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19.どきどきのモーニングコールです
しおりを挟む翌日。スマホのアラームより前に起きてしまいました。
勝手に目が開いてしまい、スマホの時刻はあと5分程で一応アラームの時間です。
たかが5分。されど5分ですよね。
早めに起こしてしまったらお兄さんの貴重な睡眠時間を削ってしまいます。
ベッドの上でちょこんと正座して待機です。
5分でできることを探していると、いつのまにかアラームが音を立て始めます。
いつもと同じアラームのはずなのに、音が大きくなるにつれてなぜか僕の心臓の音も大きくなっていきます。
ドキドキを超えてバクバクと音を立てる心臓の音を聞きながら、アラームを止めます。
こんなときに限って、何度も何度もタップしてもアラームは止まってくれません。
やっとアラームを止め終えたころにはもう約束の時間より2分も過ぎています!
焦った僕はすぐにメッセージアプリで電話マークを指でタップ。
なぜか息を切らしながら、コール音を聞きます。
そして、一回鳴り終わるか鳴り終わらないかというところでコール音が途絶えます。
びくっと大きく肩をはねさせながら、えいって気合をいれて話します。
「あ、あのおはようございますっ!」
『……おはよ。翠』
お兄さんのお声とふっと柔らかな笑い声が鼓膜をくすぐります。
直接耳元で笑われたような錯覚がして、ぎゅうっと目をつむってしまいます。
『朝はやくからありがとな。うん。これで1日頑張れそう』
「お、お役に立てて嬉しいです」
『ん。お願いついでにこのまま電話繋いでいていいか?』
「へぇあ?」
このまま電話を繋いでいないと二度寝をしそうだから、見張っててほしいとのことです。
朝弱いっていうのは大変なんですね。
「はい。電話のおつきあい頑張ります!」
『ありがと』
ふはっと軽い笑いまじりの声は、心臓に悪いです。
思わずスマホを持つ手に力を入れぎゅっと握りしめてしまいます。
いそいそとベットから抜け出し、リビングのソファーに腰掛けます。
そわそわ落ち着かないのでお山座りで両膝を抱えます。
『今日も休みなんだよな?』
「……はい。しばらくお休みですね。お昼にノラさんによろしくお伝えください」
『ん。昨日ノラすっげー不機嫌だったからな……翠から謝ったほうがいいぞ。あれ』
「え?! ノラさんそんなに怒ってたんですか?」
『ちゅるちゅーる2本でやっと撫でさせてくれたくらいだったな』
「献上しなければ……大量のちゅるちゅーるを」
ぶっと思い切りお兄さんが噴き出しました。
そんな笑っている場合ではないのに。
僕とノラさんとの仲が大変な危機的状況なんですよ。
こちらは真剣なんですよ。
伝わらないもどかしさに、拳をぶんぶん上下に振ってしまいます。
『直接謝ればいいんじゃね? 昼にテレビ電話して、翠が顔見せればノラも機嫌直るだろ』
「なるほど。お願いしてもいいですか?」
『ん。俺も翠の顔みたいしな』
びっくりしすぎて言葉もでませんでした。
昨日のテレビ電話で、僕の顔があまりにも病人顔だったので、心配している?。
つまり伊織くんと同じ状態ってことですね。
やっぱり僕はダメダメです。
「きょ、恐縮です。僕もノラさんとお兄さんのお顔見ながらご飯食べたいです」
『ノラが先なのな……未だにお兄さん呼びだしなぁ』
なんだか声が遠いですね。
衣擦れの音が聞こえてきたのでお着替え中かも。
人さまのお着替えを盗み聞きはよろしくないです。
テーブルの上にスマホを置き、ふうっと息を吐きます。
頬が熱い気がして、両手で頬を挟むとほんのり熱をもっていました。
その後はスピーカーに切り替えた僕です。
でも、スピーカー通話は好きじゃない。
笑ったのかわからないくらいの笑い声も、息を吸う音も、耳元にあてた通話より雑音でかき消されちゃいます。
お兄さんの声をしっかり聞きたいです。
『あー、もう出るわ。ありがと』
お兄さんの声が激しく揺れながら、ごそごそと靴を履く音がします。
もう学校に行く時間。
一緒に朝ごはん食べ、雑談していたらすぐでした。
通話を切る前に、なんとかお見送りをしたい。
学校頑張ってくださいの気持ちを込めて、息を吸います。
「いってらっしゃい」
『は』
なんだかごんって何かにぶつけたような、物騒な重い音が聞こえました。
「お兄さん?!」
声をかけたのにくぐもった唸り声しか聞こえません。
いきなり体調不良でしょうか。
そわそわ落ち着かないし、苦しいです。
『あ゙ーうん。ドアに頭ぶつけただけだから大丈夫だから』
「え? な、なんでです?」
『ん? 想定外の嬉しいことがあって心臓が飛び出そうなんだよ。ありがと』
「え?」
『いってきます。翠』
笑顔が透けて見えそうなくらいごきげんなお声。
心臓が飛び出そうになりながらお返事をして、名残惜しくも通話を切りました。
初お電話の余韻に浸る間もなく伊織くんがお部屋を訪ねて来て、今日も色々と細かくお約束させられました。
心配性の伊織くんの心の平穏のためにも、吸入機とスマホは肌見離さず持っておきましょう。
その後、午前中に白井先生の診察を受け、無事自習の許可もおりました。
中間テストのためにもお勉強しておかないといけませんからね。
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