黒き死神が笑う日

神通百力

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写真

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 私は鉛筆を写真に突き立てていた。写真には一組の男女が写っている。私の彼氏と親友だ。彼氏は私を裏切って親友と寝たのだ。彼氏も許せないが、拒まなかった親友も許せなかった。
 彼氏と親友の顔に何度も鉛筆を突き立てていると、インターホンが鳴った。玄関の扉を開けると、隣のおばさんが立っていた。
「カレーを作り過ぎたんですけど、良かったらどうですか?」
「いいんですか? ありがとうございます!」
 私はそう言うと、カレーが入った小さな鍋を受け取った。
「鍋は返さなくていいですからね。鍋ごと差し上げますよ」
「鍋ごと? いいんですか? すみません」
「いえいえ、それではこれで」
 おばさんは頭を下げてきたので、私も下げ返した。おばさんが帰った後、私は鍋をテーブルに置いた。それから写真でご飯を包むと、カレーをまぶして食べた。写真の質感が海苔みたいにパリパリしていた。それがご飯によく合い、カレーもちょうどいい辛さで美味しかった。
 押入れから彼氏の写真を取り出すと、カレーに浸した。黄色くなるまで待ち、写真を取り出した。写真にカレーの黄ばみがこびりついている。カレーを啜りながら、写真を食べた。カレーの味がしっかりと染みついている。カレーと写真がこんなにも相性が良いなんて知らなかった。
 私は中学時代のアルバムから写真をすべて取り出すと、カレーに浸した。カレーは日にちが経てば経つほど美味しくなるし、冷蔵庫に入れておくことにした。
 明日も食べれると思うと嬉しくなり、自然と笑みがこぼれた。
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