。私は意を決してプールに入った。
「……あぁああ」
私は冷たさに耐えきれず、思わず声が漏れてしまった。ついでにオナラも出た。聞こえてなければいいんだけど。
「温泉に浸かるおじいさんみたいだな。あと先生、オナラしただろ。めっちゃ臭いんだけど」
体を震わせていると、背後から聞き捨てならない言葉が聞こえた。私は冷たさを我慢して背後を振り返ると、田上(たのうえ)君を睨み付けた。
「プールに浸かってるんだけど! あとオナラしてごめん!」
やっぱりオナラの音は聞こえていたか。出てしまったものは仕方ないとはいえ、とてつもなく恥ずかしい。よりにもよって生徒の前でオナラをする羽目になるとは思わなかった。
「怒るところはそこなのかよ。おじいさんみたいは別にいいんだな」
「今は女だけど、いずれはおっさん化するだろうから、それは別にいい」
私は言いながら、プールサイドの縁に手をかける。生徒たちの痛い視線を浴びながらも、プールから這い出た。生徒たちの表情を伺うと『またかよ、先生』という顔をしていた。入ってないから、そんな表情ができるんだ。一度浸かったら、そんな表情はもうできないだろう。
「……ちょっと体を温めるから、適当に泳いでてくれる?」
私は周りのフェンスに駆け寄ると、掛けておいたタオルを手に取った。タオルを広げ、体を包んだ。ホッとした瞬間、生徒たちの叫び声が聞こえた。何事かと顔を上げると、慌てた様子で生徒たちがプールから出ていた。
『冷たいっ!』
生徒たちは体を震わせながら、同じ言葉を叫んだ。
「先生がすぐにプールから出た理由が分かった。まさかこんなにも冷たいとは……死ぬかと思った」
田上君はタオルで体を拭きながら、ため息をついた。他の生徒たちもタオルで体を拭いている。
あんなに冷たいとプールの授業は難しい。泳ぐこともままならない冷たさなのだ。何とかしてプールの温度をあげなければならない。
「……ちょっと待ってて、何とかするから」
私はそう言うと、校舎に向かって駆けだした。
☆☆
「先生……そんなことしていいのか?」
「もちろんダメよ。でも、泳ぐにはこうするしかない」
私はプールに大量のお湯を注いでいた。窓からこっそりと家庭科室に侵入し、やかんでお湯を沸かしたのだ。スクール水着の恰好だったし、職員室には行けなかった。泳ぐようにするためとはいえ、私は教師失格だ。家庭科室に侵入してるし。
「こんなもんかな?」
私はやかんを置くと、プールに手を入れた。ちょうど良い湯加減だった。というかもはやプールではなく、広めのお風呂になっている。
「さあ、お風呂に入りましょ」
「泳ぐためにしたんじゃねえのかよ。何で学校でお風呂に入らなきゃならないんだ。お湯を入れ過ぎなんだよ」
田上君は文句を言いながらも、頭にタオルを巻いていた。お風呂に入る気満々じゃないか。まあ、頭にタオルはお風呂というよりかは温泉のような気がするけど。
私は生徒たちと仲良くお風呂状態のプールに浸かった。さっきまでの冷たさが嘘のように温かかった。体が芯から温まって気持ちいい。
「気持ちいいな、先生」
「うん、気持ちいいね」
私たちはチャイムが鳴るまで浸かり続けた。
その後、私は学年主任の先生に二時間も説教された。
私は生徒たちを見回した後、勢いよくプールに飛び込んだ。しかし、あまりの冷たさにすぐにプールから出てしまった。震えていると、生徒たちの冷めた視線を感じた。手本を見せるなんて言っておいてこのざまだ。冷めた視線を投げかけられるのも当然だ。
私は気を取り直すと、プールサイドに座った。恐る恐る足をプールにつける。異常なまでの冷たさだ。なぜ学校のプールはこんなに冷たいのだろうか? 市民プールはちょうど良い温度なのに。教師や生徒を殺そうとしているのではないかと思わずにはいられない。飛躍し過ぎな気もするが。
生徒の手前、これ以上時間をかけるわけにはいかない。私は意を決してプールに入った。
「……あぁああ」
私は冷たさに耐えきれず、思わず声が漏れてしまった。ついでにオナラも出た。聞こえてなければいいんだけど。
「温泉に浸かるおじいさんみたいだな。あと先生、オナラしただろ。めっちゃ臭いんだけど」
体を震わせていると、背後から聞き捨てならない言葉が聞こえた。私は冷たさを我慢して背後を振り返ると、田上(たのうえ)君を睨み付けた。
「プールに浸かってるんだけど! あとオナラしてごめん!」
やっぱりオナラの音は聞こえていたか。出てしまったものは仕方ないとはいえ、とてつもなく恥ずかしい。よりにもよって生徒の前でオナラをする羽目になるとは思わなかった。
「怒るところはそこなのかよ。おじいさんみたいは別にいいんだな」
「今は女だけど、いずれはおっさん化するだろうから、それは別にいい」
私は言いながら、プールサイドの縁に手をかける。生徒たちの痛い視線を浴びながらも、プールから這い出た。生徒たちの表情を伺うと『またかよ、先生』という顔をしていた。入ってないから、そんな表情ができるんだ。一度浸かったら、そんな表情はもうできないだろう。
「……ちょっと体を温めるから、適当に泳いでてくれる?」
私は周りのフェンスに駆け寄ると、掛けておいたタオルを手に取った。タオルを広げ、体を包んだ。ホッとした瞬間、生徒たちの叫び声が聞こえた。何事かと顔を上げると、慌てた様子で生徒たちがプールから出ていた。
『冷たいっ!』
生徒たちは体を震わせながら、同じ言葉を叫んだ。
「先生がすぐにプールから出た理由が分かった。まさかこんなにも冷たいとは……死ぬかと思った」
田上君はタオルで体を拭きながら、ため息をついた。他の生徒たちもタオルで体を拭いている。
あんなに冷たいとプールの授業は難しい。泳ぐこともままならない冷たさなのだ。何とかしてプールの温度をあげなければならない。
「……ちょっと待ってて、何とかするから」
私はそう言うと、校舎に向かって駆けだした。
☆☆
「先生……そんなことしていいのか?」
「もちろんダメよ。でも、泳ぐにはこうするしかない」
私はプールに大量のお湯を注いでいた。窓からこっそりと家庭科室に侵入し、やかんでお湯を沸かしたのだ。スクール水着の恰好だったし、職員室には行けなかった。泳ぐようにするためとはいえ、私は教師失格だ。家庭科室に侵入してるし。
「こんなもんかな?」
私はやかんを置くと、プールに手を入れた。ちょうど良い湯加減だった。というかもはやプールではなく、広めのお風呂になっている。
「さあ、お風呂に入りましょ」
「泳ぐためにしたんじゃねえのかよ。何で学校でお風呂に入らなきゃならないんだ。お湯を入れ過ぎなんだよ」
田上君は文句を言いながらも、頭にタオルを巻いていた。お風呂に入る気満々じゃないか。まあ、頭にタオルはお風呂というよりかは温泉のような気がするけど。
私は生徒たちと仲良くお風呂状態のプールに浸かった。さっきまでの冷たさが嘘のように温かかった。体が芯から温まって気持ちいい。
「気持ちいいな、先生」
「うん、気持ちいいね」
私たちはチャイムが鳴るまで浸かり続けた。
その後、私は学年主任の先生に二時間も説教された。
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