盗賊だけど大剣しか使えません! 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった! 〜

中島菘

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二章 相棒も変わり者でした!

九話 全く盗賊らしくできませんでした!

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 ミシミシと音が鳴り、建物の粉が降ってき始めた。危ないし、もうミヤビたちには追いつきようもないので、俺は洋館から脱出した。

 十分な距離をとって洋館の方を見ると、外側にもところどころに亀裂が入っていた。もうそろそろ本当に崩れてしまう。

 洋館の中で、建物の断末魔と悲鳴が一緒になって動き回っている。

「ドカン! バキッ! メリメリ。」

「チョッ! ナニシテルノ!! 」

まだ追いかけ続けているようだ。ときどき他のスケルトンたちも巻き込んでるらしく、骨がめちゃくちゃ飛んできていた。



 しばらく追いかけっこが続いたところで、窓から炎が噴き出した。メイジスケルトンが魔法を使ったらしい。火はたちまち屋敷に燃え移ってしまった。

 魔法の火の威力は凄まじく、すぐに洋館全てが燃え上がった。

「おい! 大丈夫か! もういいから出てこい! 」

必死に叫ぶが、声が届いている手応えがまったくない。

 ミヤビを探しにいこうと屋敷にもう一度飛び込もうとした瞬間、俺の足元にゴロっと重いものが転がってきた。

 ゾッとした。転がってきたのは、スケルトンの頭だったのだ。すぐあとにミヤビも炎の隙間から出てきた。

「あら、ロータスさん。無事でしたか。よかったです。」

「君の方こそ大丈夫なのかい? 怪我とかは? 」

「ちょっと指先を火傷しただけです。あとは全然。」

それにしても、洋館が燃え上がる中でも戦うって……。

「無茶するよな、ほんと。」

「夢中になると止まらなくなっちゃうんですよね。」

実際、全く止まらなかったしな。

 それでもボスのスケルトンを倒してしまうんだから、凄いものだ。でも……

「指輪ってどこなの? 」

「あ……。」

目の前の洋館はすでに燃えて崩壊してしまっていた。

 火が消えたとして、指輪なんてとてもじゃないが探せない。

「やらかしちゃったね。」

「そうですね。これってクエスト失敗ですよね。」

「だね。」

指輪の奪取は全然できてないんだからな。




 足元にはまだスケルトンの頭が転がっていた。

「あれ、なんでこいつ消えてないんですかね? 」

「え、まだ倒せてないとか? 」

俺は少し身構えた。

「いや、体が消えたのは見たのでそれは無いと思います。」

何事かと思っていると、ガイコツの上に表示が出てきた。

「洋館の主 メイジスケルトン
 懸賞金 : 4,000ゴールド   」

懸賞金? 

 表示を見たミヤビが色めき始めた。

「こいつ、特別指定ですよ! 」

「特別指定って? 」

「フィールド上にいる敵モンスターの中には、倒すとギルドから高額のゴールドがもらえるやつがいるんですよ。特別指定モンスターって呼ばれてますね。こいつもその中の一体ですよ! 」

「え、てことは四千ゴールド貰えるってこと? それなら激アツじゃないか! 」

「ええ。今思い出したんですけど、特別指定モンスターは倒しても体の一部が残るみたいなんですよ。それが倒した証拠らしいです。だから、この首をギルドに持っていくとお金に換えてもらえるというわけです。」

なるほど、特別指定か……。面白いシステムだな。

 今回のクエストの元々の報酬は2,400ゴールドなので、指輪が見つからなくてもむしろプラスなのだ。俺たちはスケルトンの首を片手に、意気揚々とギルドへ帰った。

 ギルドの中には特別指定モンスター専用の換金所があった。そこにスケルトンの頭をむき出しで持っていったのだが、驚くほどスムーズに手続きをしてもらえた。

 四千ゴールドを手渡されたので、それを二人で分けた。今回俺はびっくりするくらい何もしていなかったので、一ゴールドももらわないでおこうと思っていた。

 だけど、ミヤビの優しさで1,500ゴールドを貰った。




 キリのいいところだったので、俺たちは解散してログアウトした。

 当たり前だが、現実は静かだった。窓の外を見てみても、すでにどこも寝静まっている。音も立たないくらいの風が吹いていて、あとは遠くの街灯がぼんやり光っているだけ。

 このまま起きていても淋しいだけなので、俺は風呂に入ってから早々に寝てしまった。



 翌日も俺は暇である。いや、全くやることがないわけじゃないのだけど、世間一般の忙しさからは完全に外れている。

 朝っぱらからプライムフロンティアにログインすると、さすがに人は少なかった。平日の朝に人が大勢いるわけがない。

「あれ、これは……。」

ギルドに入ってすぐのところに掲示板があった。ギルド募集もあったが、一番大きかったのはプレイヤー書き込みのチャットだった。

 そこでは一つの話題で持ちきりになっていた。

「森の洋館が燃えカスになっていた件www」

という名前のスレが立てられていた。

 ……心当たりしかないな。ちょっと怖かったけれど、スレを覗いてみると盛り上がっていた。

1. 森の中を歩いてたら洋館が燃やされて灰になってたんやが。

2. さすがにワロタwww

3. 荒らしだろ? 

4. 荒らしにしたってどうやるんだよ、そんなこと。

みんな口々に憶測を立てていた。中にはドラゴンが飛来して燃やしていったというプレイヤーまで。……申し訳ない、全部俺たちのせいです。




 ミヤビは来ていなかった。こんな時間に来ている俺の方がおかしいのだが。しかし、俺たちはパーティーだから、勝手に何かを進めるわけにもいかない。

 ミヤビは、スケルトンを倒してレベルが上がったよう。このレベル差だけは埋めようと思い、俺は町の外に出た。
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