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五章 ドリーム・リゾートです!
三十話 負けず嫌いにギャンブルは禁物です!
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一人プレイが可能になる、そういう話が聞こえてきた。これは、割と重大事項だと思う。
「今更ですか、私たちが一人じゃ進めなくて困ってたのは前の話だったのに。」
そう、このルールに縛られていたのは他ならぬ俺たち自身だからだ。今だからこそ二人のパーティーで進んで来られているが、俺はミヤビに出会えていなければここまで来ることはできなかった。
それが今更一人でも来ることが出来るようになりますだなんて、釈然としない。まあ逆に、このルールのおかげでミヤビと出会うことができたのだけれど。
だが、この「一人プレイの解禁」、違う見方もできる。
「これって好機なんじゃないか? 」
「好機って何のですか? 」
「パーティーに新しいメンバーを入れる好機だよ。これから色々なエリアに一人プレイのプレイヤーたちが現れるというのなら、そのプレイヤーたちをスカウトできるということでもあるじゃないか! 」
「でも、私たちのパーティーに入ってくれる人なんて今までもいなかったじゃないですか。」
「いやいや、忘れてはいけないよミヤビ君。俺たちと同じくバグのせいでパーティーに入れてもらえないはぐれ者はきっといるはず。そういうプレイヤーを見つけてスカウトするんだよ。」
この前のイベントだって結果オーライだったからいいものの、数の不利を感じたのは事実だった。新しいメンバーをパーティーに入れることは、かなり重要なことだと思う。
バグが起きたのは俺たち二人だけじゃないはず。だったら、そのうち同じ境遇のプレイヤーにも出会えるはずだ。
「たしかに、新しい仲間も欲しいですよね。今すぐとはいきそうにはありませんが。ここまで一人でたどり着くのには時間がかかると思いますから。」
彼女の言う通り、まだ少し先の話になりそうだった。
ひとまず目の前のこのリゾート。どこもかしこも楽しげで、どこから行ったらいいのかが分からない。
「タワーの方に行ってみませんか? 」
リゾートの真ん中に大樹の如くそびえ立つタワー。そこの中には何があるのか、実際興味があった。
俺たちは屋内に入るとそのままタワーの根元に着いた。大きなエレベーターが三基並び、それを埋めるほどの数のプレイヤーが乗り降りしている。
タワーの上には何があるのだろうかと、一層気になってしまう。俺たちは見る限りで三往復目のエレベーターに乗ることができた。
しかし、乗ってみて発覚した。
「あれ、私たち二階までしか行けないみたいですよ。」
「へ? 条件不足ってこと? 」
「そうみたいです。エリア進出度が足りないみたいで。」
このエリアに来るだけではダメだということか。
仕方なく俺たちは2階で降りた。大半のプレイヤーたちも、同じような状況らしく、ほとんどが2階で降りてしまった。
さて、2階はどうなっていたのかというと……
「わお! これすごいですよ! カジノです! 」
そう、フロア全体が一つの大きなカジノになっていたのだ。
「こんなの見るの初めてですよ、私! 」
「日本ではお目にかかれないからね。」
所々でプレイヤーたちがカジノを楽しんでいる。ルーレットだのポーカーだの、定番のものも多くみられたが、一目見ただけではどんなものか分からないものもあった。
ミヤビはもう早足で行ってしまっている。ギャンブルに熱を上げてしまうとろくなことにならないが、幸いゲーム内なので、現実のお金は賭けない。というか賭けちゃうと違法だ。
ゲーム内のゴールドをそのまま使ってギャンブルをするようだ。ギャンブルだから大損するリスクもあるが、逆に勝てば普通なら到底手に入ることのないほどの大金を得ることができる。
まあ俺たちはもう十分すぎるほどゴールドを持っているので、こんなものを頑張る必要はないのだけども。
ん? そういえば、ゴールドの袋を持ってるのって確か……
悪い予感とともに、ミヤビが戻ってきた。
「随分早く帰ってきたね。」
ミヤビは申し訳なさそうにモジモジしていた。それで全ては察せられた。
「すいません! ……負けちゃいました。」
ああやっぱり。でも早くないか? 適当なところで切り上げてきたのか。
「いくら負けたの? 」
「全額です……。」
は? いやいや、そんなバカな。
だって40,000ゴールドくらいは残っていたはずだぞ? それが今の短時間の間に全て消し飛んだってのか。
「一体何をしてたんだ? 」
「ブラックジャックってやつをやってみたんですけど。」
ブラックジャックか。トランプでなるべく合計が21になるようにして、ディーラーよりも21に近ければ勝ちになるゲームだ。最初2枚のカードがあり、そこから、カードを追加する「ヒット」と、そのままで勝負する「スタンド」を選ぶことができる。
ミソなのは、21を越えてはいけないということである。それだから、プレイヤーの二択に緊張感が生まれるのだ。しかし、確率要素は比較的少ないはずなのに、どうしてミヤビはそんなに負けてしまったのだろうか?
