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四章 W5・砂漠エリアです!
二十六話 オイルは砂漠のロマンです!
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装備を新調した俺たち。ただでさえ尖った二人組なのに、装備までもがかなりクセのある感じになってしまった。
地面ごと吹き飛ばしてしまう大剣使いに、毒を撒き散らす杖使い。おまけに二人ともが揃って盗賊なのだから、もうキャラが渋滞している。
俺たちでさえ、ちょくちょく盗賊であることを忘れてしまっている。そりゃそうだ。だって盗賊らしいこと何もしていないもの。
さて、俺たちの次の方針だが―――
「そろそろ、次のエリアに行きましょうよ。砂漠にうんざりしてきちゃいました。」
「それは同感だわ。外出ても砂しか見えないもんな。」
「しかも歩くたびに砂が靴に入っちゃうじゃないですか。」
砂漠がめちゃくちゃ嫌だってわけじゃない。
俺たちだって、この前のイベント然り、砂漠での冒険を楽しませてもらっている。こんなに装備にも経験値にも恵まれたし、感謝だってしてるくらいだ。
ただ、もういい。さすがに飽きてきたという話だ。敵と戦っても、苦戦なんてするはずがない。経験値的にも、次に行きたいと思うのは当然だろう。
ところで、前のエリアからここへ来たときにもあったように、初めて行くエリアに進むには、それぞれ条件が設定されている。
俺は心の中で次に進むことを考えていたので、この条件についても昨晩調べておいた。
「次のエリア、ウエストエリアの四番地に行くために設定されている条件は『キャメルオイル1バレルの納品』らしい。」
「へえ、納品ですか。討伐じゃないんですね。」
俺もこれには驚いた。
次のエリアへと進むのだから、てっきりボスみたいなモンスターを倒すとばかり思っていた。
「でも実はこっちの方が難しかったりする? 」
「そうですよね。1バレルってそもそもどのくらいなんですか? 」
「160リットルくらいだよ。」
「はい? 」
「だから、160リットル弱だよ。石油の単位に使われてる。」
1バレルという量は多くて四人組のパーティーにとっては、まあまあの無茶振りだ。それくらい次のエリアまでの進出に時間をかけろという運営の意図だろう。
ただ、時間をかけずにさっさと次のエリアに行ってしまいたいというのがプレイヤーの心理だ。
「キャメルオイルってのは、つまりそこら辺に歩いているラクダの油ってことだよな。」
「ああ、アイツですね。それでプレイヤーたちはあのラクダを追いかけ回してたんですね。」
それは俺も見ていた。ラクダは倒しても大した経験値にはならずに、かと言ってゴールドを落とすわけでもないので、不思議だった。そういうわけがあったのだ。
そうとなれば、俺たちもラクダ狩りに繰り出さなければならない。
「今から行きます? 」
「もちろん。すぐに次のエリアに行きたいしね。」
俺たちはギルドの専用窓口に行った。
窓口の女性に、条件への挑戦の旨を伝えると、彼女は大きなタルを持ってきた。
「めちゃくちゃ大きいですね。」
「そりゃ1バレルのタルだからね。160リットル入るのさ。」
タルを手渡したあとで、女性はギルドの入り口を手で指した。
「入り口にあるリアカーをご活用ください。」
入り口に出ると、小脇にリアカーが何台も並んでいたから、そのうちの一台を借りた。
ゲームなんだからポーチにデータとして収納できるようにすればいいのにとも思うが、これも試練ということだろう。
俺たち二人は砂漠に出て、手当たり次第歩き始めた。オイルタンクは何も珍しいモンスターではない。適当に歩いていれば出会える。
と、思ったのだが、これが思ったより遭遇しない。
「あれ、適当に歩くだけで済むものだと思ったんですけどね。」
おそらく急に遭遇しなくなったとか、そういう問題ではない。狙い出すと出てこない気がするものだ。
普段どおり遭遇しているのだけれど、何せよ160リットル分だ。そうそう簡単にはいかない。
ちなみにオイルはラクダを倒すとドロップする仕様になっている。一匹倒すごとに4リットル。つまり、40匹は倒さなければならないのだ。
「今倒したのは何匹目だっけ? 」
「覚えてないですけど、どうせタルがいっぱいになるまでは倒さないといけないんだし、数えなくてもいいんじゃないですか? 」
「まあそうだけど、ひたすら倒し続けるのもしんどくないか? 」
俺たちはなおさら砂漠にウンザリしてしまっている。
こんな時に出会う鉄サソリほど憎いものはない。これはRPGあるあるというか、目当てじゃないモンスターが憎たらしく見えてきてしまう。
ミヤビもさっきからずっとサソリに当たり散らしている。
「うりゃ! うりゃ! 」
効かないの分かってるのにひたすら杖でめった打ちにしているのだ。
「ちょちょ! そんなに荒れたって仕方ないだろ。」
「すいません、ちょっと腹立ってきちゃって。」
サソリはそのあとキッチリ溶かしておいた。
さて、ラクダのオイル集めだが、これがなかなか集まらない。
「もっとよく考えないとな。」
「その前にちょっと休憩しましょうよ。」
「休憩? 」
「ええ。町の裏手のオアシスは人もいませんし。」
ん? ちょっと待てよ。
