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十二公演目――スマイリング・ウィズ・キャラバン
インテルメッゾ
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「さて! これまで累計十二公演! 『クロスドツインズ』から、コルダ・グローリア、チャーリー・セイラー、ウィリアム・セイラー、アルコ・グローリアによる曲をそれぞれお聴き頂きました……なんてね! どう、何か気に入った曲はあった?」
ジャズオーケストラの進行役気取りだろうか、妙に似ている物真似を挟みつつ。ブッシュドノエルはどうだった? と店主は片手間に皿を下げた。暫しの沈黙に、彼はおや、と何かを悟る。
「はは、どれがなんだったか分からなくなっちゃったみたいだね。彼ら、よく似てるからなぁ。それじゃあ、ここらでバンドメンバーの紹介といこうか」
客の前に並べられた四枚のシングルレコード。店主はその中から光沢のある赤のジャケットにラピスラズリと金のリボンを飾った一枚を選んだ。
「コルダ・グローリア。音楽に愛された天才で、ちゃんと整えられた金髪に紺碧の丸くて大きな瞳。双子の兄で、弟のことは大事な片割れだと思ってるよ」
続いて店主は少し色褪せた黄色のジャケットに琥珀と黒いリボンがあしらわれたものを手に取る。
「これがチャーリー・セイラー。やり手の新聞少年で、黒い髪に琥珀の瞳を持ってる。目は大きいけど少し三白眼気味かな。双子の弟を神からの贈り物、天使だって溺愛してるよ。弟の方が優秀なのに可愛がれるなんてすごいよね。そしてこっちはその弟」
そう言うと、店主は淡い水色のジャケットにラピスラズリと金のリボンが散らされたレコードを隣に並べる。
「ウィリアム・セイラー……愛称ビリー。誰に教わったわけでもないのに歌の才能があって、金の髪と紺碧の瞳を持つ。家族には愛されていたけど、本人にとってその見目は錨みたいなものだったかも。それでも、ビリーはチャーリーの〝双子の弟〟さ」
最後の一枚。照明を反射し煌めく紫のジャケットに琥珀と黒のリボンを巻き付けたそれは、チャーリー・セイラーの装飾とよく似ていた。
「アルコ・グローリア。コルダの双子の弟だけど、黒髪に琥珀の瞳といい凡庸さといい全然似てない。お父さんがバンドマスターを務めるグローリア・ビッグバンドの看板シンガーとしてコルダと一緒に活動してるよ。家族で一人だけ凡人な中、頑張って秀才まで漕ぎ着けたんだけど、ね」
ティーカップも回収し、店主はにこやかに微笑む。
「他にも少し歩き方が覚束無いけど音楽好きでほんわかしてる栗色の髪に青い瞳の少年アーティーとか、東洋人らしい黒檀の前髪で目元が隠れてるツンとした物言いのベルとか、骨みたいにヒョロ長くて頭が悪い丸眼鏡のボニーとか、あとは七三分けの茶髪でディモンズっていうデパートを経営してる大金持ちの御曹司で新人タップダンサーのアーノルドとかもいるけど、彼らの曲はまた年明け以降、ゆっくり聴いてもらうことにしよう」
それじゃあ、よいお年を。そう言い残すと、店主はこれまで以上に深く、深く礼をし店を閉めた。
ジャズオーケストラの進行役気取りだろうか、妙に似ている物真似を挟みつつ。ブッシュドノエルはどうだった? と店主は片手間に皿を下げた。暫しの沈黙に、彼はおや、と何かを悟る。
「はは、どれがなんだったか分からなくなっちゃったみたいだね。彼ら、よく似てるからなぁ。それじゃあ、ここらでバンドメンバーの紹介といこうか」
客の前に並べられた四枚のシングルレコード。店主はその中から光沢のある赤のジャケットにラピスラズリと金のリボンを飾った一枚を選んだ。
「コルダ・グローリア。音楽に愛された天才で、ちゃんと整えられた金髪に紺碧の丸くて大きな瞳。双子の兄で、弟のことは大事な片割れだと思ってるよ」
続いて店主は少し色褪せた黄色のジャケットに琥珀と黒いリボンがあしらわれたものを手に取る。
「これがチャーリー・セイラー。やり手の新聞少年で、黒い髪に琥珀の瞳を持ってる。目は大きいけど少し三白眼気味かな。双子の弟を神からの贈り物、天使だって溺愛してるよ。弟の方が優秀なのに可愛がれるなんてすごいよね。そしてこっちはその弟」
そう言うと、店主は淡い水色のジャケットにラピスラズリと金のリボンが散らされたレコードを隣に並べる。
「ウィリアム・セイラー……愛称ビリー。誰に教わったわけでもないのに歌の才能があって、金の髪と紺碧の瞳を持つ。家族には愛されていたけど、本人にとってその見目は錨みたいなものだったかも。それでも、ビリーはチャーリーの〝双子の弟〟さ」
最後の一枚。照明を反射し煌めく紫のジャケットに琥珀と黒のリボンを巻き付けたそれは、チャーリー・セイラーの装飾とよく似ていた。
「アルコ・グローリア。コルダの双子の弟だけど、黒髪に琥珀の瞳といい凡庸さといい全然似てない。お父さんがバンドマスターを務めるグローリア・ビッグバンドの看板シンガーとしてコルダと一緒に活動してるよ。家族で一人だけ凡人な中、頑張って秀才まで漕ぎ着けたんだけど、ね」
ティーカップも回収し、店主はにこやかに微笑む。
「他にも少し歩き方が覚束無いけど音楽好きでほんわかしてる栗色の髪に青い瞳の少年アーティーとか、東洋人らしい黒檀の前髪で目元が隠れてるツンとした物言いのベルとか、骨みたいにヒョロ長くて頭が悪い丸眼鏡のボニーとか、あとは七三分けの茶髪でディモンズっていうデパートを経営してる大金持ちの御曹司で新人タップダンサーのアーノルドとかもいるけど、彼らの曲はまた年明け以降、ゆっくり聴いてもらうことにしよう」
それじゃあ、よいお年を。そう言い残すと、店主はこれまで以上に深く、深く礼をし店を閉めた。
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