ちょろぽよくんはお友達が欲しい

日月ゆの

文字の大きさ
21 / 27

21《トラside》

しおりを挟む
 俺の初恋は天使だ。

 あの日を思い出すだけで、嫌だった関西への転校も慣れない土地での暮らしも乗り切ることができた。
 だって、俺には『天使』が待っていてくれるから……。

 いきなり小学4年生の秋、こんな中途半端な時期に関西への転校を親から告げられた。
 ありえないだろう。俺の人権はどこにあるんだよ?!
 ココは首都圏エリアで関西なんて全く文化圏が違う。
 箱根の山超えたら異国と思えって云うだろ?!
 カレーに入れるのは豚肉が至高!
 うどんの出汁はカツオ出汁だろ?!

 それに……、腐れ縁かも知れないけれど友達の『カズ』こと「冷水 和海」とも離れたくない。
 あいつ以上に俺とウマが会うやつっていないと思う。
 一緒に馬鹿やってくれるし、時には呆れながら注意してくれるお人好しなあいつ。
 意外にあいつは寂しがりやだから……、心配。

 納得がいかない俺は、今は全寮制の学校に通っている年の離れた兄である『黒瀬 旺志郎 くろせ おうしろう』の住む街まで、横暴な親への反抗の意思表示として学校帰りに家出することにした!
 数日前からコツコツと準備をして、リュックには着替えとお腹が空くと困るからお菓子を少しいれ、リュックを庭の生け垣の中に隠しておいた。
 親には塾に行くふりをして家を出て、隠れてそのリュックを背負い俺は意気揚々と『兄』の元へ向かった。

 予め調べて置いた通りに電車を何回か乗り継いで、やっと『兄』がよく学校を抜け出して行くと言っていた繁華街に着いた頃には、立ち並ぶビルの群れが緋色に染まり、ヒュウヒュウと秋風が肌を刺すように冷たく吹いた。

 一気にその頬や身体を冷たい風になぶられるように吹かれさっきまで初めての家出に高揚していた心も萎み、一気に不安になった俺。

 徐々に空は薄蒼闇うすあおやみを濃く滲ませ、一つ一つ星が瞬き始めた。
 闇が街に這い上がるように拡がるとさっきとはまるで雰囲気がガラリと変わる。
 先程緋色に染め上げられたビルの看板は明かりを灯し、原色の目に優しくない極彩色の看板には「スナック」「休憩、宿泊」等小学生の俺には刺激が強すぎる文字が浮かびあがった。

 TVの画面上でしか見たことが無い夜の街の真の姿に驚きよりも恐怖を感じ、俺はジブリの『神隠し』ヒロインの如く、震える足を必死に動かし飛び出すように駆け出しながらその街の中にいるはずの『兄』の姿を探した。

 俺は絡みつくような、不躾な大人達の視線を避けるようにどんどんと人気の少ない方へネオン街の奥へ足を進めていた。

 そこは所謂治安がよろしくない場所だったらしく、他人の往来も少なく人影も疎らな裏路地。

 頼りになる灯りは街灯だけれど、その街灯も暗闇を照らし切れてはいない。
 蛾がその街灯目掛けて突進していくため時折ジジッと蛾の命が失われる音も聞こえ、俺の恐怖を煽る為のような小道具としての役割としてしか機能していない。

 そんな状況の中最悪な事に、近くで若い男達が言い争う声と怒号が聞こえてきた。
 あぁこれ俺、死んだな。
 ちょっと同級生の中ではリーダー格で勉強も運動もそつなくこなして何でも出来る気がしていたけど――

「にゃー」

「ふぎゃぁっ!!猫……。ゔぅ……、怖いよ。兄ちゃん助けて……」

 野良猫が道を横切ろうと飛び出してきたが、俺の前でピタリと止まるとひたりと鈍く光った瞳で見つめ、俺が怯えた姿を小馬鹿にした様に鳴いた。

 猫にまで馬鹿にされたことの羞恥や恐怖、空腹感、色々な感情が込み上げ俺はポロポロと涙を溢れさせしゃくりあげながら、とうに限界が来ていた足に力が入らなくなり道端に座り込んだ。

「おい。ちびっ子?大丈夫か?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王道学園の書記には過保護な彼氏がいるようで

春於
BL
「王道学園の副会長には愛しの彼氏がいるようで」のつづき (https://www.alphapolis.co.jp/novel/987002062/624877237) 王道学園に王道転校生がやってきた だけど、生徒会のメンバーは王道ではないようで… 【月見里学園】 生徒会 〈会長〉御宮司 忍 (おんぐうじ しのぶ) 〈副会長〉香月 絢人 (かづき あやと) 〈書記〉相園 莉央 (あいぞの りお) 〈会計〉柊 悠雅 (ひいらぎ ゆうが) 〈庶務〉一色 彩葉/日彩 (いっしき いろは/ひいろ) 風紀委員 〈風紀委員長〉伊武 征太郎 (いぶ せいたろう) 相園莉央親衛隊 〈親衛隊長〉早乙女 楓真 (さおとめ ふうま) 王道転校生 浅見翔大 (あさみ しょうた) ※他サイトにも掲載しています

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...