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十七公演目――全てが君で僕
一曲目:アルコ・グローリア
「あの、お隣よろしいですか、リコさん」
「アルコ! 勿論。学校で会うのは久々かな? 仕事、忙しかったの?」
「……ええ、まあ、色々…………」
リコさんになら、毎年マルディグラに休んでることぐらい言ってもいい気もする。けど、今年に限ってはイレギュラーすぎて、下手に話すとボロが出そうだからやめた。幸いリコさんはクリームチキンを食す手を止めずに、ふうんと聞き流してくれた。ミルク色の髪がホワイトソースに浸りかける。咄嗟に毛先を受け止めてしまった。
「……あれ? ……あ、ごめん! 見えてなかったや。家でもよくやっちゃうんだ。やっぱり僕、トリーとローレがいないとダメだなあ」
「同系色ですしね。トリーさんとローレさん、は……ごきょうだいでしたよね。三つ子の。仲はよろしいんですか?」
「うん。姉と妹。仲かあ、どうなんだろう。他の三つ子に会ったことないからなあ……」
聞いてから、返事に困る質問をしてしまったな、と後悔した。三つ子に会ったことがない、か。ごもっともだ。僕らだって長年、双子にすら会ったことがなかった。……今までは。絶対に会ったことがないかと問われると自信はないけど。少なくともこの学校の同学年、一学年上、一学年下の生徒にはいなかったはず。
「普通じゃないかな。稀に喧嘩もするけど、普段はいがみ合ったりもしないし。みんな興味あることも得意なことも違うからかな。多胎児って、敢えてバラバラの個性を得ようとする場合と、意識して似たままで居続ける場合、どっちもあるらしいね。そのどっちでもない子たちもいるのかもしれないけど」
「……そういうものなんですね」
「あはは、どうしたの急に。アルコのとこも双子じゃない。コルダとはそんなにそっくりさんって感じしないけど、僕らと同じで違う道を歩んでいったのかな?」
…………見目のことを、言っているわけじゃないんだと思う。髪色ぐらいは含まれているのかもしれないけど。リコさんは人を外見で判断する人じゃない。そもそもあまり見えていないから。だからこそきっと内面……性格や、能力のことを言っているんだと、分かってしまった。敢えてそれぞれの個性を、得ようとしていたら、僕はもっと楽に生きられたのかもしれない。コルダと僕の決定的な違い全てを、意図したとおりだって吞み込めただろうから。でも、僕は。完全に理解できずとも、――天才には、なれずとも。できるだけ同じ景色を見ようと、高望みし続けてしまった。コルダと双子でいたかったから。双子だと、信じていたかったから。
「……どう、なんでしょう。幼い頃のことを思い返していけば、いずれ分かるかもしれません」
「いいね! 聞かせてよ、グローリアツインズの幼少期」
本当はそんなことせずとも、とっくに分かってる。僕の頭に本来、音楽なんてなかった。ただ息をのむような夜の静寂の中で。コルダが美しい歌を生み出す瞬間を震えて待つだけ。……でも。いや、だからこそ。
「はい。授業に遅れないよう、手短にですが」
この人と、多胎児仲間のリコさんと話せば。自分の中で、整理がつくかもしれないと思って声を掛けた。コルダと、マルディグラでのことについて。
「アルコ! 勿論。学校で会うのは久々かな? 仕事、忙しかったの?」
「……ええ、まあ、色々…………」
リコさんになら、毎年マルディグラに休んでることぐらい言ってもいい気もする。けど、今年に限ってはイレギュラーすぎて、下手に話すとボロが出そうだからやめた。幸いリコさんはクリームチキンを食す手を止めずに、ふうんと聞き流してくれた。ミルク色の髪がホワイトソースに浸りかける。咄嗟に毛先を受け止めてしまった。
「……あれ? ……あ、ごめん! 見えてなかったや。家でもよくやっちゃうんだ。やっぱり僕、トリーとローレがいないとダメだなあ」
「同系色ですしね。トリーさんとローレさん、は……ごきょうだいでしたよね。三つ子の。仲はよろしいんですか?」
「うん。姉と妹。仲かあ、どうなんだろう。他の三つ子に会ったことないからなあ……」
聞いてから、返事に困る質問をしてしまったな、と後悔した。三つ子に会ったことがない、か。ごもっともだ。僕らだって長年、双子にすら会ったことがなかった。……今までは。絶対に会ったことがないかと問われると自信はないけど。少なくともこの学校の同学年、一学年上、一学年下の生徒にはいなかったはず。
「普通じゃないかな。稀に喧嘩もするけど、普段はいがみ合ったりもしないし。みんな興味あることも得意なことも違うからかな。多胎児って、敢えてバラバラの個性を得ようとする場合と、意識して似たままで居続ける場合、どっちもあるらしいね。そのどっちでもない子たちもいるのかもしれないけど」
「……そういうものなんですね」
「あはは、どうしたの急に。アルコのとこも双子じゃない。コルダとはそんなにそっくりさんって感じしないけど、僕らと同じで違う道を歩んでいったのかな?」
…………見目のことを、言っているわけじゃないんだと思う。髪色ぐらいは含まれているのかもしれないけど。リコさんは人を外見で判断する人じゃない。そもそもあまり見えていないから。だからこそきっと内面……性格や、能力のことを言っているんだと、分かってしまった。敢えてそれぞれの個性を、得ようとしていたら、僕はもっと楽に生きられたのかもしれない。コルダと僕の決定的な違い全てを、意図したとおりだって吞み込めただろうから。でも、僕は。完全に理解できずとも、――天才には、なれずとも。できるだけ同じ景色を見ようと、高望みし続けてしまった。コルダと双子でいたかったから。双子だと、信じていたかったから。
「……どう、なんでしょう。幼い頃のことを思い返していけば、いずれ分かるかもしれません」
「いいね! 聞かせてよ、グローリアツインズの幼少期」
本当はそんなことせずとも、とっくに分かってる。僕の頭に本来、音楽なんてなかった。ただ息をのむような夜の静寂の中で。コルダが美しい歌を生み出す瞬間を震えて待つだけ。……でも。いや、だからこそ。
「はい。授業に遅れないよう、手短にですが」
この人と、多胎児仲間のリコさんと話せば。自分の中で、整理がつくかもしれないと思って声を掛けた。コルダと、マルディグラでのことについて。
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