黒き死神が笑う日

神通百力

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 窓から差し込む陽光で私は目が覚めた。瞼をこすりながら階段を降りて洗面台に向かった。
 顔を洗おうと鏡を見て私は驚いた。肩に直径一センチほどの痣ができていた。痣は青紫がかっている。いつこんな痣ができたのだろうか? 寝ている時に肩を壁にでもぶつけたのかもしれない。痣をさすりながら、私は顔を洗った。
 朝食はパンだけで済ませた。その後はテレビを観たり読書をして過ごし、昼食の時間になった。昼食を作ろうと立ち上がり、私は何とはなしに肩を見て目を見開いた。痣がさっきよりも明らかに大きくなっていた。さらに妙なことに痣が手のような形に変化している。
 呆然として痣を見つめていると、急に意思を持っているかのように動き始めた。手の形に変化した痣は肩から鎖骨、首へと移動していく。
 あまりの恐怖に悲鳴をあげそうになったが、喉から声は出なかった。痣が首を絞め始めたからだ。強い力で徐々に首を絞められ、私の意識は闇に消えた。

 ☆☆

 女が絶命すると、痣は急速に小さくなっていき、跡形もなく消え失せた。後に残ったのは女の遺体だけだった。
 それからわずか一時間後、別の女性が鏡を見て声を上げた。

「あれ? 何でこんなところに痣が?」

 ――それが彼女の最期の言葉となった。
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