一応事情を聴いてみた。
「なんかですね、分からなかったから、周りの人のまねをして、ヒットって言い続けてたら負けちゃいました。」
「そりゃそうだろ! え、ルール知らないのに賭けちゃったの? 」
「だって、ブラックジャックっていう名前に聞きなじみがあったから……」
「それは関係ないよ! 」
この子、もしかしたらちょっとおバカかもしれない。ともかく、この十分ちょっとの間に、俺たちのほぼ全財産が消し飛んでしまった。
「今更ですか、私たちが一人じゃ進めなくて困ってたのは前の話だったのに。」
そう、このルールに縛られていたのは他ならぬ俺たち自身だからだ。今だからこそ二人のパーティーで進んで来られているが、俺はミヤビに出会えていなければここまで来ることはできなかった。
それが今更一人でも来ることが出来るようになりますだなんて、釈然としない。まあ逆に、このルールのおかげでミヤビと出会うことができたのだけれど。
だが、この「一人プレイの解禁」、違う見方もできる。
「これって好機なんじゃないか? 」
「好機って何のですか? 」
「パーティーに新しいメンバーを入れる好機だよ。これから色々なエリアに一人プレイのプレイヤーたちが現れるというのなら、そのプレイヤーたちをスカウトできるということでもあるじゃないか! 」
「でも、私たちのパーティーに入ってくれる人なんて今までもいなかったじゃないですか。」
「いやいや、忘れてはいけないよミヤビ君。俺たちと同じくバグのせいでパーティーに入れてもらえないはぐれ者はきっといるはず。そういうプレイヤーを見つけてスカウトするんだよ。」
この前のイベントだって結果オーライだったからいいものの、数の不利を感じたのは事実だった。新しいメンバーをパーティーに入れることは、かなり重要なことだと思う。
バグが起きたのは俺たち二人だけじゃないはず。だったら、そのうち同じ境遇のプレイヤーにも出会えるはずだ。
「たしかに、新しい仲間も欲しいですよね。今すぐとはいきそうにはありませんが。ここまで一人でたどり着くのには時間がかかると思いますから。」
彼女の言う通り、まだ少し先の話になりそうだった。
ひとまず目の前のこのリゾート。どこもかしこも楽しげで、どこから行ったらいいのかが分からない。
「タワーの方に行ってみませんか? 」
リゾートの真ん中に大樹の如くそびえ立つタワー。そこの中には何があるのか、実際興味があった。
俺たちは屋内に入るとそのままタワーの根元に着いた。大きなエレベーターが三基並び、それを埋めるほどの数のプレイヤーが乗り降りしている。
タワーの上には何があるのだろうかと、一層気になってしまう。俺たちは見る限りで三往復目のエレベーターに乗ることができた。
しかし、乗ってみて発覚した。
「あれ、私たち二階までしか行けないみたいですよ。」
「へ? 条件不足ってこと? 」
「そうみたいです。エリア進出度が足りないみたいで。」
このエリアに来るだけではダメだということか。
仕方なく俺たちは2階で降りた。大半のプレイヤーたちも、同じような状況らしく、ほとんどが2階で降りてしまった。
さて、2階はどうなっていたのかというと……
「わお! これすごいですよ! カジノです! 」
そう、フロア全体が一つの大きなカジノになっていたのだ。
「こんなの見るの初めてですよ、私! 」
「日本ではお目にかかれないからね。」
所々でプレイヤーたちがカジノを楽しんでいる。ルーレットだのポーカーだの、定番のものも多くみられたが、一目見ただけではどんなものか分からないものもあった。
ミヤビはもう早足で行ってしまっている。ギャンブルに熱を上げてしまうとろくなことにならないが、幸いゲーム内なので、現実のお金は賭けない。というか賭けちゃうと違法だ。
ゲーム内のゴールドをそのまま使ってギャンブルをするようだ。ギャンブルだから大損するリスクもあるが、逆に勝てば普通なら到底手に入ることのないほどの大金を得ることができる。
まあ俺たちはもう十分すぎるほどゴールドを持っているので、こんなものを頑張る必要はないのだけども。
ん? そういえば、ゴールドの袋を持ってるのって確か……
悪い予感とともに、ミヤビが戻ってきた。
「随分早く帰ってきたね。」
ミヤビは申し訳なさそうにモジモジしていた。それで全ては察せられた。
「すいません! ……負けちゃいました。」
ああやっぱり。でも早くないか? 適当なところで切り上げてきたのか。
「いくら負けたの? 」
「全額です……。」
は? いやいや、そんなバカな。
だって40,000ゴールドくらいは残っていたはずだぞ? それが今の短時間の間に全て消し飛んだってのか。
「一体何をしてたんだ? 」
「ブラックジャックってやつをやってみたんですけど。」
ブラックジャックか。トランプでなるべく合計が21になるようにして、ディーラーよりも21に近ければ勝ちになるゲームだ。最初2枚のカードがあり、そこから、カードを追加する「ヒット」と、そのままで勝負する「スタンド」を選ぶことができる。
ミソなのは、21を越えてはいけないということである。それだから、プレイヤーの二択に緊張感が生まれるのだ。しかし、確率要素は比較的少ないはずなのに、どうしてミヤビはそんなに負けてしまったのだろうか?
一応事情を聴いてみた。
「なんかですね、分からなかったから、周りの人のまねをして、ヒットって言い続けてたら負けちゃいました。」
「そりゃそうだろ! え、ルール知らないのに賭けちゃったの? 」
「だって、ブラックジャックっていう名前に聞きなじみがあったから……」
「それは関係ないよ! 」
この子、もしかしたらちょっとおバカかもしれない。ともかく、この十分ちょっとの間に、俺たちのほぼ全財産が消し飛んでしまった。
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