元SM嬢(♂)が異世界で世界征服する

負け犬

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第一章 治安最悪国家への侵略

2話目 俺と女装と美少女と肉団子

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 目が覚めるとそこはお屋敷でした……って。

「わらえねえよ……」

 まず、俺の視界に入るのは豪華絢爛な金色の装飾品が散りばめられた趣味の悪い天井。
無駄に肌触りの良い布に包まれた体に、ふかふかし過ぎて逆に不安定なベッド。
がばり、と上半身だけ起こし、今の自分の状態を確認する。
視界が広い事からあの仮面はつけていないのだろう。
服はあの露出度の高い服ではなく、さらさらと光を反射する一目で高級品とわかる布を使ったネグリジェ。
……ネグリジェ、だよな。これ。
なんで俺いつの間に女装してんの? 無意識でやっちゃったの? それとも女装した男が好きな変態にやられたの? もしかしたら……、あ。変態で思い出したが。

「あの客どこ行った!?」
「失礼します」

 おっと。
俺のデカい独り言に被せる様に入ってきた人物。
急いで口を噤み、声がした方を錆びたブリキ人形の様な動きで首を動かして見る。
そこに立っていたのは金色の長い髪をツインテールにした可愛らしい少女。
しかし、表情はまるで能面の様にピクリとも動かない無表情だ。
服はロングスカートタイプのメイドの衣装で、腕には真っ白な布に包まれた何かを抱えている。
金髪ということは外国人だろうか。それにしてはやけに日本語が流暢だったような……?
その格好も気になるし……。

「お客様。僭越ながらお着替えのお手伝いを……」
「えっ、着替え?」
「はい。王様がお客様との会食を行いたいと」

おう、え、王様?
え、何ここは王宮なの? 俺はそんな所にお邪魔しちゃってるの? というか益々ここどこだよ。異世界なんかじゃないよね。二次元じゃあるまいし、うん。
てことは夢か! 凄いリアルだけど夢だよね! と言うかそれ以外認めない。

「え、っと、服は何を着れば……?」
「こちらになります」

そう良いながら美少女が白い布の中から出したのは、薔薇がコンセプトであろう真紅のドレス。
待て、ドレスだと? ドレスだよな。寸分たがわぬドレスだな。あれ、俺男だよな。
スッ、と思わず喉元に手が行く。大丈夫だ。男の証である喉仏は立派に出てる。ちょっと分かりにくいけど。

美少女は沈黙を肯定と見なしたのか、何も言わずに俺が着ているネグリジェの喉元にあるリボンを解いていく。
って待て待て待て。

「ちょっと待て」
「? 脱がなけれなお着替えが出来ませんが」
「大丈夫だ。自分でやれる」
「ですが……」
「良いから! もしオウサマに怒られるんだったら部屋の外で待っててくれれば良いから!」
「はあ……」
「わかったら早く出てって!」

少々強引ではあるが、美少女を部屋の外に追い出した後、確信する。
ーー俺、女だって思われてる。
非常にまずい。俺を女だと思っているということは、男とバレたら即ポイの可能性もある。
それだけは避けたい。ここが何処かも分からないのに野に放たれてしまったなら、生きていく自身がない。
仕方ない、腹をくくろう。
そう決意し、俺はベッドに行儀良く横たわる真紅のドレスへと手を伸ばした。



ーーーーーーー



結論を言おう。超キツい。
大学でデザイン科だった事が役立ち、服の着方は難なくクリアできた。しかし……。

(コルセットキッツイ……!!)

正に責苦。内臓が上下に寄りそうな程ぎゅうぎゅう締め付けてくるコルセット。
紐は鉄製なのか、少しも緩む気配が無い。
しかし、チョーカーのお陰で喉仏は隠れるも、以外と体のラインが出てしまうこのドレスでは女性にある括れを誤魔化すことはできない。
だからコルセットを装着したのだが、予想以上にキツい。慣れない日本人がこれをして死者を出してしまったのも頷ける。
それと同時にこの苦しさでこれが夢じゃ無い事を嫌でも思い知らされる。
赤い薔薇の髪留めを適当に側頭部に震える手で着ければ、もう一端の淑女レディだ。自分で言ってて悲しくなるがな! 畜生、俺の男性ホルモン仕事しろ!
ふらふらする足取りを懸命に隠しながら、無駄に大きな扉に手を掛け部屋の外に出る。

「待たせたわね」
「いえ。よくお似合いですお客様」

本当に部屋の外で待機していた美少女に、自分でも鳥肌がたつ女言葉で声をかける。
しかし仮にも男なので、お世辞じゃなかったとしてもあんまり嬉しくないお褒めの言葉っす。

そのまま「此方になります」と言った美少女が前を歩き出す。
女性らしい歩き方など知らない為、勝手な偏見ではあるが手を体の前で八の字にして歩く。これしか知らないんだ! しょうがないだろ!
なるべく足音をたてずにフラつかないように気を張って歩いていると、中庭がよく見える廊下に出た。

「わぁ……」
「? ああ、こちらは中庭です。この美しさはここの庭師にしか出せないものでございます」

思わず漏れた声を拾って、真面目に答えてくれた美少女の声に返事をすることも出来ないまま、この庭に引き込まれてしまう。

眩しい白色の石で作られた大きな噴水。
何の形をしているのかは分からないが、恐らく動物を象った木。
柔らかそうな芝生は低い背を日光に向かって懸命に伸ばしている。
幾何学的に入り組んだ迷路の様な生垣。

「……綺麗だな」
「! ……庭師に、伝えておきます」

また思わず呟いた言葉に、美少女は軽く目を見開き、背をくるりと向けて歩き出した。
俺もそれを追いかけたが、その廊下を出るまで俺の視線は中庭に釘付けだった。



ーーーーーーー



「ここが会食会場に御座います」

そう言われた部屋の扉は見上げる程大きかった。
ここに来るまでにぎゅうぎゅう締め付けてくるコルセットと、後から足に来るヒールの靴によってHPがガリゴリ削られた。俺の残りHPは50も無い……。
美少女が控えめなノックをして声を掛け、ドアをゆっくりと開けて行く。
この先に王様がいるのか……。

「ああ! よく来てくれましたお客人!! ささっ、どうぞお席へ」

王様が、王様、おう、さま……?
ーーなんだこの肉団子は。

そう思わざるを得ない容姿をしたこの豚はどうやら本当に王様らしく、何日も洗ってなさそうな脂ぎった髪の上に可哀想な王冠が居心地悪そうに座っている。
まさかこれが……?
硬直した俺に何を勘違いしたのか、この肉団子は元々気持ちの悪かった笑みを更に気持ち悪く深めて尚席を勧めてくる。
しかし、これは何処かで見たシュチュエーションだ。はて、なんだったかな……。
……ああ! そうだ、思い出した! 俺が風俗始めたばっかの頃に教材にしたビデオの中の一つとシュチュエーションがよく似てるんだ。そうだったそうだった。
脳みそがそう思い至った結果、思わず口から飛び出したのは。

「貴方みたいな人語を操る豚と食事をするなんてまっぴら御免よ。ミジンコの餌でも食べて来ては?」

……やっべ、やっちまった。
ビデオの洗脳教育は伊達じゃなかったか。


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