俺たち人間がこうして休憩するなら、きっとラクダだって休憩するはずだ。
「そこ! 行ってみよう。」
「やっぱりロータスさんも疲れてたんですね。」
ほら、やっぱりビンゴだった。
「これは……すごいですね。」
オアシスでは、大勢のオイルタンクたちが水を飲んでいた。
地面ごと吹き飛ばしてしまう大剣使いに、毒を撒き散らす杖使い。おまけに二人ともが揃って盗賊なのだから、もうキャラが渋滞している。
俺たちでさえ、ちょくちょく盗賊であることを忘れてしまっている。そりゃそうだ。だって盗賊らしいこと何もしていないもの。
さて、俺たちの次の方針だが―――
「そろそろ、次のエリアに行きましょうよ。砂漠にうんざりしてきちゃいました。」
「それは同感だわ。外出ても砂しか見えないもんな。」
「しかも歩くたびに砂が靴に入っちゃうじゃないですか。」
砂漠がめちゃくちゃ嫌だってわけじゃない。
俺たちだって、この前のイベント然り、砂漠での冒険を楽しませてもらっている。こんなに装備にも経験値にも恵まれたし、感謝だってしてるくらいだ。
ただ、もういい。さすがに飽きてきたという話だ。敵と戦っても、苦戦なんてするはずがない。経験値的にも、次に行きたいと思うのは当然だろう。
ところで、前のエリアからここへ来たときにもあったように、初めて行くエリアに進むには、それぞれ条件が設定されている。
俺は心の中で次に進むことを考えていたので、この条件についても昨晩調べておいた。
「次のエリア、ウエストエリアの四番地に行くために設定されている条件は『キャメルオイル1バレルの納品』らしい。」
「へえ、納品ですか。討伐じゃないんですね。」
俺もこれには驚いた。
次のエリアへと進むのだから、てっきりボスみたいなモンスターを倒すとばかり思っていた。
「でも実はこっちの方が難しかったりする? 」
「そうですよね。1バレルってそもそもどのくらいなんですか? 」
「160リットルくらいだよ。」
「はい? 」
「だから、160リットル弱だよ。石油の単位に使われてる。」
1バレルという量は多くて四人組のパーティーにとっては、まあまあの無茶振りだ。それくらい次のエリアまでの進出に時間をかけろという運営の意図だろう。
ただ、時間をかけずにさっさと次のエリアに行ってしまいたいというのがプレイヤーの心理だ。
「キャメルオイルってのは、つまりそこら辺に歩いているラクダの油ってことだよな。」
「ああ、アイツですね。それでプレイヤーたちはあのラクダを追いかけ回してたんですね。」
それは俺も見ていた。ラクダは倒しても大した経験値にはならずに、かと言ってゴールドを落とすわけでもないので、不思議だった。そういうわけがあったのだ。
そうとなれば、俺たちもラクダ狩りに繰り出さなければならない。
「今から行きます? 」
「もちろん。すぐに次のエリアに行きたいしね。」
俺たちはギルドの専用窓口に行った。
窓口の女性に、条件への挑戦の旨を伝えると、彼女は大きなタルを持ってきた。
「めちゃくちゃ大きいですね。」
「そりゃ1バレルのタルだからね。160リットル入るのさ。」
タルを手渡したあとで、女性はギルドの入り口を手で指した。
「入り口にあるリアカーをご活用ください。」
入り口に出ると、小脇にリアカーが何台も並んでいたから、そのうちの一台を借りた。
ゲームなんだからポーチにデータとして収納できるようにすればいいのにとも思うが、これも試練ということだろう。
俺たち二人は砂漠に出て、手当たり次第歩き始めた。オイルタンクは何も珍しいモンスターではない。適当に歩いていれば出会える。
と、思ったのだが、これが思ったより遭遇しない。
「あれ、適当に歩くだけで済むものだと思ったんですけどね。」
おそらく急に遭遇しなくなったとか、そういう問題ではない。狙い出すと出てこない気がするものだ。
普段どおり遭遇しているのだけれど、何せよ160リットル分だ。そうそう簡単にはいかない。
ちなみにオイルはラクダを倒すとドロップする仕様になっている。一匹倒すごとに4リットル。つまり、40匹は倒さなければならないのだ。
「今倒したのは何匹目だっけ? 」
「覚えてないですけど、どうせタルがいっぱいになるまでは倒さないといけないんだし、数えなくてもいいんじゃないですか? 」
「まあそうだけど、ひたすら倒し続けるのもしんどくないか? 」
俺たちはなおさら砂漠にウンザリしてしまっている。
こんな時に出会う鉄サソリほど憎いものはない。これはRPGあるあるというか、目当てじゃないモンスターが憎たらしく見えてきてしまう。
ミヤビもさっきからずっとサソリに当たり散らしている。
「うりゃ! うりゃ! 」
効かないの分かってるのにひたすら杖でめった打ちにしているのだ。
「ちょちょ! そんなに荒れたって仕方ないだろ。」
「すいません、ちょっと腹立ってきちゃって。」
サソリはそのあとキッチリ溶かしておいた。
さて、ラクダのオイル集めだが、これがなかなか集まらない。
「もっとよく考えないとな。」
「その前にちょっと休憩しましょうよ。」
「休憩? 」
「ええ。町の裏手のオアシスは人もいませんし。」
ん? ちょっと待てよ。
俺たち人間がこうして休憩するなら、きっとラクダだって休憩するはずだ。
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