【完結】翠くんは、可愛いがられたい

日月ゆの

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47.翠に少しでも俺が触りたい

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 1日寝たら復活です。
 白井先生のアドバイスは凄いですね。

 しかも、僕がすうすう寝ていた間に伊織くんと玄くんが仲良くなっていました。

 2人で話し合いをしたらしく、伊織くんの持っていた合鍵を玄くんが持つことになったんですよ。

 僕としてはシルヴァニアさん付きの鍵を渡したかったんですが、むやみに他人に鍵をしかもマスターキーを預けてはダメと、伊織くんと玄くん二人がかりで説得されてしまいました。

 玄くんなら悪用するはずありませんし、帰る時と登校時、玄くんに寮のお部屋に寄って鍵をかけてもらえたら、少しでも長く一緒にいられるかもしれないと悪だくみしてたんですが。
 そんな僕の浅い考えはあっさりと打ち砕かれました。

 朝、寝室クローゼットの鏡前で、もそもそネクタイを縛っていると、インターホンが鳴ります。

 モニターにはカバンが肩からずり落ち少しだけ眠そうな玄くんです。
 モニター越しでもその気怠げな雰囲気がかっこいいです。
 こんなかっこいい人が僕のことを好きになってくれたなんて奇跡ですよね。

 なんだか胸がそわそわうずうず落ち着かなくなってきました。
 でも、モニターに映る大好きな人の無防備な姿に目が離せません。

 モニター越しの玄くんに見惚れ、ぽやんとしていると玄関から小さな電子音が。
 次いで玄関扉が開く音と玄くんの声です。

「すーいー。くっそかわいいすーいー」

 リズミカルに僕の名前を節に合わせた歌を披露しながら近づく声です。

 玄くんってこんな鼻歌とか歌うんですね。

 初めて歌声を聞けて嬉しいですが、歌詞がよろしくありません。

 羞恥が僕をひよらせました。聞こえなかったふりです。

「玄くん? おはようございます。もうすぐ準備できます!」

 リビングから声を張ります。
 急いで手に持ったままだったネクタイを結びますが、さっきの歌が頭の中で繰り返され、指に力が入りません。
 焦るとさらに指が震え、おかしなところに結び目が出来てしまいます。

「はよ。ははっ! おいで」

 リビングに入って来た玄くんの視線が僕のネクタイに一瞬留まります。
 カバンを床へ置くと、ソファーに座り太ももを叩き手招きします。

 嬉しそうに呼ばれたら、勝手にとことこ足が動き、玄くんのお膝の上に座っていました。

 長い腕が伸びてきて、しなやかな指先が慣れた動きでネクタイをきれいに結んでいきます。
 肩に顎を置き覗き込む玄くんの口元はほのかに緩んでいます。

「毎日結んでやろうか?」
「も、申し訳ないので……自力で」
「翠に少しでも俺が触りたいから……」

 囲うように伸びた腕がネクタイからお腹へ移動します。
 ぎゅうと抱きしめる腕に心臓が大きく音を立てます。

「……いい?」

 耳元へ息を吹き込むように囁かれ、完敗です。
 脊髄反射のように何回も頷く僕です。
 うう。未だ負けなしの例のお声ですよ。ちょっと不安げに低くなるのが勝因でしょう。

 なんとか理性を引っ張り出してお膝からおり、2人一緒に玄関から出ます。
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