28 / 48
28.お誘いされちゃいました
しおりを挟む先日、中間テストも無事に終わり、梅雨入りはもうすぐ。放課後の今は大雨です。
天気予報では夕方から一時間ほどゲリラ豪雨の予報でした。
でも今、窓の外は薄暗い。降る雨粒の勢いが凄すぎて、教室の窓の外の世界は白く霞んで見えます。
窓に雨粒が当たる音とは思えない物騒な音もします。
ノラさんは大丈夫ですかね。
避難できる場所がどこかにあるのでしょうか。
雨足の激しさに今すぐ帰る気にならないです。
うーん、時間潰しのために図書室へ本を読みに行きましょうか。
置き傘がカバンにあるけれど、風邪を引きたくないです。
準備万端なカバンを机に置いたまま、窓をぼんやり眺め、悶々と考えていると。
「翠」
にわかに教室の空気がざわめきます。
慌てて声のする方向へ顔を向けると、まさかの人物です。
左手をドアに掛け、「おいで」と右手の指を折り曲げ手招きをしています。
「あ、あの……」
座席から立ち上がり、その人物のもとへ小走りで向かいます。
「お兄さんどうしたんですか?」
「ちょっと今から時間あるか? すげー雨だし止むまで時間潰し付き合ってくんね?」
身をかがめるお兄さん。その拍子にピアスが揺れてかっこいいです。
クラスメイトさんがさらに僕達に視線を集めだしてしまいます。
こんなかっこいいお兄さんがいたら自然と見ちゃいますよね。
でもそんなことを気にする余裕も無いです。お兄さんの来訪とお誘いに、いっぱいいっぱいです。
「じ、時間いっぱいあります!」
「んん゙、じゃ一緒に帰れそ?」
いっぱい頷くとお兄さんは目元も口元も緩めます。
座席にカバンを取りに行き戻って来ると、さり気なくお兄さんはカバンを取り上げ、肩にかける。
流れるような所作で荷物を持ってもらっちゃいました。
気配りが大人の男の人っぽくてかっこいいですね。
さらに、廊下に出た直後、するっと手を繋がれます。
最近はことあるごとにお兄さんに手を繋がれてしまいます。
未だに慣れない僕は手汗をかかないように必死です。
「あ、あのどこに……」
お兄さんの足は特別コースの校舎から旧校舎まで黙々と進みます。
この旧校舎は文化系の部活の準備室くらいしか使われません。
ほとんど施錠された教室ばかりなので放課後すぐなのに、ほとんど人気もありません。
お兄さんは目的地があるように淀みない足取りです。
「んー? この前いいとこ見つけたんだよ。これから熱くなるから涼しく昼メシ食うとこに」
さらっとこれからもお昼ご飯を一緒に食べてもらえると言われました。
実は不安だったんです。
これから雨の日が増えるから、校舎裏では濡れてしまうので食べられません。
だから、一緒に食べてもらえなくなってしまうかも不安でした。
嬉しい。胸の奥がきゅうっと苦しくなり、口をつぐませます。
けど最近よく起こるその甘い痛みが嫌じゃないんです。
「…………」
「あー、ごめんな。勝手に。もう暑くなってきたから、部屋ん中のほう涼しいからな。ノラいねーから俺と2人ってつまんねぇかもしんねーけど……」
そんなことありません。ノラさんには悪いですが。
「お、お兄さんと一緒ならどこでも楽しいです!」
「あ゛ー。……ありがとうな」
お兄さんが口元を押さえます。きらめくピアス揺らめく耳たぶがほんのり赤く染まります。
もしかして照れています?
「……俺も翠となら⸺」
「翠?!」
11
あなたにおすすめの小説
キスの仕方がわかりません
慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。
混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。
最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。
表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様
銀狼様とのスローライフ
八百屋 成美
BL
激務に心身を病み、逃げるように田舎へ移り住んだ佐伯湊。
ある雨の日、彼は庭先で銀色に輝く巨大な狼を拾う。
それは、人間に追われ傷ついた神獣、リュカだった。
傷の手当てをきっかけに、湊の家に居座ることになったリュカ。
尊大で俺様な態度とは裏腹に、彼は湊が作ったご飯を美味しそうに食べ、寒い夜にはその温かい毛並みで湊を包み込んでくれる。
孤独だった湊の心は、リュカの無償の愛によって次第に満たされていく。
しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
※未完
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者
元アイドルは現役アイドルに愛される
陽
BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。
罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。
ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。
メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。
『奏多、会いたかった』
『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』
やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる