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45.好きです
しおりを挟む「翠が好きだ」
玄くんの揺るぎない告白に、言葉を失ってしまいます。
「真っ直ぐ素直なところが可愛くて俺には眩しいくらい羨ましい。それにな、世界救えるくらいちっちゃく可愛いいくせに意外に行動力あるし、前向きに変わろうとする強さも俺は憧れる。あとは……上手く言えねえけど一緒にいるとなんかこうふわふわもふもふしてほっとする」
甘く蕩けるように笑う玄くん。
甘さと温もりに包まれるような優しい笑顔は、あのときと同じです。
で、でも、昏く絡めとるような熱を潜ませた瞳は、見たことないです。
本当に玄くんが僕のことを好き、という実感が湧いて来ます。
嬉しいばかりではなく、なぜだか胸が痛いです。悲しいわけではないんです。
感情が追いつかず、ひたすら驚いたせいで体も心もパニック状態。
何かを言いたいのに、何も浮かばないからもどかしい。
それなのに甘い感情がとぷんと溢れていきます。
⸺この気持ちは言葉だけじゃ足りない。
「あの! 待っててくだちゃい!!」
ベッドから飛び降り、目当てのものをめがけて一目散に走ります。
リビングのテーブルの上にあるそれを掴む。
すぐに踵を返すと、ばふんと顔と体全体が衝撃に襲われます。
甘い香りに優しく包まれた僕を玄くんが見つめます。
そのお顔は眉が下がった不安なお顔。
「……嫌だったなら」
優しいのに、諦めや切なさを無理やり閉じ込めた声の響き。
衝動的に、どんと手の中のものを玄くんの胸に押し付けます。
「これれすっ!」
思いの外僕の力が強かったのか玄くんはふらりと後退ります。
こんな時でも、とんでもなくかっこいい彼に、僕なんかじゃ釣り合いません。
隣にいたい。ただそれだけを望むことすらおこがましい。
だけど、僕を前向きで強いと言ってくれた玄くんに、少しでも釣り合うようになりたいんです。
だから、まずは一回だけ。
勇気をかき集めて、一歩踏み出したいです。
「僕も玄くんが好きです」
僕が差し出せるものはこれだけ。
でも自分の弱さも醜さも、前向きに変わりたいと願うきらめきも、すべてをこの1言にぎゅうと詰め込んだ特別な言葉。
脆く弱っちい僕をまるごと、取り返しがつかないくらい、からっぽになるまで差し出そう。
この重くて切なくなるほど愛しい想いを。
「玄くんがいたから僕はやりたいこと、なりたい自分を見つけることができました。僕の微かな心の声を拾い上げて大切にしてくれる、厳しくも優しいあなたとずっと一緒にいたいです!」
噛まずに言えた安堵の息をつきます。
目を大きく見張ったまま動かない玄くんの手を掬います。
力が抜けきった大きな手の平の上へ、取りにいったシルベニアさん付きマスターキーをそっと載せます。
「わがままを一つ言います。1番早くこの鍵で玄くんに僕は駆けつけてもらいたいです。家族より……先に。玄くんに看病してもらいたいです」
とろりと溶け出してしまいそうなくらい玄くんは笑み崩れます。
無邪気なのに甘さが加わった笑みに見とれた僕に、玄くんは腕を伸ばす。
優しいのに、性急に閉じ込めるように腕に力が入ります。
「すいが困った時は絶対に駆けつけてやる。好きだ。愛してる」
嬉しそうな玄くんの声に、しがみつくように腕を背中に回します。
息もできないくらい堪らなく幸せで。
ただ頷くことしかできない僕の髪へキスを落とす。
おずおずと顔を上げると、玄くんと視線が絡んで口元に浮かぶ笑みが艶っぽく変わります。
ふと空気が濃いというのか甘ったるくなりました。
「……キスしていい?」
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