黒き死神が笑う日

神通百力

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幸せな未来

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 私は部屋を見回し、壁中に貼っているお姉ちゃんの写真を眺めた。私はお姉ちゃんのことが大好きでいつも甘えている。けれど、お姉ちゃんは私のことが嫌いみたいでイヤそうな顔をして突き飛ばしてくる。
 それでもめげずに甘えていたが、いつの頃からか、お姉ちゃんは帰りが遅くなった。さりげなく両親に聞いてみると、彼氏ができたようだった。お姉ちゃんを独り占めする彼氏とやらが私は許せなかった。それと同じくらい私を裏切って、彼氏を作ったお姉ちゃんのことも許せなかった。誰よりもお姉ちゃんを愛しているというのに。
 どうしてお姉ちゃんは私の思いに応えてくれないのだろうか? 妹が姉を愛したらいけないのだろうか? しかし、愛してしまったものは仕方がない。この思いは誰にも止められない。誰かに止めさせるつもりもない。
 じっと写真を見つめていると、外から車のエンジン音が聞こえてきた。私は懐中電灯と望遠鏡を手に取り、窓に近づいた。カーテンを開けて外を伺うと、遠くの方に赤色の車が見えた。望遠鏡で確認すると、助手席にはお姉ちゃんが乗っていた。
 私は窓を開けると、懐中電灯を運転席に向けた。すると彼氏はハンドルの操作を誤り、ガードレールに激突した。耳を劈くような音が響き渡った。
 私はすぐに部屋を出て、玄関に向かった。両親も慌てた様子で玄関に向かっていた。両親と一緒に家を出ると、車は大破していた。
「た、大変だ! 母さん、すぐに救急車を!」
「は、はい!」
 お母さんはすぐに家に戻った。それを確認すると、お父さんは車に駆け寄った。私も車に駆け寄る。
「待ってろ、すぐに助けるからな」
「お姉ちゃん! すぐに助けるからね!」
 私はお父さんと協力し、お姉ちゃんを車の外に出した。頭から血を流していたが、息はあるようだった。私はそのことに安堵した。彼氏の方はピクリとも動いていなかった。誰が見ても死んでいるのは明らかだった。
「お姉ちゃん、すぐに救急車が来るからね」
 私はお姉ちゃんの手を握り、呼びかけた。彼氏が死んだことが分かれば、お姉ちゃんの心には穴が空くはずだ。その穴を私が埋め、お姉ちゃんを支える。そうすればお姉ちゃんと良好な関係を築けるかもしれない。
 私は幸せな未来を見据え、誰にも気づかれないように微笑んだ。
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