黒き死神が笑う日

神通百力

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扇風機

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 私は実家から送られてきたダンボール箱を開けた。中には古びた扇風機が入っていた。この前、母親に電話で扇風機が壊れたことを話したら、新しいのを宅配便で送ると言ってくれたのだ。
 ダンボール箱に同封された手紙によると、屋根裏部屋を掃除していたらこの扇風機を見つけたとのことだった。かなり古い扇風機だとひと目で分かったらしいが、まだ使えそうだと判断して送ることにしたみたいだった。どうせなら新品の扇風機を送ってほしかったが、仕方ない。送ってくれただけありがたいと思うことにした。
 私は手紙を置くと、あらためて扇風機を見た。扇風機の羽根には赤黒い汚れが付着していた。何の汚れなのかはまったく分からなかったが、まずはきれいに羽根を洗ってから使うことにした。早速扇風機の羽根を外し、風呂場まで持っていき、スポンジで擦り始めた。ところがいくらスポンジで擦っても赤黒い汚れは落ちなかった。力を込めて擦っても、赤黒い汚れが落ちる気配はなかった。
 私は赤黒い汚れを落とすことは諦め、羽根を扇風機にはめて強のボタンを押した。羽根はゆっくりと回り始めたが、風はまったく来なかった。羽根は回っているのに、どうして風が来ないのだろうか?
 疑問に思っていると、突然、体が扇風機に引き寄せられた。今まで感じたことのない非常に強い力だった。頭が混乱しながらも、私は必死で抵抗した。けれど、抵抗も空しく、徐々に体が扇風機に引き寄せられていく。
 そして私の体は扇風機にぶつかった。それでもまだ体は引き寄せられ続け、放射状に伸びた格子部分が肉に食い込んでいく。徐々に体が扇風機の内側へと入り込んでいき、やがて指が羽根に切断された。
 あまりの激痛に私は声にならない悲鳴をあげた。時間をかけて体が羽根に切断され続け、私の意識は闇の中に沈んだ。

 ☆☆

 女性の体を細かく羽根で切り刻んだところでようやく扇風機は停止した。部屋一面に女性の肉片や血液が飛び散っていた。扇風機の羽根には血液がこびりついている。そう羽根の赤黒い汚れは扇風機に殺された者たちの血液だった。
 扇風機はここから三キロほど離れた一軒家の屋根裏部屋に移動すると、次の標的が現れるまで深い眠りについた。
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